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初投稿、挨拶

 創作活動、とりわけ小説と随筆のため僕はこのアカウントを作った。自己紹介などと題したものの、経歴や肩書をつらつらと並べ立てて歓心を買おうなどというつまらない事をするつもりは微塵もない。ただどういう心構えで投稿することに決めたのか等を気の赴くまま書いていこうと思う。
 自分の人生を顧みるに、物心ついて以来常に何らかの文字情報に心を動かされてきた。熱心な読書家とまでは言えないにしろ小説や漫画に様々のことを感じ、考えることを自我というものの血肉となしてきた。夕焼けに胸を焦がすのと同じように、それらに書かれた人間の心理に美しさを感じてきた。しかし同時に、これは宿命的なものかもしれないが――自分がそれらの単なる一消費者に過ぎない事へのフラストレーションは劣等感と呼べるまでに育ってしまっていた。
 今僕がこうして公開的に創作活動を行おうと思った理由の一つは、そういう『単なる消費者で終わりたくない』という単純なものである。しかし、これに勝るとも劣らない大きな理由がある。それは『自分の過去を受け入れるため』である。幼いころから他人との関わり方、延いては自分の見つめ方が致命的に下手だった僕は、青春の真只中に於いて厭人と自己嫌悪の渦に囚われ、何度も他人を、そして何より己を呪った。これまでの長くない人生の中で、間違いなく最も苦しい時期であった。少しの時間を経て些かましになった今でも、その名残は鎌首を擡げて僕を委縮させることがしばしばある。積年の呪縛というものはそう易々と解かれないことを学んだ僕は、人に凭れ掛からない方法でこれを克服しなければならず、同時に、おなじように孤独な人の心を少しでも和らげることが出来ればそれ以上喜ばしいことは無いと思った。

 純粋に、作り手として良い物語が書きたいということ。そして、自分の過去を超克するための小説を書きたいということ。それらは僕の心中で部分的に重なって存在している。勿論、どんなモチベーションを持って取り組もうとも、出来た作品が駄作であれば作り手としての価値は無いに等しい事は覚悟している。それに関して予防線のような前口上を長々と述べて置くつもりはなく、実際の作品で以て評価していただきたいと思っている。
 具体的にどのように活動するのか、例えば文章量や投稿頻度、長編の場合は連載にするのか等は未定であることはお許しいただきたい。文章量を決めてから書いたのでは僕が本当に書きたいものが書けるかどうかわからないし、妥協なしで書き上げようと思ったら頻繁に投稿するのは厳しいかもしれない。だが、やると決めた以上は能う限り多くの作品を公開できればと考えている。
 名だたる賞を取っている高名な作家ですらその評価は属人的、況や無名の新人の書く文章など大抵の人が歯牙にもかけないことは、他ならぬ読者としての僕の経験がそう語っている。もし、ほんの少しでも、そう喩えば退屈な田舎道からちらりと見えた海の煌めきのように、僕のこの文章があなたの胸に期待をもたらしたなら――或いは瞬く間に晴天を侵した雷雲のように、あなたの胸に重たい影を落としたのなら――是非僕の作品を読んでいただきたい。挑戦的に謂うならば、それはあなたの為に書かれたものだからである。


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