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【対談】アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)から学ぶ、組織成長を促す秘訣

こんにちは。RELATIONS代表の長谷川です。

今回は、未来型読書法アクティブ・ブック・ダイアローグ®(以下ABD)について、ABD協会認定のファシリテーターである長谷部 可奈さん(以下可奈さん)と、弊社広報・廣瀬と3人で対談した際の内容を記事にしました。

先日、RELATIONS社内の有志20名ほどで計3回に渡り実施したABD。石井 光太郎さん著の『会社という迷宮』を題材に、可奈さんにファシリテーターをしていただきながら進めました。

社内メンバーたちと1冊の本を共有することで得られた組織としての体験や、そこから生まれた自律的な動きについて触れたいと思います。

チームとしての推進力を高めるため工夫を知りたい方や、組織成長につながる学びを模索されている経営層の方々へ、何かしらのヒントになれば幸いです。

1. 本を通じて相互理解も深まる読書法「ABD」

ABD認定ファシリテーター
長谷部 可奈さん

―― まずはABDについてあらためて教えていただけますか?
 
可奈さん: ABDはアクティブ・ブック・ダイアローグ®の略称なのですが、ダイアローグとは「対話」という意味です。1冊の本を複数人で分担して読み、各自から共有することに加え、参加者同士の対話を通して本の理解を深めていく新しい読書法です。アクティブ・ラーニングでも採用されている「ジグソー法」という協調学習の手法をベースに構成されています。

長谷川: 対話をするというプロセスが、輪読会との大きな違いなんですね。 

可奈さん: そうですね。本を通じて参加者の人柄が見えるというのがとにかく面白いんです。
他者の解釈を聴くことで、新しい視点や気付きを得られます。また、他者理解が深くなるという特徴もあります。企業でABDをする場合には、チームメンバー間の相互理解が深まるという利点がありますね。
さまざまな視点の解釈を自身のなかに取り込んで咀嚼するので、通勤時間に一人で読書しただけでは得られない味合い深さを感じられるのも魅力です。

2. ABDを企画したのは、「みんなでRELATIONSのこれからを見つめたかった」から

 ―― 今回、『会社という迷宮』を題材にABDを企画使用と思った長谷川さんの一番の想いはなんでしょうか?

 長谷川: もともと『会社という迷宮』という著書に、私自身とても感銘を受けていたんです。

この書籍は、経営者のうちに眠る想いや衝動を、どう経営に活かしていくのかということについて、石井さんの40年のコンサルティングの実践そのものから記されています。成長や拡大ではなく、経営者自身の内側に目を向けた上で、なにが大事かを表現していこうということを多角的に書いてくださっていて。真剣を鞘から抜いて、互いに向き合うような鋭い表現で、共感とともに経営の本質に立ち戻れる感覚がありました。
RELATIONSではここ半年ストラテジーについて対話する機会が多いこともあり、戦略や経営そのものについて、メンバーの関心も高まっているタイミングだったんです。
RELATIONSのこれからのことについて、この機会に本を通して仲間たちと触れることで、それぞれのメンバーからの自社の見え方や捉え方にも変化が出てくるのではないかと考えました。

廣瀬: 長谷川さんと企画して社内で参加者を公募したところ、新人からベテランまで計20名ほどの社員が手をあげて、関心度合いの高さがうかがえましたね。

3.参加者と著者の思想が混ざりあい、深い理解につながっていく

―― 全3回を通じて何を感じられましたか?

長谷川: 実は、1~2回目では「本の選択を間違えたかな?」「参加者を絞れば良かったのかな」という不安がよぎる瞬間が何回かありました。(笑)あまりにもメンバーそれぞれの経験値が違うので。本のメッセージを受け取れるメンバーと、そうでないメンバー。各自がいま置かれている状況によって、だいぶ受容できる範囲に差があるかもしれないな、と感じたんです。

