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「この人と話そう」第0006回(後編):合同会社いとぐち/新倉裕さん


前書き

連載対談「この人と話そう」について

前編記事

主催者紹介

  • 野口 啓之

    • 株式会社きみより 代表取締役として、IT / DX を中心とした何でも屋さんとして顧問を請け負う

    • 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会 ( ピティナ ) 本部事務局 元 CTO → 現 IT 顧問

    • ネオプラグマティズムの思考様式をベースとしつつ、歴史学徒として概念史を嗜みつつ、ヨハン・ゴットフリート・ヘルダーの教育論研究を終生のテーマとする

    • ザックスを動かしたくなって黒マントを追跡中。

野口 啓之の写真

対談者紹介

  • 新倉 裕

    • 東京都・豊島区の WEB 制作会社「合同会社いとぐち」代表社員

    • 起業される方向けの必須ツール格安セット 「KIGYOしようぜ」 のサービスを展開しています。

    • ゲームはPCとSwitchで半々。Valheimで釣りライフしながらメガテン5の完全版待ち。

新倉 裕のイラスト

「社名に込められた想い」と清春からの影響

野口: それではここから後半戦に入っていきたいと思います。

新倉: はい。

野口: 新倉さんは、ご自身での音楽演奏経験がおありでしたね。また、ヴィジュアル系バンドを中心に 30 年くらい聴かれています。

新倉: そのくらいになりますね。

野口: そうした演奏経験・聴取体験を通じてですね、それが仕事に役に立った、ということって何かありますか? もちろん、人生そのものへの影響があるものだとは思いますが、とりわけ仕事という面に焦点を当ててみて。

新倉: そうですね……まず、ゲームクリエイターを目指していた頃は、ヴィジュアル系の楽曲、特に歌詞に支えられたなと思います。

野口: 歌詞ですね。

新倉: その頃、よく頭の中を巡っていた歌詞は黒夢の Like @ Angel。

野口: ああー! いいですね!

「初期衝動に 魅せられて 走り出した 僕の感性 いつまでも 閉じたくない」

黒夢 / Like @ Angel

新倉: とか。あとは SADS の 忘却の空 かな。

「誰かはあきらめることが楽と言った  『正反対さ』 と心で思った」

SADS / 忘却の空

新倉: このあたり、定期的に清春がね、メッセージを僕に送ってくれるんです。

野口: いやあ、すごくよくわかります。自分も高校生くらいの頃、その二つの歌詞、超好きでした。

新倉: それから、ここで初めて言うんですけれど、合同会社いとぐち の「いとぐち」っていう名前の由来について。

野口: おお。

新倉: 清春のソロの楽曲で、「夢心地メロディー」っていう、『SOLOIST』っていうアルバムに入っている楽曲に出てくるフレーズなんですよ。「緒(いとぐち)」っていう言葉が出てくるんです。

「幕が下りてゆく夜、新たな緒」

清春 / 夢心地メロディー

新倉: 「いとぐち」って漢字で書くと、「臍の緒」の「緒」で、まさに「臍の緒を結ぶ」という意味もあるんですよ。読み方も意味も、清春の歌詞で知ったんですよね。

野口: なるほどー。

新倉: 「ああ、これはすごくいいな」と思って、そのまま会社名に持ってきたわけです。社名の由来として、わざわざ説明する機会がこれまでなかったのは、清春の楽曲って誰にでも通じる話ではないというのがありますね。

野口: 確かに黒夢や SADS と比べると、特にソロの方まで聴かれている人は少なくなってしまいますよね。ちなみに私、Instagram アカウントでフォローしている数少ない人の中に、清春さん入ってますよ。センス面白いというかステキですよね。なんていうか、ヴィジュアル面まで含めて、「一人の表現者」っていう感じで。

新倉: 本当ですか。そうそう、そうなんですよ。例えば、ヴィジュアル系の中で好きな曲ランキングをつけるとすると、その中に黒夢の曲って、入るようでいてあんまり入らなくて。

野口: あ、そうなんですね。

新倉: でも改めて考えると、もしかしてこれは、清春の生き様が好きということなのかなと。

野口: 曲単位ではなく。

新倉: そうそう。もうそれを含めて、生き様の中に曲が含まれているので、「この曲が好き!」みたいなものが、あえてないのかな、とか、ちょっと思ったりしました。生き様ということで言うと、2023 年の紅白歌合戦に、ヴィジュアル系オールスターで Rusty Nail 歌っていたじゃないですか。

野口: ありましたね、あれ、「清春さん出るんだ!?」って、すごい衝撃的でした。

新倉: そう、「出るんだ!」っていう、それも衝撃的だったんですけど……清春の声が全然出てなくて。いや出てないんだけど、多分、喉の状態も悪かったのかもしれないですけど。でもやっぱりそれでも、あの場所に立つっていうのが、やっぱり生き様だなと。

野口: なるほどなるほど。

新倉: そういうことを改めて思ったりもしていたので、やっぱり清春の生き様が好きなんでしょうね。と、そのあたりが仕事に生きてるんじゃないかなと思うんですね。バンドやる人も、デザインする人も、「一人の表現者」として、要求されたことに応えなきゃいけないですよね。

