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実践から観る、パーパスの本質

この記事は、Spotifyで配信の音声コンテンツ(長谷川博章 組織づくりラボ『パーパス経営の本質と実践』)の内容をもとに執筆しています。
ぜひ音声でもお聴きいただければ幸いです。
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第2回】パーパス経営の本質と実践(前編)
【第3回】パーパス経営の本質と実践(後編)

こんにちは。RELATIONS代表の長谷川です。

RELATIONSではパーパスドリブンな経営を探求していますが、あらためて私にとってパーパスとはなにか?と問われれば、それは組織の内側の一番奥深くにあるものであり、組織が存在する理由そのものです、と答えます。
そして、その一番奥にある源泉は、単純に言葉にできるものではなく、自然と組織を突き動かす衝動のようなものだと考えています。存在する理由を自ずと満たすために、自然に衝動が沸き起こり、それが行動へとつながっていく。こういったサイクルを何度も繰り返し経験していくこと。そして、次第に社会から必要とされるものへ育っていく過程そのものが、パーパスを大切にしている経営ではないでしょうか。

しかし私自身、最初から衝動を素直に感じ取ったり、組織のパーパスを表現できている訳ではありませんでした。経営者としての苦い経験から、現在自社で実践しているパーパス経営の話まで、具体的な事例を交えながら綴っていきます。

1. 「パーパス探求」実践のきっかけは、「べき論」経営で得た気付きだった

2009年にRELATIONSを創業して以来、私の頭の中はいつも”べき論”で支配されていました。(衝動に素直になった今だからこそ、過去の自分を客観的に見てそう感じます。)

「売上をもっと上げなくてはいけない。」
「社員の雇用を守らなければならない。」
「ここは経営者として、俺が頑張らないといけない。」
「お客さんへの価値をさらに提供しなければならない。」
「従業員に、”この会社のメンバーで良かった”と思ってほしい。」

未熟な自分を克服するという目的で、MBAの本を読んでみたり、偉大な経営者の本を読んだり、セミナーに参加して意思決定方法について学んだりしていました。必死に学ぶうちに、自分の中に理想とされるであろう経営者像を作り上げ、それに倣うように行動していました。主要事業の収益も右肩上がりで、それを原資として新規事業へ次から次へと投資していました。「よし、これで良いんだ」と、表面上はそう思って進んでいましたね。

でもあるときから、目には見えない形で少しずつズレが生じていたのだと思います。

私自身が衝動と向き合う一番大きなきっかけになったのは、2019年頃に創業時からいたメンバーとの対立が発生したときでした。幸いなことに私の周りにはともに歩んできた創業メンバーたちがいて、彼らが組織の中核となりRELATIONSを本気でより良くしたいと考えてくれていました。

本気で考えているからこそ、

「なんか今のRELATIONSって中途半端だよね。」
「長谷川さんが何を考えているか分からない。」
「長谷川さんが本当にやりたいことが出来ていないのでは?」

と組織のあり方に不和を感じ始めていたようです。

その時にメンバーと本音をぶつけ合う場を何度も設け、私は彼らから本気のフィードバックをもらいました。「長谷川さん、それじゃあ経営者失格じゃないですか?」という言葉もありました。当時の自分にとって、その言葉は本当に痛かったです。

表面上は事業に成功しているし、経営は上手くいっているように見える。なのにその違和感は果たしてどこから出てきたのか?原因は何なのか?
一体何が正しいのか、自分自身でもわからない状態に陥りました。コーチング、システムコーチング、マインドフルネス、プロセスワーク、成人発達理論、学習する組織、U理論、SECIモデルなどなど、自分の内面探求に時間を投資していくようになりました。

