ドラゴン目黒仮

8:朝食

これまでのDragon Eye

ーーーーーーーーーーー

「…………………………うぁ‼」

少女は声を上げながら、突然目を覚ました。

周りを見渡して自分がどこにいるのかを確認した。目には小さなキッチンに、丸いテーブル、二つの椅子、テーブルの上には母がくれた画材入りの箱が置いてある。

「家だ……」

少女は頭では理解しているのだが、安心したいのと確認の為につい声に出してしまう。

最後に自分が今乗っかっているベットに視線を落とす。ベットに沈む自分の体、足や手を確認する。

着ている服は泥だらけだった。体は汗でびっしょり、足や手にはいたるところに切り傷がある。そして……手が震えていた。

少女は今まで自分が見ていた夢を思い出す。そう、少女は夢の中でもドラゴンに合っていた。夢の中でドラゴンに見つめられていた。あの目が……あのドラゴンの目が忘れられない……。

今でも瞼を閉じるだけで頭の中に思い浮かぶあのドラゴンの目が……。

少女がそっと瞼を閉じたその瞬間だった……!

「ぐぅ~~~~‼」と少女のお腹が鳴ったのだ!

少女は誰もいない家の中で一人赤面した。そして次の瞬間腹を抱えて笑い出した!

「はは!はははは‼」

今の今までドラゴンに恐怖して、手まで震わせていたのにそんなことお構いなしで盛大な音を出した自分の腹の虫がおかしくてたまらなかった。

笑いが収まるころにはすっかり手の震えが止まっていた。

「パン‼」

少女は自分の足を手で叩いて体に無理やり力を込めた。

ベットから立ち上がり、その勢いで汚れた服を脱ぐ。水で濡らしたタオルを準備し、土や汗で汚れた体を丁寧に拭いていく。傷になっている部分は特に丁寧に慎重に拭いていった。体の次は顔を洗う。冷たい水がとても気持ちい。体にこもった熱を冷ましていった。

体や顔を綺麗にしたら新しい服に袖を通す。

体の汗や汚れを綺麗にすると、ようやく少女に余裕が出てきた。

いつものように自分のペースで朝食の準備に取り掛かった。

メニューはとても簡単なモノでパンにベーコン、目玉焼き、そしてサラダを慣れた手つきでテキパキと準備していく。

あっという間に朝食の準備を終え、テーブルに完成した料理をならべて行く。

どれもこれもいつも通りおいしそうに出来ている。しかし、何故か量がいつもの倍ぐらいあった。少女がそれを意図してやったのか……それとも自然にそうなったのかは分からない。

そんなことお構いなしで少女はテーブルに着いた。

そして手を合わせていつものように祈りを捧げる。

そして家の中に少女の声が響く!

「いただきます‼」

ゆっくりとパンを口に運んで一口食べる。

「おいしい……!」

いつもと変わらないはずのパンがとてもおいしく感じられた。そこからはノンストップ!パンにベーコン、目玉焼き、そしてサラダを次々と食べていく。はじめは多いと思っていた朝食だが、あっという間に残すところパン一つなっていた。

最後のパンに手お伸ばして、ゆっくりと一口サイズにちぎりながら食べていく。

ゆっくりとゆっくりと食べていく。

「スン!スン‼」

家の中に少女が鼻をすする音が響く。

少女は涙を流していた。

何故涙が流れるのか少女自身にもわからなかった……。

ただ、自然と涙がこぼれ落ちてきたのだ。

そして少女は小さく呟いた。

「生きてる」と涙と共に呟いた……。

そしてパンの最後の一切れを口に含む。

少女はそれをゆっくり噛みしめながら食べていった。

「ごちそうさまでした!」

少女は朝食を終えた。

読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。