野口: そうですね、プロとして。

新倉: メジャーの音楽シーンで要求されることであったりとか、デザインする上でクライアントから要求があったりとか。応えなきゃいけない。でも、それと同時に「表現者としての自我」も保たなきゃいけない。

野口: ありますね、板挟み。

新倉: このバランス感覚の持ち方、バランスの取り方は、自分で音楽をやっていた経験のおかげで、うまくできるようになっているんじゃないかなと思ったりはします。

野口: 息の取り方や間の持ち方とかもありますよね。

新倉: なんかこういう対談するといいなー、と思いました。今、自分で喋りながら、「そっか、自分ってそういうことを思ってたんだ」って、改めて自分で気づいています。

デザイン関係で受けた影響

野口: 清春という方は、幅広いというかなんというか、一人で本当にヴィジュアル系の隅から隅まで渡り歩いた、みたいな人ですよね。最初は「中絶」だの「親愛なる DEATHMASK」だの、すごいハードな曲をやっていたと思えば、いち早く脱・ヴィビジュアル系みたいなことをやったり、女性っぽいフェミニンな感じから一気に幅振り切って不良っぽい感じになったりとか。メンバーと衝突して解散して、ソロプロジェクトを始めてから完全なソロもやって。

新倉: はいはい。

野口: そんなこんなで黒夢を再始動させたと思いきや、それもまたやめちゃってソロになって……とまあ、他のバンドがやっていること、先駆者的に先陣切って走っている人だなと。

新倉: そうなんですよね。インスタ見るとほんと人脈の幅広さがわかりますし、本当に洋服・ファション好きなんだなっていうのも思いますし。

野口: まさにミュージシャンとしては清春という、生き様に影響を受けた方がいらっしゃるという話でした。今度はちょっと音楽から離れたところ、デザイン関係としてですね、デザイナーさんで影響を受けたという人はいるんでしょうか?

新倉: デザインに関しては、いつのまにか、ですかね……まあ何でしょう、必要に駆られてやっているというのが大きいです。こう、「雷を打たれたような感覚」っていうのはいないです。

野口: そうなのですね。

新倉: そんな中で、強いて挙げると、LUNA SEA のアルバムの歌詞カード。あの文字のレイアウトですね。空白の取り方とか。

野口: ああー! はいはい。

新倉: あのあたりは、自分の美意識の中に組み込まれている気がします。

野口: なるほどなるほど。ただ「情報を載せている」っていうわけじゃなくって、文字の置き方一つ一つも含めて「世界観だよ」っていう。

新倉: そうなんですよ。それまでのアルバムだと、サビのところが「※リピート」みたいな書き方だったりして。機能性に特化しちゃっていた。

野口: ありましたねー、そういう時代。

新倉: LUNA SEA の歌詞、結構衝撃的でしたね。その通り歌ってない、っていう。書いてあることを歌ってない、っていう。

野口: そして LIVE でもまた変わったりしますし。

新倉: そう。なんかね、それがすごい衝撃的で、こういった「見せ方」というものは、自分の身に染み付いているような気がします。

野口: 「文字の置き方」っていう点で連想したのですが、京極夏彦っていう作家、 妖怪もので講談社ノベルスからすごく分厚い本を出されてるんですけれど。

新倉: はい。

野口: すごく特徴的なことがありまして。講談社ノベルスって、上下 2 段の見開きページ構成なんですよ。

新倉: はいはい、そのパターンなんですね。

野口: 普通、文章を書く時って、どこでページめくりや行の折り返しになるかとかまで、気にされないものじゃないですか。もちろん、行の始まりにいきなり句読点などの記号が来たりはしないよね、みたいな禁則くらいはありますけれど。でも、「こんにちは。今日はよい天気ですね。わたくし、株式会社きみより代表取締役の野口という者です」という文章があったとして、「という者で」までが前のページに書かれていて、次のページをめくると、「す。」で終わる……というようなことは、まあありますよね。

新倉: はいはい。

野口: それが一切ないんですよ。全部の段、ちゃんと最後の一文、句点で終わるんです。ページまたぎをしないようになっている。

新倉: はいはいはい。

野口: しかもそれ、自分で全部そうやってるんですよ。小説を書いてるだけじゃなくて、段組の構成まで InDesign 使って、全部、京極夏彦本人がやっている。

新倉: 気が遠くなる作業だな……。

野口: すごいですよね、これ。 私もシナリオライター経験があるのですごくよくわかるんですよ。「見せ方」で自分の表現したい文章のニュアンスを変える、っていうことの重要性は。でも、後からの修正があったりするとめちゃくちゃ大変です。きっちりと、「みつしり」と文章を段ごとに収めていったとして、最後の方とかで、「あ、ここ直さなきゃ」ってなったら、段内だけで何とか修正をおさめるか、前の段まで遡らなきゃいけなくなったりとかするじゃないですか。しわ寄せが来る。

新倉: はい。

野口: それがありながらも 800 ページとか 1,200 ページとかの大作が来るわけですよ。なんか途方もないことやってるなとしか思えない。

新倉: うん、すごい。何だろうな、それは……何の力がすごいのか……編集能力なのか、忍耐力なのか、あらゆる力か。

野口: そもそもの発想として InDesign で小説書くのが最適だという感覚が凄まじいです。

新倉: それ、すごい美意識ですよね。

野口: これ知ったのは 2000 年代初等頃で、たぶん高校生の時なんですけれど、ここまで徹底してやる人がいるんだなーっていう、一つの極致を見た気がして、影響を受けましたね。

新倉: お互いの話で刺激し合って、いろいろと思い出されることがありますね。

IT 業界で生き抜くための心身の整え方~メンタル編

新倉: 次のトピックなんですが、IT 業界で生き抜くための体調の整え方について話してみたいなと。

野口: これを取り上げられた背景からお伺いしても?