そうして、一歩ずつ歩んでいくとその原因が、”私自身が衝動に蓋をしていること”であったのだと、やっと向き合え始めたのです。

【ミニコラム】 私の考える”衝動”とは・・・
「衝動に駆られる」という表現にあるように、抑えることができない、突き動かされる欲求で、いわば湧き出てくるピュアな源泉のようなものだと認識しています。俯瞰して企業を見たとき「自社のパーパスはこうあるべきだな」と”考える”ものではなく、むしろ、”そこにすでに存在し、湧き上がってくるもの”だと思います。
衝動を”感じる”という部分をもう少し掘り下げていくと、それを見ると言葉にはできないんだけど、なぜか関わりたくて仕方がなくなってしまったり、身体が勝手に反応するような状態を言います。つまり、衝動というのは人工的につくれるものでもなければ、つくられるものでもない。いろんな実践や経験を通じて、ふと気がつくと、自然とそこにあるものというような感覚が適切なように感じます。恋愛とも近い感覚で、好きになろうとしてもできないし、好きにさせようとしてもできない。自然とそこに芽生えるものなんだと思っています。

その時期の私は、コンサルティングサービスを顧客に提供していくなかで、「さらに踏み込んで組織課題解決に踏み込む事業を展開したい。そこに対しての投資比重を大きくしたい」という思いが徐々に強くなっていました。

一方で会社全体ではSaaS、メディア事業などもあり、コンサルとSaaSの両軸を統合した方向性へと舵を切っていく流れになっていたため、「みんなが良ければそれでいこう」と自分の衝動の蓋を開けてきちんと対話することさえも無意識的に避けるようになりました。

また、心のどこかで衝動に気が付きながらも蓋をし続けた理由の一つとして、経営者としての不安や恐れもあったのは事実です。

「衝動に従うことで、これまでの会社の方向性を大きく変えてしまうかもしれない」
「やりたい事業を遂行することで、会社全体の売上を下げるかもしれない」
「社員の雇用を守れなくなるかもしれない」

心の中で、こういった声がドッと押し寄せてくる感覚がありました。

けれども、上辺だけの戦略と、奥底から湧き出る衝動に差異がある状態では、いつか整合性が取れなくなり、ほころびが出てくるものなのですね。衝動から逃げれば逃げるほど、「お前がほんまにやりたいことは違うやろ?」と自分の内側から迫るように語りかけられるような体験もありました。衝動はある日突然降ってきたものではなく、根源から湧き出た思いが少しつづ積もりながら大きくなっていった感覚があります。

衝動に素直になって、パーパスドリブンな経営を実践していこうと決めたきっかけはこの頃でした。

2.自分の奥底にある願いは、人生を充実して過ごせる人が一人でも増えること

ギャラップ社の調査で、日本で情熱的に働いている人はわずか5%という調査がありますが、それに対して私は憤りに近いザワザワしたものを感じるんです。本来輝くべき人たちの生命が浪費されている感覚です。

こういった結果の要因として、組織の本当の声(衝動)がパーパスとして表現されていないまま歩んでいることがあるのではないかと考えます。
職業柄、さまざまな企業の経営者の方と出会い、企業理念を伺うことがあるのですが、”掲げられている言葉”と”企業の心からの思い”が一致している場合は、スッと言葉が私の心にも入ってきます。

反対に、”掲げられている言葉”と”組織から聞こえてくる声”の間に違和感をおぼえる瞬間も多くあります。その2つが一致しておらず、言葉に人が振り回されているという感覚です。こういう場面に出くわせると自分の支援したいという衝動がむくっと立ち上がったりします。(笑)

・パーパスが組織の衝動や思いを鮮明に表現できていること。
・それに基づいたパーパスドリブンな経営を実践すること。
・そしてそのような企業が社会に増えていくこと。

これらは私が願う世界観に非常に近しいものです。過去に私自身が衝動を抑え込んでいた苦い経験があるからこそ、根幹にある衝動を大切にしてほしいという強い願いがあるのかもしれません。

しかし、あらゆる企業の経営者に対して「ご自身の衝動の蓋を開けてみましょう!」と推奨したい訳ではありません。衝動に蓋をしたままでも、上手く回っている会社はもちろんあります。それはそれでいいと思っているんです。ただ、私の実体験として、衝動に素直になれた前と後では素晴らしい変化を感じました。根源からの衝動を基準に行動することで、心身ともに軽やかになりましたし、ストレスがなくなりました。同じように苦悩を抱えている企業や経営者の方がいれば、それを共有したい・サポートしたいという強い想いがあります。一度きりの人生なので、情熱をもったり、人生を味わう人が増えてほしい。純粋にそのほうが良いよね、という思いです。

