Good night ~ 8夜:登校~
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全ては一つの曲から始まった……。曲の名は『Good night』。その曲を耳にしてから僕は一睡もできなくなってしまった。それと同時に不思議な力も手に入れた……。影が自我を持ち動き出したのだ。自分の体……。そして影に起きている謎を解くために、僕は謎の曲『Good night』の噂の出所を調べることした……
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『まずは噂の出所を探るのが一番だよな~』
『明様はどの様に曲を知ったのですか?』
学校までの登校中もカゲロウと心の中で会話をしていた。この心の中での会話というのはとても便利なのだが……。なかなか慣れない。なぜかというと、考え事をしながら歩くという感覚に近いので少し周りへの注意力が低下するのだ。ま、歩きスマホよりはましなのでたいして支障はないのだが……。
『友達にすすめられたんだよ。普通に……。やっぱり、そこからあたってみるか』
『地道な捜査になりますが頑張りましょう、明様! 大丈夫です、私が足元についております!』
『カゲロウは何か情報収集に使えそうな能力持ってないのか? 昨日の夜の影を体に巻きつけて身体能力上げるみたいなやつ。他にはないの?』
そんな都合のいい能力があるとは思っていないが、先に聞いておかないとカゲロウは後出しが多いので今回は先手を打つことにした。
『そうですね~~』と言いながら少し考え込むカゲロウ。
その時、ちょうど信号が赤だったので足を止めながらカゲロウの答えを静かに待つ。学校が近づいてきたのもあり、生徒達も周りに増えてきた。一緒に登校する女子生徒のグループや音楽を聴きながら一人で登校する男子生徒の姿が視界に入る。
信号が青に変わると同時にカゲロウが返事を返してきた。
『明様、1つ使えそうな特技があります!』
そんなに都合よく使える力があると思っていなかったので、カゲロウの返答は期待していなかったのだが……。
『で、その特技って?』
『耳がいいです!』
『ほぉ~う……』
判断しかねる返事にすごく微妙なリアクションになってしまった。この時、僕は改めてコイツは言葉足らずだなと確信を得た。気を取り直して会話を続けた。
『どれぐらい耳がいいんだ?』
『そこに見える女子生徒の会話を聞き取ることができます!』
『へ~すごいじゃないか、カゲロウ! めちゃくちゃ使える特技だよ!』
『あ!? すみません間違えました! 聞き取っていたのは向こうの女子生徒たちの会話のようです』
『は? 向こうってどこの?』
目の前にいる女子グループ以外の集団を探した。目の前の女子グループの前に男子生徒がいてその先にもう一つの女子グループを発見した! まさかと思いながらカゲロウに確認を取る。
『え!? 前の前にいるあのグループの会話が聞き取れるのか? 20㍍以上離れてるけど?』
『そのようですね! すみません。他人の会話を聞き取るということをあまりしたことがなかったもので距離感を掴めませんでした。そうですね。前の前にいるあの女子生徒たちの会話までなら聞き取れることができるようです!』
「すげ~~な!」と我を忘れ心の声が漏れてしまう!
すると前にいた女子生徒2人が僕の方を振り向いた。すぐに前を向きなおした。何か2人でこそこそと話している。
『「ひとりで急に声出してどうしたんだろ? ちょっとヤバいねw」と話し合っております』と頼んでもいないのに、早速カゲロウが声を聞き取り2人の会話の内容を僕に教えてくれた。しかも、少し声が高い……。女子の真似か?
『あ~大丈夫! それは聞き取らなくていいから! 大丈夫だから‼︎』
恥ずかしくなり、カゲロウの言葉を慌てて遮った。
少し間を置いてから心の中での会話を続けた。
『兎に角、カゲロウの耳がいいのはわかった。かなり使える能力だと思うよ!』
『勿体無いお言葉です! ありがとうございます、明様』
『カゲロウは学校へ行ったら出来るだけ広い範囲で『Good night』の噂をしている生徒を探してくれ!』
『承りました』
『よろしくな!』
カゲロウとの心の中での会話がちょうど終わった頃に学校へと到着した。
なんとしても突き止めてやる! 改めて気合いを入れ直し、学校内へと進む!
明の睡眠を取り戻すための作戦が始まろうとしていた……。
【続く】
読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。