経営者が変化を恐れる組織は崩壊する。アンラーニングによって私が得たもの
私たちは、想像以上に大きく変化する時代の中で生きています。
例えば、iPhoneは発売されてからまだ13年です。その間にガラケーからスマホへシフトしました。QR決済市場も2018年から盛り上がっていますが、驚くスピードで再編が進んでいます。
下記図は、サービスローンチから5000万ユーザー獲得までのスピードを示したものですが、サービスが浸透していく速度が格段に上がってきおります。特にインターネット関連領域のスピードは皆さんの知る通りです。
この変化が、企業の優位性を土台から崩壊させるきっかけにもなり得ます。変化が速いからこそ、組織は硬直的ではなく「柔軟」かつ「しなやか」にしていくべきだという議論は各方面で起こっています。
更に企業というレイヤーだけではなく、個人、家族、市場、社会、政治、国などのレイヤーでも起こっており、共通して「変化適応」がキーワードになっています。
企業名は出しませんが、最近のニュースでも時代に適合できなかった経営者に関するニュースは枚挙に暇がありません。その多くが昔の価値観やパラダイムで物事を見ており、時代に適さなくなっていることから派生している問題だと思います。
では、経営者はどのように変化に適応していくべきなのでしょうか。私は、その答えが「アンラーニング」にあると考えています。
「アンラーニング」の意味は、「いったん学んだ知識や既存の価値観を批判的思考によって意識的に棄て去り、新たに学び直すこと」です。
「アンラーニング」されるものは、スキルも含まれますが、ここでは価値観やパラダイムに焦点を当てていきたいと思います。私自身がアンラーニングしてきたことや具体的にどのようにやってきたのかをお伝えできたらと思います。
アンラーニングが経営者にとってなぜ重要か
経営者は実は一番「アンラーニング」をしずらい立場にあると実体験も交えてそう思います。それは3つの理由からです。
1. 耳の痛いフィードバック・情報が届きづらい
組織構造上のトップに位置づけられており、フィードバックが忖度される傾向があります。よほどソフト面で心理的安全性を高めない限り解消しづらい問題です。
ある企業の経営者と数名の従業員と懇親会をしました。経営陣に対する賞賛の声も多く明るい話で盛大に盛り上がりました。そして、経営者は1次会で帰り、残ったメンバーで2軒目に行きました。
そこからは場が変わったようにいろんな本音が聞こえてきました。先程とは打って変わって、経営陣への批判や現場の厳しい状況などあらゆる課題が噴出していました。1次会と2次会での差分に驚きでした。その会社ではあるあるの話だそうです。
経営トップとの距離感は想像以上に大きく、耳の痛いフィードバック・情報が入りづらい会社はたくさん存在すると思います。
2. 外部ステークホルダーからの過度な賞賛
事業成長を少しでもし始める段階に差し掛かると外部の方々からの見る目が変わります。本来は組織そのものによる力なのですが、外部から見ると経営者にどうしても注目します。それにより起こるのが、過度なお世辞や賞賛が増えることです。
例えば、私のケースでは、創業最初はリースも通らず、お金周りはすごく苦労していました。しかし、2年目に利益が出始めて、金融機関に訪問し、決算報告をしました。
これまで会ったことがない支店長が急に来社され、経営をべた褒めされ、資金ニーズがあればお金を借りてほしいと。全く見向きもされていなかったので、青天の霹靂でした。
業績が向上すると営業対象として見られやすくなるので、あらゆる領域でこのような出来事が起こります。
3. 認知バイアスによる自己評価のずれ
1、2のように組織内、外部環境からの正しい情報が通知されないことにより、自分自身への評価が思い込みに左右されやすくなります。
私自身も本来の実力以上に自己評価をしている時期がありました。今考えると恐ろしいことです。
こういった現象は、「ダニング=クルーガー効果」や「平均以上効果」など認知バイアスの領域における研究でも証明されています。
皆さんにも何かしら思い当たる節があるのではないでしょうか。もちろん、厳しい事実を通知してくれる人もいるのでそういった方々を大事にすべきというのは言うまでもありません。
アンラーニングを促進するためやったこと
では、ここからは具体的に私がこれまで実際にやったことをご紹介したいと思います。アンラーニングを目的として実施したものばかりではなく、結果として効果があったものも取り上げております。
2017年頃は何を言っても自分の考えが理解してもらえず、裏切られたと思う出来事が何度もあり、一時期は誰も信用できないくらいまでに陥っていました。
このままの価値観・パラダイムではいけないと思うようになりました。そこから少しずつアンラーニングをしながら自己変容していく取り組みをしていきます。私自身が実際にやって効果的だったものを以下に抜粋します。