組織とは人の集合体です。会社に属する一人ひとりが魂(心)の声にしたがって行動につなげていれば、自然と生き生きとした組織になっていくのではないかと考えています。

もちろん、それが直接収益には繋がらないこともあると思いますが、それでもやっぱり心が充実している世界観というのが幸福とも繋がっていると思いますし、何よりもまず優先すべきことなはず、と自分のなかで仮説を立てて、自社でチャレンジしている状態です。

3.RELATIONSでのパーパス探求プロセスの一例

RELATIONSでは現在、「ええ会社をつくる」というパーパスの言葉から新しい言葉へ変更しようという動きが生まれています。背景としては、RELATIONSの様々な活動や自分や組織に対する内省を深めていく中で、

「”魂(心)の声”をエネルギーにして働く人が多くいる世界に自分は行きたいし、その衝動には素直でいたい。」

という声が強くなってきたことです。その想いが自身のなかで成熟してきたタイミングで、パーパスの言葉の再検討とブランディングプロジェクトをスタートさせました。そこから紡ぎ出された言葉は、

「会社に生命力を」

というものです。まだ仮案として位置づけていますが、まさに根源にある存在意義を言葉にしたものになったと感じています。

鮮明なイメージをパーパスという言葉で表現できているかどうか?また、そのパーパスを聞いてワクワクできるか?これは組織の存在意義を社員が感じ、全社で推進していくためにも非常に重要です。”たかが言葉、されど言葉”です。

「ええ会社をつくる」というこれまでのパーパスは、私にとっても、RELATIONSメンバーにとっても、そして顧客にとっても、馴染み深く浸透したワードになっています。思い入れも深い言葉です。

なぜそのパーパスを見直そうと思ったのか?という疑問の声は社内メンバーからも多かったように思います。

実際のところ、パーパス変更プロジェクトのイニシアチブをとる私としては、こういう思いが生まれていたのです。

●「ええ会社をつくる」というパーパスは、RELATIONSという組織の言霊を表現しており、しっくりときていた。これからも大事にしたい言葉であることは間違いない。
●しかし今のRELATIONSでは、今後のフォーカスが絞り込まれて行っている状態であることも事実。コストの最適化から組織づくりへつなげていく事例が少しずつ生まれていて、”生命体としてのエネルギー”が組織そのものへ
宿るような支援をしていくことが重要だと感じている。
●これまでのパーパスではフォーカスが広く、視点が分散すると感じている。これからREが向かっていく先を鮮明に表現するには「会社に生命力を」というワードのほうが適している。

そんな中、仮案が出来上がった段階で一度、社内メンバーからの意見を聞きたいと思い、全社会議に企画を持ち込みました。パーパスプロジェクトのこれまでのプロセスを振り返り、現時点でのパーパス候補について、全社員一人ひとりから反応をもらう場を設けたのです。

極力みんなで合意形成をしていく場にしていきたいけれど、それに賛同しない声が出てきてももちろん良いと思っていました。また、”全員が全員の声を聞く”ことで新たなものが生まれるとも思っていました。

実際に社内からはこんな声がありました。(ほんの一部の声を抜粋します。)

●「ええ会社」はイメージしやすいが、「生命力」と聞いてもどんなものがイメージが湧かない。
●フォーカスがされすぎている印象、まだ違和感を感じている。
●「会社に生命力を」という言葉はこれから進む方向性をうまく表現できていると感じる。
●自分は、パーパスの言葉にはあまり関心がない。顧客へ向き合って、価値を届けていきたい。

これはとても貴重な場になりました。社内の本音が聞けたことで、私も新たな刺激を受けましたし、そこから発見したことや、確信できたこともありました。あらためて「会社に生命力を」という言葉が、以前よりクリアなイメージで描けるようになっている気がします。

