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【ネタバレなし】『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』満足度がすごい!絶対観た方がいいので魅力をしつこく語る

ファンの熱量が高すぎるなー!!!
第一印象はこんな感じだった。

まるで「私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ」というお告げでも受けたかのごとく、量産されるゲ謎ファンアート。

絵師もファンも、みんなが水木と鬼太郎一家の幸せを強く願い、父と水木のかっこよさにどうにかなっている事がよくわかる。このとき作品を観ていないわたしですら、生活の質も健康も寿命も向上した。愛がすごい。

そもそも、新作映画の存在をニュースではなくファンアートから知るなんて、私にとっては異常事態だ。

ここ最近鬼太郎の「き」の字も検索したことすらない私のスマホにまで、おすすめ記事として毎日ファンアートを召喚するほどの熱量は、どこから来るのか。

異常事態の謎を探るべく、私はひとり映画館へと足を踏み入れた。


これは最高。ゲゲゲ仕立ての贅沢フルコース。


きれいに伏線回収してくれるし、こころが暖かくなる最高映画だった。
泣けはしなかったけど、全体がよくまとまっているから気持ちよかった。
ついつい原作の『鬼太郎の誕生』と『総員玉砕せよ!』を買ってすっかり読み終えてしまったよ。

陰鬱な因習村で起こる遺産相続がらみの連続殺人事件に始まり、丁寧かつパワフルに描写される父さん無双、東京に憧れる美少女と水木の恋の行方、勧善懲悪の爽快感、そして鬼太郎の生まれる未来につなぐ想い。バディものからしか得られない栄養素も豊富に摂取できる。PG12表現や人間の業の深さに感じるエグみも最高。

これらの要素ひとつだけでも旨いのに、それぞれのいちばん旨いところを提供された感じがわかりやすく贅沢で、フルコースのような満足感あるね!
妖怪の存在によって全体のバランスがうまく整えられているんだよなー!!みんな顔が良すぎるし、総じて美味!!!

細かく語りたーい


「血」をテーマにしたのが最高

とにかくティーザービジュアル最高。これだけでご飯が進む。
映画観終わってからあらためて見ると、ますますグッとくるなあ。

「血」という言葉からは、父子ひいてはご先祖様との繋がりや、命も連想する。これらも鬼太郎誕生に欠かせない要素で、いいテーマだなって思う。

水木が勤める血液銀行は普通に存在していたものなんだけど、今の時代からすると奇異に感じられて、それもまた魅力に思う。
そういった効果を狙って登場させたのかと思いきや、原作通り。やっぱ血液に銀行という単語が組み合わさるって なかなかインパクトあるし、水木先生もやばいと思ったからこそのチョイスだったりしないかなあ。

しかも原作では鬼太郎の母が■を■■■いたり、■■■の■を人間に■■すると■■■■になったり、まさかこれも原作通りだったのかと驚いたな。


時代の空気も最高。ずっとタバコ吸ってて最高。

時代は高度経済成長期の入り口。まだ物陰に暗闇が残っていたころだね。

ゲームだったら中盤に差し掛かってストーリーが広がる頃、順調に勝ち続けてきたけど今までのやり方では力が及ばなくなったので、ルールをあらためて頭に入れ直して色々な戦い方を試し始める頃かなあって解釈してる。工夫すればちゃんと勝てるから、一番やりがいあって楽しい時期なんだよね。だから、やめられなくて夜更かししちゃうんだけど。

そんな時代だからドーピングしてでも24時間戦おうとするんだろうなあ。
ドーピング血液製剤に「M」と名付けられた理由は明かされなかったけど、もうエナドリってことでいいか。

この時代の男性はガツガツしていて主語が日本なのが独特だなって思う。
やっぱり戦争の影響が大きいんだろう。常識がひっくり返るような経験をした人間は強いと、どこかで聞いた覚えがある。