新倉: 我々 40 代になりましたね。これまでって、メンタルについてだけ、気を遣っていればまあまあ良かったですよね。身体は動いていた。ところが段々と、フィジカルの方もなかなか、気持ちはあるけど動かない、みたいなことが増えてきまして。

野口: ああー、はいはい。

新倉: たとえば、「なんか今日やたらとだるい」みたいなこととかですね。だからメンタルだけじゃなくてフィジカルの方にも、ちょっと気を配っていかなきゃいけなくなりましたよね。という感じで健康の話をしたい、というのがひとつめです。

野口: はい、ひとつめ。

新倉: ふたつめとしては、こういうトピックを入れておかないと、僕、音楽とゲームの話しかしないんじゃないかなと思って、ちょっと予想外の話題も持ってこないとなぁという意図です。

野口: なるほど(笑。

新倉: それからメンタルについても、ちょっと去年、「これは何なんだろう」と、すごく考えたことがありまして。

野口: そうなんですね、そうしたらフィジカル話とメンタル話、どちらからいきましょうか?

新倉: まず、メンタルからいきましょう。ちょっと重いかもしれないので、むしろ先に聞いていただければ、と。

野口: はい。

新倉: 先ほども話しました通り、前々職、ファッション系の会社を辞めたのも、メンタルを病んでしまったからでした。やはり納期に追われたり、他部署の方から詰められたり。まぁ、分かりやすくストレスがかかりまくっていたわけです。それで、ストレスの限度を超えれば、身体も心も動かなくなる、病んでしまうんですよね。

野口: そうですね。

新倉: ただ、何て言うんだろうな、そういう分かりやすいものだけではなくて、気づかないうちに、こう、メンタルが蝕まれていっているんじゃないかな、と思うことが、去年ありまして。

野口: はい。

新倉: ライティングのお仕事があったんです。今、ライティングのツールとして Google ドキュメントを用いれば、バーっと書かれているものに対して、関わる人たちがコメントを入れられますから、そうやってみんなで編集して進めていくことって、多いじゃないですか。

野口: そうですね、まさにこの対談記事もそうやっています。

新倉: この進め方はすごく便利で、やり取りもスムーズですよね。それでですね、当時、僕の書いた原稿が何千文字くらいだったかな、結構な分量を書いたテキストだったんですけれど、それを読んだクライアントの方がですね、コメントを入れてくれたんです。

野口: はいはい。

新倉: それがですね、割と結構な分量のところを指定して、さらっと、「ここからここまでリライト」。

野口: えー……。

新倉: 何だっけな、たしか、「ターゲットに文章が合っていなかったので、ここからここまでリライト。ターゲットは何とか」、みたいな感じ。たったその 2 行だけが書いてあったんですよ。

野口: なるほど、キツイ。

新倉: そのコメントされた方とは、チャットツールとかでコミュニケーションが取れる状態だったんですが、チャットでのフォローも何もなく、その 2 行、そう書いただけなんです。

野口: うーむ。

新倉: で、正直、僕はそれを見た時に、まずね、何を言われているのか分からなかったんですよ。

野口: まぁ、まぁ、そうですよね。そこはさすがに「フィーリングじゃねぇよ」、って思ってしまいますよね。

新倉: これが「指示」だっていうことに気づくのに、すごく時間がかかって……。で、やっと指示だということが分かった後に、ものすごくね、「怒る」っていうか、なんだか力が抜ける感じがしたんですよね。

野口: なるほどー……。

新倉: もう、力が湧かない。クライアントさんは、この 2 行を書けば、僕がリライトしてくれるものだと思っている。これって、僕は人間扱いされていないんだなって、思ったんですね。

野口: そう思うのも当然ですよね。

新倉: その方とは、その後も何度かオンラインミーティングを通じてやり取りしていたりとかするわけです。で、そこでやり取りする時に、「やっとけよ」みたいな感じで横柄な態度を取られていたら、コメントの書き方との整合性がつくんですよ。でも、オンラインミーティング上では、それなりに人当たりがいいんですよ。

野口: ははあ、そこは、社会人として普通の応対をされるんですね。

新倉: そう、普通の応対もできる。決して当たりは悪くない。だからこそ、どうにも整合性がつかないんですね。これについてモヤモヤしていたら、ちょうど、昨年末くらいに、社会学者の宮台真司さんがですね、マルティン・ブーバーっていう哲学者の『我と汝』という著作を引いて、お話しされたんですよ。

新倉: 宮台さんがされていた話をざっくり要約すると、人間の関係性には、「我と汝の関係性」と「我とそれの関係性」というのがあって、ビジネスにおいてはやっぱり、「我とそれ」つまり、汝ではなくてモノとして扱われる関係性というのが、基本的になってしまうらしいと。