今もパーパスの最終確定に向けて、流動的に動いている最中です。果たしてどんなパーパスに着地するのか、私自身も楽しみながら模索しつづけます。

4.”集合知の活用”がパーパス共鳴度を高めるカギ

2022年7月に刷新した全社戦略(優先事項)の一つに、こんな文言を入れました。

個人の力でやる切るだけではなく、集合知にも目を向けよう。そして、更なる可能性の扉を開いていこう。

というのも、最近よく感じることのひとつに、”認知の限界”があります。
とくに自分ひとりでの認知には限界があります。たとえば、各社選任のコンサルタントであっても顧客の細かいところは見えていない面があるということ。とくに他のコンサルタントが担当しているクライアントにおいては、その関係の中で行われているコミュニケーションや、現場で実施しているアクションが見えていない部分も多くあります。

逆に捉えれば、組織だからこそ、集合知になったときには底知れないパワーと可能性があるということも言えると思うのです。

前章で書いた全社会議もその一例です。

各メンバーが案件を複数抱えながら全国動き回っているなかで、全員の日程を調整し、パーパスの捉え方を意見交換し合う時間をつくるのは、決して簡単なことではありません。コストもかかります。
それでも全員で認知していく幅を広げていきながら、パーパスとしてどんな言葉が適しているのか、その場で浮かび上がる表現を作っていくことに意味があると思ったのです。

理由としては、”組織全体で”パーパスを探求していくそのプロセスを繰り返すことで、パーパスが組織に自然と宿っていくと思っているからです。
また、パーパスというものの解像度には、組織によっても個人によっても、かなり浅深があるものだな、と実感しているからでもあります。パーパスの探求をすればするほど感じます。そのためにも皆から声出してもらい、そしてそれらを聴くという機会はすごく重要です。

それぞれのメンバーが自由な選択権を持った上で、パーパスに対してのピュアな考えを発言することは、その人自身の自己理解にもつながります。また、他者の多面的な意見を聞くことで共感が生まれたり、内省を促進したりする効果もあり、各個人のパーパス探求にも深くつながっていきます。

受け取る側も発信する側も大変なプロセスではありますが、RELATIONSらしいプロセスであるとも感じます。

そういったプロセスを経て、組織のパーパスと個人のパーパスの重なる部分が少しでも増えていき、共鳴度が高まることを大切にしていきたいですね。

5.組織の成熟度に連動して柔軟に変化する、経営者としての役割

組織のイニシアチブをとりながら、パーパスの解像度を上げていくことが経営者としての私の役割だと考えていますし、自分が大切にしたい衝動でもあります。メンバーたちと対話を重ねながら、たとえそこに軋轢が発生したとしても、全体へ問いを投げかけつづけることが大切だと思っています。自分の希望を押し通したいという感覚よりも、対話することで深めていきたいというほうが心からの願いですね。

RELATIONSはこれからも徐々に成長し、成熟していくでしょう。ホラクラシーという仕組みもより洗練されていくと思いますし、今後は株(会社の所有権)も従業員に分散し、”従業員が株主になっていく”という世界観も少しずつ体現していく予定です。

会社の成熟度が高まっていくプロセスと、経営者としての私の関わり方はつねに連動していると考えています。

自分もRELATIONSに愛着はありますし、より良い状態にしていきたいという思いはあるので、会社の軸となる部分はちゃんと握りたいものの、なにかを前に進めるときに、自分がストッパーの存在にはなりたくないんです。そこに可能性があるのに、自分の思いだけで止めてしまうということがないよう、執着は手放したいなと思います。その分、自分が関わることでポテンシャルが発揮されたり、新しい可能性がうまれる部分には本気で関わっていきたいです。

しかし、ここでもやはり自分ひとりの認知では限界があると思うので、社内メンバーやクライアントなど、周囲からのフィードバックをつねに受け取りながら、素直に、流動的に、自分のやりたいことを選択するよう意識したいです。
3ヶ月に1回のペースなどで自身に問いかけていきたいですね。

今日はこんなところで。
ええ一日にしていきましょう。


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