それはいいとして、水木がタバコをばかすか吸うのが最高だった。初めて来た村にタバコポイ捨てして火を消そうともしないのも、時代の描写という意味ではいいなーって思う。

1950年にタバコが配給制ではなくなったので、みんなタガが外れたんだろうなあ…。1965年の男性喫煙率が80%超えなのもやばすぎる。そりゃあ電車の中こんなことになるよね。この健全じゃない空気が逆に旨い。

あと、ピースは高級品で高給取りが吸うイメージらしい。水木、たしかに稼いでそうな性格してるよなあ。営業だから見栄はったり取引先に渡したりすることを見越して背伸びしてるとしても、それはそれでおいしい。

それと、アフレコでは時代の空気を出すために当時の白黒映画のように話したと知って、それを踏まえて映画見直したいじゃないかー!ってなってる。


戦争の傷跡が重い

水木の回想でいちばん印象的なシーンが『総員玉砕せよ!』の引用だった。
権力を持った人間の醜さや図々しさはバイエンでも、哭倉村でも一緒だな。

これを読むと映画の回想シーンがいかにマイルドだったかわかるので、「(水木も、水木しげるも)ここから戻ってきたのか……」しか言えなくなる。水木の解像度もあがるので、ぜひ読んでほしい。

やっぱ水木しげるは戦争と切り離せないと強く思った。
というか、今も戦争は起こっているのだからもっと関心持たなければなあ、とも思っている。


バディもの最高。

水木と鬼太郎の父の間に生まれる絆と友情が尊すぎる。
バディものの醍醐味は相棒と呼ぶタイミングだと思っているけど、鬼太郎誕生は「ちょうど求めてたから助かる!!」って言いたくなるほどタイミング最高だったな。

本当に『鬼太郎誕生』、全てにおいて求めているタイミングで求めているものが提供されるからストレスフリーで楽しめるのが助かる。好き。

このふたり、性格の根っこは似ているんだけど育った環境が違う。人間界でしたたかに生きる水木と妖怪として素朴にのんびり生きる父さんのやり取りに文化の違いを感じて面白かったな。

他には、単体では肉体が脆い水木とフィジカル最強父さんなのに、種族としては栄える人間と滅びゆく幽霊族となり、優劣が逆転するところも切ないけど魅力的。

水木が妖怪や幽霊族の存在を認めた頃に訪れる酒盛りシーンも最高だよねえ。墓場で人間と妖怪が仲良くするっていうのが鬼太郎シリーズらしさあるし、そこで交わされるやり取りも最高。すっかり慣れた水木が「ああ、釣瓶火か」って平然とタバコの火まで貰ってる姿も最高にかわいい。

この頃から映画の雰囲気も少しずつ変わり、画面に妖怪が現れだす。
小さい頃に見た実写の『のんのんばあとオレ』みたいに(相当うろ覚えだけど)、現実世界のあちこちに妖怪が居ることがわかってくるというか。

この、水木の見ている世界に合わせて映像が変化するっていう演出が巧いなあって思った。相棒の影響を知らずに受ける、これもバディものの醍醐味。

そういえば「鬼太郎の父たち 絆篇」の予告映像が公開されたけど、その前に映画見ててよかったなー。あれは村から戻った人達へのご褒美だと思う。


目玉がいい仕事する

ここは苦手な方もいるのであっさり書くけど、ゴア表現が思っていたよりしっかりしててワクワクしたぞ。
父さんリスペクトもあるのか、なんやかや目玉がいい仕事をしていました!

時麿は、はいはいはいはいわかります、こういう所から攻めたいよね、だし
丙江は、あーいいよね、こういうやつ欲しいよね!だったし
乙米は、ただただ最高。手を叩きたくなる本場のやつだった。
総じて好き。


本当はキャラクターも語りたいけど、ネタバレになるし文字数的にしんどいので一旦ここまで。感想書いてたらまた観たくなってしまったなー。


見出しは『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』公式サイトからお借りしました。


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