野口: なるほど。それ。イットですね。

新倉: ビジネスの世界は、バトルフィールドなので、モノとして扱われることで人は傷ついてしまうのだけれど、家族や仲間がいるホームグラウンドに戻った時には、「我と汝」の関係性になるので、そこで回復することができる。癒されて、そしてまたビジネスのバトルフィールドに戻っていく。という主旨の話を、説明されていたんですよ。

野口: 分かりやすいですね。

新倉: で、まさに先ほどのドキュメントでのやり取りっていうのは、モノとして扱われている関係性なんですよ。ただ、これがビジネスの基本だ、っていうのは分かるんですが……ちょっとそれにしても、ソレすぎないか、と。モノ扱いしすぎじゃないか、と、なったんですね。

野口: はいはい。

新倉: しかも、おそらくそのクライアントさんは、それが無自覚なんですよ。

野口: ははあ、ずっとそういうスタイルで来ちゃっているから。

新倉: 来ちゃっているから、そういうことをすると、相手の力が湧かなくなってしまうっていうことが、想像できなくなっているのかもしれない。だから、分かりやすく怒られるとか恫喝されるとかいったことでなくても、こういったこと、モノとして扱われることによって人間のメンタルというものは削られていくんだということが、分かってないんじゃないかな、と思いました。

野口: まあ一種の認知バイアスですよね。

新倉: そのクライアントさんは、私より年代が若い方なんですよ。もちろん、年代で簡単に区切ってしまうのはあまり良くないかもしれないですけど、もしかすると、若い世代の方は、こういった Google ドキュメントを用いた共同編集なんかも当たり前になってるし、便利だから、こういうコミュニケーションが当たり前になっているのかもしれません。

野口: 確かに、確かに。

新倉: 無自覚に人をモノ扱いして傷つけたりするし、逆に、傷つけられた側も、そうされるのが当たり前になっているから、モノ扱いされているっていう事態に気づけなくても、知らないうちに傷ついてしまっている。でも、自分が何によって傷つけられ、何で傷ついてるかが分からない。分からないうちに、自分はすり減っていってしまう……っていう現象が、あちこちで実は起きちゃっているんじゃないかな、と思ったんですよね。

野口: ああー……ありそう……。深い……

新倉: っていうね、現象が実は起きているんじゃないかっていうの、ぼんやりと思ったんですね。さらにもう一つ、「無自覚な例」があります。

野口: はい。

新倉: こちらはまた別のクライアントさんとお話している時です。メールでのやり取りとか、チャットツールでのやり取りに関して、喋っている時にですね。クライアントさんが私に対して、「御社とのコミュニケーションコスト発生のため……」みたいなことを言われたんですよね。

野口: おおう……。

新倉: いや、分かる、と。コミュニケーションコストが発生するのは、それは分かるけど、僕に向かってコストって言わない方が、きっと良いんじゃないかな、と思ったんですよ。

野口: ですよねえ。

新倉: でも、この人も多分、無自覚に、コミュニケーションがコストだっていうことを言ってしまっている。こうやって無自覚に人を傷つけていると言いますか、傷つけるまでいかなくても、力が抜けるような感覚にさせてしまっているというのが、他にもたくさんあるんじゃないかなと思っています。

野口: 自身の認知バイアスに対してメタ認知を持たないといけないわけですから、その人ひとりだけで自覚的になることって難しいんですよね。

新倉: 野口さんも、現場に入られていろんなやり取りされるじゃないですか。そうするとなんかこう、働かれている方のメンタルが目についたりとかするんじゃないかなと思いますが、どうでしょうか?

野口: 前職での CTO 時代には、もちろんチームメンバーのメンタル対応というところには、たいへんな時間と力と頭とを割いていましたね。チームビルディングにおいてこれが一番の課題といっても過言じゃないのではないでしょうか。言い方がものすごく悪く聞こえてしまうかもしれませんが、他者へのメンタルケアの必要が最低限で済む仕事環境というのが、本当に最高の福利厚生なのではないかと感じています(笑

新倉: 他者のメンタルのために、自分のメンタルが削られていくっていうことありますよね。

野口: そうなんですよ、本当にメンタルダウンしちゃったことありました。

新倉: もう経験済みでしたか……。

野口: いつだったかな、2022/03 だから 2 年前ですね。朝、急に起き上がれなくなっちゃいまして。

新倉: ああー……

野口: 本当に、身体に出ちゃいまして。

新倉: そうなんですよ、身体、動かなくなるんですよね。

野口: 水がずっと、ポタポタポタポタと垂れ続けていると、石を削って穴を開けていくっていうことがあるじゃないですか。そういう感じで、一撃一撃は何てことはないし、自分の精神がそういう風に削られてるっていう自覚すらなかったんだけれど、穴が開いて貫通してしまってから、「あー、掘削され続けていたのか」ということに初めて気づいたわけですね。

新倉: はいはい。

野口: ただ、しばらく考えを巡らせていると、「こういうことがあったから、メンタルがダウンしたんだろうな」みたいに言語化できまして、そこからちょっと落ち着いたんですよ。