「アンラーニング」に効果的だったこと
1. 組織のミッションの再定義
2. 360度フィードバック
3. 免疫マップ
4. マインドフルネス
5. 1週間の長期研修旅行(ニューヨーク)
6. 月10冊(年間120冊)の読書
1. 組織のミッションの再定義
アンラーニングを進めていく中で一番外せないこと何だったかと問われると、真っ先に出てくるのが、全メンバーを巻き込んだミッションの再定義です。
ブレない軸を明確にすることがその後の「アンラーニング」をすごくスムーズにしてくれました。血の通った組織の目的がなければ、アンラーニングの過程で色々な物事に流されることになります。
弊社では、私自身が音頭を取り、全メンバーで「なぜここにいるのか?(Why we are here)」をブレーンストーミングしながら「ええ会社をつくる」というミッションを再定義しました。
この過程を通じて組織の目的と私個人の目的も強く結び付けられたと思います。
2. 360度フィードバック
360度フィードバックは、「組織内から見える自分」を正しく把握するためにすごく重要なものです。
弊社の場合は、比較的フラットな関係性を構築できていたので、耳の痛いフィードバックが作用しやすい環境下にありました。環境が整っていない場合は、株主などの信頼できる第三者を介して情報収集するのも一つの方法かと思います。
私のケースだと2017年頃から360度フィードバックゆるく始めておりましたが、2018年に組織課題が顕在化し、自分を変えたいという思いから本格的に範囲を広げてフィードバックをもらうようにしました。
↓実際の呼びかけのSlackメッセージ
まずは自分の課題に気づくきっかけになる実際の360度フィードバックを晒します。
このフィードバックから理解できることは、私自身が関係性を配慮するあまりに組織とって本質的な意思決定を先送りする傾向があることです。
2017年頃は私自身の課題も起因し、組織的な部分最適を生み出してしまっていました。実際に離職率も30%近くまで上昇しておりました。
実は、仕事だけではなく、家族、友人、クライアントとの関係においても同じような課題が出てきており、自分もすごく苦しんでいました。
このフィードバックをきっかけに本格的に自己認識でき、立て直していくきっかけになったことは自分にとってすごく大きかったなと思います。
3. 免疫マップ
360度フィードバックを受けていくと自分の変えていくべき行動や価値観が次第に明確になってきます。次の段階ではそれを自分の中でより深く向き合っていく段階に入ります。
その際にロバート・キーガンのなぜ人と組織は変われないのかという本で紹介されている免疫マップがその当時の私にとってすごく役に立ちました。
まず前提として、人は色々なコンプレックスを抱えて生きていきます。
私自身も信頼できるメンバーと楽しく経営をしたいという想いが強くあり、それ故に衝突を避ける傾向が自然と芽生えていました。
そういったコンプレックスの積み重ねが自分の価値観をエゴへと縛り付けていました。その結果として組織的な問題へと影響が及んでいったように思います。
コンプレックスの根源を特定していくツールが免疫マップです。
詳細の活用方法は本に譲りますが、実際に私が当時作った免疫マップを晒してみます↓↓
創業以来私は仲間を大事にすることを重要視してきました。それが自分の性格ともマッチし、いい仲間も集まりRELATIONSはこれまで成長してきました。
しかし、2017年頃は、その成功体験に強く囚われていました。例えば、衝突が起きるようなイシューに関しては過度にバランスを取った意思決定をしたり、決定自体を避けたりしていました。
この免疫マップから分かるのは、その根底にあるのは、「嫌われたくない」「人間関係の破綻を避ける」という個人の価値観・パラダイムです。
組織が本来すべき全体最適な意思決定と自分の大事にしたい価値観が衝突するようになり、次第に組織課題が噴出していったという構図です。
面白いのが、自分として大事にしたい価値観を守ろうとすればするほど、自分が生み出したい組織とかけ離れていくという現実です。
私で言えば、本当に一緒に働きたかったメンバーが結果として離れていくことになったり、大事な意思決定を避けることで本来一番大事にすべきメンバーからの信頼を失うことにつながったことです。
免疫マップはそれらを少しでも自己理解できるいいツールだと思います。
4. マインドフルネス
マインドフルネスに出会ったのは、2017年です。Search Inside Yourself(SIY)という本にたまたま出会ったことがきっかけです。
SIYは、Googleが社内向けに開発したマインドフルネスと脳科学を組み合わせた能力開発プログラムのことです。日本ではMiLIが展開しており、それを受講しました。
マインドフルネスは「いまこの瞬間に意識を向ける」という意味合いです。