 可奈さん: なるほど。たしかに参加者の反応はさまざまでしたね。とくに1回目では、深く頷いて聞いている方、圧倒されている方、なかには頭にクエスチョンマークが浮かんでいそうな方もいらっしゃいました。
通常、ABDの参加者要件や開催規模は、目的次第で決めるんです。1つの主軸でグッと共通理解を深めたい場合は、少人数のリーダー層で開催することも効果的です。
しかし、今回RELATIONSさんからの依頼は「本を通して組織としてRELATIONSのこれからを考えていきたい」ということだったので、多様性があっても良いなと考えていました。理解度に個人差はあっても、当事者意識を持ってそれぞれが自分なりに理解し、自分なりに自社の未来を考えることで、目的は達成できるなと。 

長谷川: たしかに、3回目の終わりには「このメンバーで実施できて本当に良かったな」という嬉しさと充足感がありました。 

Zoom対談の様子

廣瀬: ABDでは年次やバックグラウンドが異なる人たちで解釈が違っても、それはそれで良いという世界観なんですね。 

可奈さん: むしろそこがABDの良さでもありまして。
企業でのABDをひとつ例に出すと、エンジニアの方たちで技術書を題材にして行うことがよくあるのですが、若手からベテランまで本当に幅広い層が参加されるんです。そうすると、若手の理解が全く及ばない箇所について、「これは今やっている業務の、こういう部分に当てはまるんだよね」と、ベテラン社員が実務視点から解釈の補足をしてくれることがあって。
「あぁ、この本ではこういうことを言いたかったのか」と、ベテランの経験を聴いて追体験することで、上辺の理解だけではなく、腑に落ちるという場面が多くみられるんです。今回、RELATIONSさんのABDのなかでも、そういう効果があったのかなと感じています。 

廣瀬: 他人と自分の考えが混ぜ合わさって、深い理解につながるんですね。 

可奈さん: そうですね。ほかの参加者と自分の意見はもちろんのこと、著者と自分の意見が混ぜ合わさっていく感覚も大きいです。これまで言葉にできなかったもどかしい感情を、著者が代弁してくれていることも多々あります。そうすると、著者の言葉が自分の言葉として使えるという体験が起こるんですよね。表現や語彙の幅が気づいたら広がっている、というのもダイヤログだからこその面白さですね。 

長谷川: 「身体は知っている」という感覚はたしかにありますよね。経営に関しても「あー、私はこれを表現したかったんだよな」と、言葉にできず空虚になっていた部分が埋められていく感覚があります。

4.共通体験・共通理解を経て、イノベーションを生みだすチームへ

―― ABDを終えてから、社内での波及効果はありましたか?

長谷川: これまでとは違う物事の進め方をしようという自発的な動きがありました。先日、社内のコンサルタントチームで戦略会議をしたときに、ABDにも参加していた創業メンバーの一人が印象的な発言をしたんです。「他人から理解されることを俺たちが描いてどうするんだ?それって、ある種、陳腐化したものを再現しようとしているだけなんじゃないか?もっと自分たちの根源から生まれてくることを研ぎ澄ませたアクションを置けるんじゃないか?だから違いが生まれてくるのでは?」と。
『会社という迷宮』のなかの戦略パートでは、「戦略とは、深みを覗いた人間がそこに見出した何かに挑もうとする強靭な”意志”と”信念”の産物である」と表現されていて。理解されなくてもいい、理解されないことこそが戦略の本質なのである、という深い捉え方なんですが。そのパートがこの本で最も核心をついている箇所だな、という私自身の思いもあったので、彼の発言を聞いて、私としては「よっしゃ!」という気持ちになりました。(笑)

 廣瀬: あれは印象的なシーンでした。ABDに参加していたメンバーは「あ、あのことを言いたいんだ!」と彼の心情を理解できたのですが、参加していなかったメンバーは「なんでそんなことを急に発言しているの?」という反応になったんです。ABDのアハ体験でしたね。ABDに参加したメンバーたちには思想が共通理解になっていた。
結局その場では、そのメンバーは理路整然とは説明できなかったのですが、これまでとは違う次元のアクションを設定しようとしたあの空気感は私にも斬新に見えました。 

可奈さん: それはABDファシリテーターとしても嬉しい波及効果ですね!企業という単位だと、どうしても即効性のあることを求めたり、短時間で結論づけを急いだりする傾向がでるんです。
しかし、イノベーションと呼ばれるような0から1をつくには、右往左往しながらアイディアを何度も掛け合わせて、形が見えてくるまで長い時間をかけることも、本来は往々にしてありますよね。「もうちょっと喋ってみようぜ」と言いながら、繰り返し対話を重ねて、やっと目指す方向性の輪郭が見えてくるような。
本質的な企業成長に必要なプロセスを、ABDを通じてチームで体験できるというのは大きいかもしれませんね。

5. 外部視点があるからこそ気づく、自己の根源

全社合宿の様子

―― ABDでの学びを深める上で大切な要素とはなんでしょうか?