新倉: 良かった。

野口: これは、フィジカル的なウイルスとか細菌とかの感染症じゃなくて、メンタル面の問題だろうっていうことが自覚されたら、じゃあ、このメンタルを復活させるにはどうしたらいいかなーってなるじゃないですか。

新倉: はいはい。

野口: 知識や記憶を洗いながら、Google 検索できるくらいまではちょっと回復したので、検索して再確認したんですけど、他のことを何にも考えられないようなシンプルな作業を続けてみると、精神が落ち着いてくるらしいぞ、っていうのがありまして。

新倉: はい。

野口: そうした目的で精神療法的にリハビリとして使われているゲームが何かっていうと、テトリスなんですよ。それで、Nintendo Switdh に「テトリス99」ってあるじゃないですか。あれをですね、それから毎日 3 時間か 4 時間くらい続けたんですよ。もともと好きだし得意な方だったんで、無心になって数日やっていたら、まあまあ治りました。

新倉: へえー。いやなんか僕の友達でもメンタルやられた人がいまして、その人に「どうやって直したの?」って訊いたら、「筋トレ」って言われたんですよ。

野口: はいはい。

新倉: やっぱりそういう、集中できる作業というか、そういうものが有効なんですね。野口さんがテトリスで治したって言うんだから、その友達の筋トレの話も信じられました(笑

野口: (笑 いや実際、前職の上長というか代表の方が、筋トレを定期的にやっている経営者で、彼から聴いていた話なのですが、「バーベルを上げよう!」という時って、雑念が入ったら絶対にバーベルが上がらないし、最悪の場合は怪我するかもしれないから、本当に真剣に「バーベルを上げるぞ!」ということ以外には何も考えられなくなる、って言うんですね。

新倉: はい。

野口: それがメンタルコントロールにとても良い、ということだそうなんですよ。経営者やってると、本当にいろんなことに気持ちが囚われてしまうけれども、一切の雑念を取り払うのに、バーベル上げのようなことはとても良いということをおっしゃってました。だから、ご友人が筋トレで復活した、っていう話は、私にも信じられます(笑

新倉: なるほど。いやー、面白いです。やっぱり整え方は、人それぞれですね。

野口: それぞれにありますよね、人によっては、サウナに入るとか、座禅組んで瞑想するとか、色々と。ただ、私は剣道をそこそこ長くやってたから、瞑想を 15 分やる、とか、平時なら問題なくできるんですけれど、メンタル落ちてる時に瞑想しようとしてもダメだな、っていうのは、なんかもう直感的に分かりましたね。

新倉: なんか、より深みに引きずり込まれそうですよね。

野口: そうなんですよ。合う人もいるとは思いますけれど、自分の場合は、強制的に、脳を使わずに脊髄レベルで行動し続けられるようなことを何か作っておくというのが大事なんだな、と実感しています。

新倉: なるほど。

野口: ただ自分も、「コミュニケーションコスト」といった類の言葉は使ってしまいがちなので、我が振り直せ、みたいに気をつけなきゃいけないな、と思わされました。自分だけではないと思うのですが IT エンジニアって、コストという言葉を、ニュートラルな、フラットな意味合いで使っている感じがありますね。技術的コスト、とか。

新倉: 確かに、そうかもしれないですね。

野口: コストはあくまで一例で、話を広げると、そういった特定の「文化圏」みたいなところから離れている方々、そうした「用語」に慣れてない方々に向かって、つい使い慣れている「用語」をぶつけちゃうと、「うわ、なんだ」となってしまうんだろうなと思いました。

新倉: はい。

野口: ちなみに私は、「クライアント」っていう言い方があんまり好きじゃないんですよ。「クライアント」って呼び捨てにするんじゃなくて、「クライアントさん」って、「さん」付けした方がいいんじゃないかとか。

新倉: あー、なるほど。クライアントさん。

野口: 他には、「業者」とかですね。「撮影業者」みたいな。「撮影業者さん」って言った方が気持ち良いよね、って思うんですよ。あとは、部署名とか。たとえば「これは営業に投げといてー」みたいなやり取りは、それこそイットなんだなって感じてしまいます。

新倉: そうですよね、そういった細かいところがね、一滴一滴、石を穿っていくんですよ。だから、こうしたやり取りを通じて、無自覚的なことを言葉にし自覚していく、っていう作業というのは、すっごくコツコツした作業になりますけど、でも、良いことだと思います。

野口: 分かります、分かります。

新倉: 先ほど挙げたドキュメント編集に携わってたクライアントさんに対しては、やっぱりちょっと、直接言えないというかね、そもそも何て言えばいいか分からない。「人間扱いしろ」って言っても、相手はピンと来ないと思うんですよ。

野口: そうか、まあ、無自覚だからですよね。

新倉: そう、そうだし、僕がそれを気づかせてあげるだけの責任も義理もないと思うので。ただ、こうやってお話しできる関係性の中で共有できると、すごく良いのかなと思いました。

野口: いやあ、ありがとうございます。

新倉: あ、全然別の話として、今の流れで思い出しちゃったことがあるんですけれど。

野口: はいはい、何でしょう?