呼吸に意識を向けて「いま」に意識を高めていく、そして周囲のことをありのまま受け取っていきます。
MiLIの代表の荻野さんは、「マインドフルネスは気づき、認識の技術だ」と言っており、まさに認知バイアスを弱めて、メタ認知を高めていくスキル獲得に繋がります。
私自身は、受講以降マインドフルネスを毎朝15分〜30分程度、週に2〜3回はマインドフルネス・ランニングを1時間実践してきています。
少しずつ周囲への視野が広がり、いまを受け取れてきているように思います。免疫マップとセットでやるとより効果的でおすすめです。
5. 1週間のニューヨークの研修旅行
番外編的な位置づけのように見えますが、私にとってこの旅行はすごく意義がありました。
旅行そのものよりは、日常から一定期間距離を置くことが自己を再形成する上では重要な時間だと今になっても思うからです。
知り合いの経営者からお誘いを受けて2018年6月にニューヨークの企業視察に行くことになりました。
NYCのスタートアップ企業の視察や文化・トレンドを学習する機会でした。WARBY PARKERのD2CやAmazonとホールフーズの取り組み、ヘルスケアテック、ベニハナという鉄板焼を成功されたロッキー青木さんのご自宅にお伺いさせていただいたり、1週間実務とはまったくかけ離れ、さまざまな企業を視察しました。
日常の生活圏を離れ、違う世界へ身を置くことにより普段とは違う自分が発見できました。自分の本当の想いなどにも向き合えたり、客観的に自分を見つめることができたいい時間でした。
ホテルがセントラルパーク付近だったので、毎朝マインドフルネスランニングをし、自分が今後どのように歩みたいのかも腹落ちさせることができたと思います。
私の場合は、こういった研修旅行の機会がなければ強制的に日常から距離を置くという選択はしなかったのではないかと思います。
経験してみて感じるのは、アンラーニングをより効果的にしていくために日常と離れて一定期間過ごすことは予想以上に効果があるということです。是非試してみてください。
6. 月10冊(年間120冊)の読書
2018年頃から習慣を変えたことの1つが、読書量を3倍に増やしたことです。
当時、自分の経験だけで意思決定をする機会も多く、その説明も感覚論で話してしまっていることに自分自身でも限界を感じていました。
当時の読書は、自分の足りないスキルや領域を補完する目的で読書をしていました。短期的な視点で読書と向き合っていたように思います。
短期的な読書だけではなく、より長期的な軸足を獲得するために哲学や歴史などの教養を自分に落とし込むこと、また、同時に自分が突き進みたい方向である「人・チーム・組織の探求」を読書を通じて深くやっていこうと決断しました。
今では、マネジメント、認知・社会心理学、哲学、生物学、神経科学、HR領域全般を網羅的にインプットしています。
読書を通じて優秀な方々の考えをトレースすることで、知識も蓄えられると同時に、自分というものがいかに未熟であり、小さきものであるかが理解できます。こういった感覚がアンラーニングに直結するように感じています。
▼「アンラーニングイベントの開催」
noteでは色々と書ききれないことも多く、イベントを開催し、この辺りをより詳しくお話をできればと思います。
イベントには、yahooでマインドフルネスをのべ1200人に提供してこられた中村さん、medibaのCXO岡さんをお呼びして、さまざまな角度からアンラーニングについて深堀りできればと思います。
▼イベント
お申込みはこちらから
変化が激しい時代の必須スキル「アンラーニング」。経営・マネジメント層が学びを解きほぐす方法を余すことなく公開
日時:2020年3月12日(木)19:00〜21:00
場所:東京都港区北青山2丁目9−5 STADIUM PLACE AOYAMA 5F
アンラーニングを促進するために大事にすべきこと
常に今の現実を正しく直視し、自己認識を高め続けていくことが、アンラーニングにおいてはすごく大事な要素だと思います。
そのためには、自分の軸足をしっかりと定めていくことから始め、「周囲から見える自分」を正しく把握すること。
そして、「本来の自分」に真正面から向き合うこと。それらを客観的に正しく見つめるための「メタ認知」スキルを高めることが重要です。
インサイトという本では、自己認識を「自分自身と、他人からどう見られているかを理解しようとする意志とスキルのこと」と定義しています。
つまり、意志とスキルを磨き続ければ、自己認識を高めていけるということになります。この本もすごく学びになるので、おすすめです。
時代の変化は誰にもコントロールできませんが、「アンラーニング」をうまく活用しながら、多くの人が楽しくこの波を乗りこなしていけるといいなと思います。
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