ラマルクの進化論
「なあ真司ラマルクの進化論って知ってるか?」
神谷はいつも唐突に話の先が予測できない単語を放つ。
「なにそれ、ダーウィンの進化論なら知ってる」
「首の長いキリンは高い木の草を食べることができるけど、首の短いキリンは高い木の草を食べることができない。首の長いキリンは遺伝子が受け継がれていくけど、首の短いキリンは短い木の草しか食べることができないから淘汰されていく。それでキリンの首は長くなった。これがダーウィンの進化論。ラマルクの進化論は首の短いキリンが一生懸命高い木の草を食べるために首を伸ばしてたら首が長くなって、その頑張って獲得したものが子どもに受け継がれて、キリンの首は長くなったっていう説。」
「なるほどな、でもダーウィンの進化論が結局正しいんだろ?」
「うん、でも俺はさ、頑張って獲得したものの方がもともとある強さよりも強いと思うんだ。獲得したものが強ければ淘汰だってされない。それに誰かが頑張った功績や、凄いことってさ、受け継がれてきただろ?俺たちはまだ弱いけど、強くなって、俺たちが後世に色んなことを受け継がせていけば、人類はどんどん強くなると思う」
神谷の目は輝いていた、それは首の長いキリンの目ではなく、首を伸ばし続けたキリンの目の輝きなのだと僕は思った。
「おい神谷、いつからお前人類代表になったんだよ」
僕は鼻で笑うふりをして神谷の言葉が心に刺さったのを隠した。
そうだ、僕はこの残酷な競走世界で淘汰されずに生きたい。
首を伸ばし続けなくては。
すでに神谷のラマルクの進化論が、脳内を巡り血液とともに首に巡っていく、何か強いものが受け継がれているのを感じる。
僕らは今日も首を伸ばして進化し続ける。
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