マッチングアプリでってのは言わないでくださいね

昨日、職場のパートさんの息子さんと、その子の友達と映画を観に行くという、個人的に激レアなイベントがあった。

息子くんと彼の友達は23歳で僕の二つ下だ。弟気質の強い僕からしたら、珍しく弟分ができた気がして嬉しくて兄貴モードを身にまとった。

お互いmarvelが好きという話から、そしたら今度、映画見に行こうぜと、なんとも突発的な竜巻のようにこのイベントは起こったのだった。

息子くんはこの上なく接しやすい子で、お互い共通にアツくなれる話題を持ち合わせていることからすぐに僕たちは仲良くなれた。

見た映画はもちろんmarvel映画だ。映画の感想はまあまあだった。おそらくmarvelを知らない人が見たら面白くないのではないかと思ってしまった。しかし、僕らはmarvelが大好きだ。大好きなものには補正がかかる。何よりmarvelが観れたらそれでいいのだ。彼女が大好きすぎて、彼女のオナラまで愛せる彼女大好きマンと一緒だ。

映画は17時過ぎに終わり、解散するには少し早い。

「ごめんなさい、僕、このあと予定あるんです」

「火花くん、母から聞いてないですか?最近、彼女できて…」

息子くんが、4年付き合った彼女と最近別れたことは、お母さんから小耳に挟んでいる。しかし、もう次の子ができたのか、、、

どうやら、マッチングアプリで最近彼女ができたらしい。

少し寂しさが残るが、僕らは解散することになった。

「母にはマッチングアプリで彼女できたってこと言わないでくださいね」

息子くんはニタリと笑ってそう最後に言い残して去っていった。

あぁ分かるよ。母さんには言えねえよな。恋愛話ですら、母親に話せないのに、マッチングアプリだなんてもっと言えねえよな。

今や、マッチングアプリは恋愛や出会いの主流中の主流である気がするから、恥ずかしがる必要はないのに、どうして僕らは少し後ろ向きな気持ちになるのだろうか。きっと「欲」というものを、誰かに見られたりするのは恥ずかしいことなんだろうと僕は思う。それが親しい人なら尚更だ。でも別に恥ずかしがることは無い。出会いというものは、出会うまでではない。出会ってからはじまるものだ。うまくいくといいねと弟を見守る気持ちで息子くんを見送った。

「マッチングアプリで彼女ができた」が恥ずかしいものなら、僕の「言語交換アプリで、トルコ人と恋に落ちてトルコに行ってフラれた」のあのある冬の日の爆弾事後報告は、どれだけ衝撃的だったのだろう。

でも母さんは意外にも、

「私も遠いところから追っかけられたことがあるのよ」

と、昔の恋愛話で、僕の傷心を撫でてくれた。


人にはひとつやふたりくらい人に言いにくい恋愛があるのだろう。でもきっとどの恋愛もすごく尊いんだと、そう思う。


あぁ恋愛したいな。

今、僕は恥ずかしい。

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