新倉: コンビニで唐揚げとかホットスナックを買った時に、袋に入れてくれるじゃないですか。

野口: はい。

新倉: で、一緒に冷たいものを買っていたら、一緒に入れていいかどうか訊かれるじゃないですか。

野口: はい、分けるかどうか。

新倉: そこで店員さんが「あの、これ、ジャンクフードも一緒に入れていいですか?」って。

野口: (笑

新倉: 君がジャンクって言うんだ! と。

野口: 言葉の選び方!

新倉: いや、そう、ジャンクね、ジャンクかもしれないけど。

野口: 多分、お店のバックヤード側では「ジャンクフード」として扱われてるんでしょうけれど(笑

新倉: っていうエピソードを思い出しちゃいました。ちょっと今、どうしても言いたかった。

IT 業界で生き抜くための心身の整え方~フィジカル編

新倉: じゃあ次に、フィジカルですね。野口さんは運動とかされてますか?

野口: 運動は自宅での筋トレが中心になっていますね。最近流行りのチョコザップが近くにあるので、通ってみようかなーとか、思っていましたり……。

新倉: なるほど、通ってみようかなー、の段階なんですね。

野口: そうそう、マッサージチェアも導入されているらしく、それ使うだけでもいいかなーって思っていたら、昨年末に膝を痛めてしまいまして、膝が完全に治ったら行こうかなと思っているんですが、何だかなかなか完治しないんですよね。

新倉: なるほど、なるほど。

野口: 膝痛めちゃった、っていうのがまさに、フィジカルの話ですね。これまで膝を痛めるなんて、まずなかったので……。

新倉: はいはい、そうですよね。座ってるだけでも、どこかしら痛くなってくるし。幸いにして僕は、肩凝りというものをあまり感じない方なんですよ。その点、この仕事には向いてるのかなと。

野口: 肩と言えば、以前に四十肩になったって言われてましたよね。

新倉: あーそうですね、四十肩やりましたね。それが、痛くもないのに気がついたら動かなくなっていた、っていう……

野口: おお……

新倉: 腕が上がらなくなっちゃって、整体に行くことになりました。そういうこともあって、「痛い」っていうのがなかなかあらわれづらいのかもしれません。だから、もしかしたらね、すごいダメージが蓄積しているのかもしれないです。痛いっていう信号を発してくれるのは、身体としては正しいですよね。とはいえ、あんまり痛いのが続くのも、仕事上は辛いですし。

野口: 確かに、悩ましい。それで、新倉さんの運動状況はどんな感じでしょう?

新倉: 基本的に平日はジョギングしていますね。最近のブームとしては、昼間に走っちゃうんですよ、休憩がてら。

野口: おおー。

新倉: 今日も、もう昼間のうちに走って、シャワーも浴びちゃいました。今日はめちゃくちゃ暖かかったですね。やっぱり昼間に走ると、すごく気持ちがいい。

野口: 冬場は特にいいですよね。

新倉: 今年は本当にあったかくて走りやすいですね。もともとは夜に走ってたんですよ。ただ、夜に音楽を聴きながら走るのって、結構危なくて気を遣うんですよね。

野口: 無灯の自転車が来るかもしれないとか、そういうのありますよね。

新倉: そういうのありますからね。それが、昼間に走るようになると、そこまで気を遣わずに済むから気持ちも晴れるし、身体もいい感じで疲れがとれるので、リフレッシュとして仕事の合間に走るのって良いなと思います。まぁ、こういうことができるのも、今のテレワーク中心の働き方が当たり前になったっていうのが大きいですね。

野口: そうですよね。ちなみにどれくらいの距離を走るんですか?

新倉: 今は 5 ~ 6km 走るくらいで、本当に走るときは最長で 20km くらいですね。

野口: おおー、それは結構走りますね。

新倉: 20km は、休みの日とかに、ちょっと長く走ってみようかな、と思った時くらいですね。楽しく走れるのがそれくらいまでなんですよ。

野口: 20km も楽しく走れるのはすごいですよ。やっぱり音楽を聴いてると、その音楽のビートというかテンポに合わせて走るようになるんですか?

新倉: そうですね、昔は音楽につられてペース上がっちゃっても走れてたんですけど、今はちょっと体力落ちてきちゃったということもあって、音楽よりポッドキャストを聴くことが多くなってきました。

野口: あー、なるほど。

新倉: たとえば X の  BLUE BLOOD を聴きながら走ると、やっぱり……

野口: BPM 220 くらいで(笑

新倉: どんどんペース上がっちゃって大変なことになっちゃうんで。

野口: 走り始めたのはいつぐらいからなんですか?

新倉: これがもう結構長くて、20 年以上走ってるんですよ。

野口: おおー、そうなんですね。

新倉: もともと太りやすい体質で、走っていないと太ってしまう、っていうのもあって、ダイエットを兼ねて走り出したのがきっかけですね。

野口: 最初から今くらいの距離を走られていたんですか? それとも段々と長くなっていって、今くらいのところで落ち着いたような?

新倉: 走り始めたのもやっぱり 5 ~ 6km くらいでしたね。ただ、段々と欲が出てくるというか、長く走ってみたいなっていう気も起きてきて、10 ~ 20km まで走るようになりましたね。

野口: なるほどー。そうしたら、マラソン大会に出られたり?

新倉: えっと、ハーフマラソンは 2 回で、フルマラソンは出たことないんですよね。

野口: あ、そうなんですね。有名な「東京マラソン」や「ホノルルマラソン」に出てみたい、とか、そういうのは特にないんでしょうか?