可奈さん: 大きな要素の1つとしては、外部の視点が入ることだと思います。自分のことを客観的に見ることが難しいように、組織でも自分たちの当たり前に自分たちで気づくのは結構難しいものなんです。
今回は私がファシリテーターとして参加させていただきましたが、RELATIONSのみなさんという「中の人」と、私という「外の人」という立場でやると、他者性が働いて、外から見るからこその気づきがあります。「ちょっとしたよそ行き感」は意外と大切な要素なんです。 

長谷川さん: とても大切な要素だと思います。RELATIONSも全社ミーティングに、顧客やパートナーなど外部の方を呼ぶことがありますが、それもまさに他者性ですね。よそ行きさがあると場全体をホールドしやすくなりますし、外部の方がいるからこその意見も出てくる。 そして、外からの声によって自分たちが何者かへの理解度が深まることも大きな効果です。

廣瀬: 昨年実施した弊社の全社合宿でのエピソードを思い出しました。
ワークのなかでRELATIONSの未来について話をしたとき、場が行き詰まった瞬間があって。そのとき、合宿に参加されていたある顧客の経営者の方が、弊社の存在について話してくれたんです。
「つねにRELATIONSは新しいことに挑戦していて、自分たちが良いと思ったものを提供しれくれる。それが強みだと思いますし、つねに進化するリレーションズさんだから、うちもずっと関係性を持たせてもらっているんですよ」と。その言葉をメンバーたちが聴いたとき、場が大きく動いてプラスのエネルギーが働いたんです。 
これも外部の方がいらっしゃったからこその効果ですね。

可奈さん: 素敵なお話ですね。ABDを通じて、さまざまな経営者の方たちと想いの交換をしていけたら、本当に価値のあることだと思います。

6. ABDの輪をひろげ、社外との共創関係を紡いでいきたい

ーー RELATIONSでは今後ABDをどう活用していきたいでしょうか?

廣瀬: すでにいくつかのABDプロジェクトが社内で立ち上がっているんですよね。『マエカワはなぜ「跳ぶ」のか』を題材に組織の進化について深めたいというプロジェクトや、子どもがいる社員を集めて『21世紀の教育 子どもの社会的能力とEQを伸ばす3つの焦点』のABDをしようという企画もあります。今後はホラクラシーの書籍でも開催してみたいですね。

可奈さん: それは嬉しいですね!ABD協会としては、ABDの読書法が草の根活動的に世に広まり、一人ひとりが自身の未来を考え、未来をつくる当事者として力強く歩んでいくことを望んでいます。
今後ABDをRELATIONSさんが主催される上で、2つのポイントを抑えていただくとより良い体験になるかと思います。
1つ目は、1人では読み進めにくい本を選定すること。学術的な専門書やレポート、技術書など、気が重くなってしまうような題材を敢えて選ぶことをオススメします。難易度の高い本だからこそ、複数人の解釈を聴くことで学びが深まります。
2つ目は、多様なメンバーを誘うこと。同質の仲間たちだけで読むと、共感して「楽しかったね!」だけで終わってしまいがちで。社内で企画をするにしても、違う部署の方たちが参加することで、異なる視点や外からの視点が混ざるので気づきが多くなります。外部の方に参加してもらうのも良いですね。

長谷川: 多様なメンバーという観点では、社内ミーティングや合宿に外部の方をお誘いしている感覚で、RELATIONS主催のABDに社外の方をお誘いするのも良いですね!
顧客の方にもRELATIONSを近くに感じていただける機会になりそうですし、お互いの思想を理解して、共創していく上でも意義のある取り組みになりそうです。
ぜひトライしてみたいと思います。

ありがとうございました!


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