新倉: ホノルルで走れたらいいですねー。ただ、ホノルルはお金かかるっていうのがありますし、東京マラソンだと競争率が高いんですよね。参加するまでが大変。

野口: そうか、そうですよね。

新倉: そもそも、毎年、思い出した頃にはもう参加が締め切られてる(笑

野口: なるほど(笑

新倉: でも、東京の道路の真ん中を走れるって、貴重な体験だと思うのでやってみたいっていうのもあるんですけどね。

野口: 他ではできない体験ですよね。マラソンを続けていて、フィジカルを鍛えてることによって、自分に返ってきたと実感できたことっていうのは、何かありますか?

新倉: やっぱり長距離を走ってると、それに伴ってメンタルも辛抱強くなる気はしますね。長距離を走れる人のメンタルっていうのが、この仕事には向いているような気がしますね。

野口: ランナーズハイ的なところでしょうか。多少苦しいことがあっても、いずれまた楽な時も来るよ、みたいな。

新倉: そうですね。

今後の展望

野口: それでは最後に、今後の展望、今後こういうことをやっていきたい、といったことをお伺いしたいと思います。

新倉: そうですね、やはり初めて作った自社サービスの「KIGYOしようぜ」をどんどん広めていきたいと思います。まさに社名の通り、起業される方にとっての「いとぐち」となれるようにサポートしたいという気持ちがすごく強いので。

野口: はい。

新倉: というのも、自分が独立した時に大変でしたが、それでも自分の場合は自ら WEB サイトが作れたからよかったんですよ。でも、そういうスキルを持っていない方は作れないんだから、自分の場合よりもコストがかかってしまうわけですよね。

野口: 外注費が乗っかってきますね。

新倉: だから、そこのコストを抑えて作れるように、っていうことを意識して作ったサービスですので、そこをアピールしながら「KIGYOしようぜ」を広めていきたいですね。これから起業される方、言い換えれば、本当にワクワクするような新しい仕事をされる方と繋がっていきたいですね。これが弊社としての展望です。

野口: はい!

新倉: それとは別に、会社と関係あるかどうか、っていうところではあるんですが、ポッドキャストの配信に興味を持っているんですよ。

野口: おおー、それはやっぱり、走りながらポッドキャストを聴いていることから、「自分でもこれやってみたいなー」と刺激されたんでしょうか。

新倉: そうですね、それもあると思います。やっぱり喋っていると、喋っていることによって気づかされることが多そうですし。ただ、一人語りもできなくはないんでしょうけれど、今回のように誰かと喋ることによって、お互いに引き出されることもあるでしょうから、対談でやりたいですね。

野口: なるほど。

新倉: ポッドキャストって、そこまですごく面白い話をしなくてはいけないっていうわけでもなくて、雑談で、作業中のイージーリスニングとして気兼ねなく聴けるようなものも多いんですよ。なので、そういった感じのことも良いかなと。

野口: 形式としては、毎回ゲストをお呼びしてっていう感じでしょうか?

新倉: いえ、決まったパートナーとずっとやっていく形式を考えているんですよ。だから、「やる」ってなったら、本当にちゃんとやり続けていくっていう覚悟、しっかりした気持ちを持ってお相手にお願いしなきゃいけないなと思っています。やるんだったら、本当、ちゃんとやらなきゃいけないな、と。

野口: おおー、結構、ハードルをしっかり上げられている感じなんですね!

新倉: そうなんです。自分の中でハードルを上げていて。これはもう単刀直入に言うと、パートナーとして野口さんにお願いできたらいいな、と思っているんですよ。ただ、まだ踏ん切りがついていないところです。

野口: 自分でよければぜひ! すごく面白そうです。私も、十何年か前に、ニコニコ生放送で一人配信を結構やってたんですよ。

新倉: そうなんですか!

野口: その時、昔なじみの友達と一緒に「ラジオ」やろうって盛り上がったこともありまして。当時はポッドキャストっていう単語よりも、「インターネットラジオ」っていう呼称の方がメジャーだったような記憶があります。

新倉: ありましたね。

野口: それで、ラジオの台本作って事前チェックして、配信本番に臨む、みたいなことまでやっていたんですけれど……やっぱり台本作るまでってなると、気力と時間が必要になりすぎて続かない(笑 でも、そういうことをやりたいという気持ちは今でも持っているので、もし踏ん切りがついたら、お誘いいただければ嬉しいです。

新倉: ありがとうございます。野口さんとだったら、いくらでもいろんな話ができる気がしていて……なんて言うんだろう、感性といったという部分でもそうですし、ものの捉え方とか見方とかっていうのも、相通じるものがあるなって感じています。なんたって、社名もお互いひらがなで。

野口: ひらがなというだけでなく、「いとぐち」には「紡いでいく」という意味合いが込められていて、「きみより」にも「縒っていく」という意味合いが込められていて……そこまで似てるんですよね。

新倉: すごいですよね。こんなことあるんですね、っていうくらい。それで、このポッドキャスト配信について、踏ん切りがついていないことについてですが……いや YouTube で一人語りということも、何回か録ってみたりはしたんですよ。ヴィジュアル系の話をしてみたりしたことはあるんですけど、一人語りはなかなか難しいという手応えです。

野口: そうですね、確かに、生放送でもないのに一人語りって、結構大変そうですよね。生放送だと、コメントが来て、そのコメントに対して双発的に話が展開していくっていうことが起こりうるんですよ。コメントとの対談に近いですよね。一方で、一人で口を回し続けるのって、辛くなってきますね、やっぱり。

新倉: そうですよね。結局、漫談ですからね。誰かと引き出し合うっていう作業がないので……本当に一人で喋っていると、ほんと頭真っ白になりません?

野口: わかります、わかります。生放送でも、誰かが来てコメント残し始めてくれるまでは、やっぱり一人で話し続けなきゃいけないんですよ。たとえばずっと黙って待っているだけだと、そのタイミングで視聴者が来てくれたとしても、離脱されちゃう。だから、いつ来るかわからな状態で虚空に向けて喋り続けていなくてはいけないんですよ。

新倉: なるほど。

野口: ただまあ、最初入り口のところで 10 分も喋っていれば、だいたい誰かしらは来てくれて、話が展開するようになりはしましたね。当時、ニコ生って最長 30 分が一枠で、25 分ぐらいまで誰も来なくて、25 分ぐらいコメントもなく話し続ける、みたいなことはありましたけれど……(笑 定期的にずっとアレを続けろって言われたら嫌になってやめちゃいますけど、誰か来てくれるかもしれないっていう希望があれば、話すことはできるかなと思います。

新倉: はいはい。

野口: でも、やっぱり最初から誰かパートナーと一緒に、っていう方が、楽でしょうね。自分自身の引き出しから色々出してもらえそうです。自分の封印された記憶みたいなものがたくさん出てきそうで(笑 自分一人だと、そんな発想が出てこないというか、そんな話は思い出せないけれど……。

新倉: そうなんですよ、僕もそうです。今回、久しぶりに巨大ポスターの話を思い出しました。

野口: 今回の対談で、記事にするにあたっては色々固有名をカットしていますが、他者の口から音声で聞いたのはもう 20 年ぶりかな、みたいな名前がたくさん飛び交っていました(笑 あ、そうそう、妻と話していてもそうで、「グルシャン」っていう世界があるっていうことを、この前、本当に久しぶりに思い出したんですよ。「グルシャン」って聞いたことありますか?

新倉: え、何ですかそれ?

野口: 「グルメシャンプー」っていう、シャンプーをテイスティングする嗜好の世界があって、「インターネットの闇」みたいな話です。

新倉: おおお……。

野口: その、「グルシャン」っていう単語を最後に見たのが多分 12 年くらい前で、そのあと 12 年間は完全に封印された記憶だったんですけれど、つい細菌、妻と話していて、ふとした瞬間に「グルシャン」を思い出してしまいまして。「メリットは不味い」とか、「ラックスが美味しい」とか……それから、シャンプーのお湯割りだの、水割りだの……。

新倉: すごい世界だ……。それはアレですか、お二人のうちどちらかが飲まれていたのか。

野口: いやいや(笑 何年か前に開封したきり忘れていた古いハンドクリームが見つかったんですよ。それで、ハンドクリームって使用期限が一応決められているけれど、「まあハンドクリームを飲まなきゃ大丈夫じゃない?」って冗談で言った時に、そこから連想で、「ハンドクリームを飲む」→「シャンプーを飲む」→「あー……!」みたいな感じで、思い出しちゃいまして。

新倉: はいはい、なるほど。これは、しっかり明言しておきましょうね。シャンプーを飲むのは人体に悪い影響がある可能性が大きく、大変危険なので、皆さん絶対に真似しないようにしてください。

野口: 真似しないように。ちゃんと記事に太字で書いておきます。こんな感じで、「グルシャン」について紹介して話す、みたいな感じで、ポッドキャストの 1 回分、できちゃいそうですね(笑

新倉: 本当ですね。いやほんと、初めて聞いた。

野口: ということで、まだまだ話は尽きないんですけれども、本日は本当に長時間にわたりありがとうございました!

新倉: いやいやほんと、楽しくお話しさせていただきました。ありがとうございました。

後書き

野口です。ここまでお読みいただきありがとうございました。

前編に続いてとても広範に濃い話ができてとても良かったです。

とはいえ、単にマニアックな話を二人で楽しんでいるというだけでもなく、第三者視点で汎用性ある話題にも数多く触れることができているように、編集しながら感じられました。

特にハッとさせられるのが、「コミュニケーションコスト」についてです。
この語を知らず知らずのうちに使ってしまうことによって、本来はコストであってはならないはずのコミュニケーションというものに対して悪いイメージばかりが先行しやすくなってしまいかねないな、という点は、大きな気づきでした。
もちろん、「生産性向上」という観点から、数値化・可視化をおこなうことは重要なのですが、それとこれとは話は別ですね。
日常的に使っている言葉に思考が引きずられてしまうということは起こり得ますので、注意深さが要されます。

もし今後、ポッドキャストが開始されるようでしたら、本記事にリンクを追記いたします!

記録

  • 対談日

    • 2024/02/14

GitHub 上でのファイル

https://github.com/Kimi-Yori/TalkWithThisPerson/blob/main/articles/0006-2.md


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