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児童福祉施設での専門職の「価値」について考えてみた。

※筆者は児童福祉施設の中でも障害児通所支援、とりわけ児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援に関わっているのでそこに焦点を当てた投稿になります。また、本投稿での専門職は専門的支援加算の対象職種、その中でも理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)に焦点を当てたものになります。

〇児発・放デイでの専門職の立ち位置は?

まず前提として、児童発達支援・放課後等デイサービスの利用料金はどう決まるのか考えてみましょう。

ざっくりいうと

指定されている人員を配置できているか?

加配の人員の資格は何か?

が基本になり、単位数が決まり、開所時間、定員、支援計画や記録の有無、人員の欠如などがマイナスの要素になります。

これらに各地域の地域区分をかけたものが利用料金になります。

では、これらの料金が決まる過程でPT・OT・STの名前が明記されているものはなんでしょうか?

加配加算に該当する「児童指導員等加配加算」と「専門的支援加算」になります。(※「特別支援加算」もありますが、今回はスルー)

その2つの加算は加配される職種によって単位数が変わりますが、PT・OT・STはどちらも187単位で一番高い加算が付けられる職種になっています。



〇2021年度児発・放デイでに増えたPT・OT・ST

正確な数字は2022年1月の時点ではわからないのですが、多分増えました。

僕の会社でもわざわざPTである僕に採用の仕事をする時間をとってまでPT・OT・STの採用を進めようとしましたし、転職エージェントさんからのセミナーや説明会の依頼も増えました。

あと肌感ですがTwitterにも児発や放デイで働くPT・OT・STを名乗るアカウントが増えた気がしています(自分が探していたかもというバイアスも込み)。

これは令和3年度の報酬改定で「児童指導員等加配加算Ⅱ」がなくなり、「専門的支援加算」が新設されたのも少なくとも、いやまあまあ影響されているでしょう。

「報酬のためだけに専門職を採用しても...」

というご批判も目にしましたが、報酬結構変わるし仕方ないっしょって感じですよね。

もちろん長期的にも何も考えなくてもいいよとは思いませんが。

むしろこれを機にまずは量を増やすことは重要であると思います。

まあなのでとりあえず増えた感じだと思います。(適当か...!)

〇児発・放デイでの立ち位置をもう一度確認

さて、復習です。

先ほどの利用料金が決まる中でPT・OT・STが関わるのはなんでしたか?

「児童指導員等加配加算」と「専門的支援加算」ですね。

これはどちらも「人員配置」について評価してもらえるものです。

ちなみに対象の資格の人が常勤換算(まあだいたい週5くらいで勤務している)で1名いればもらえます。

そう、「配置」つまり資格を持った人が事業所に「いる」ことが評価されているんです。

本質的でないことは百も承知で言いますが、「何をするか?どんな支援をするか?」ではなく、「資格を持った人がいる」ことが評価されるのです。

なんかこの書き方ムカつきますね...

〇児発・放デイの現状はある種ラッキー?

僕も専門職の端くれとして、「どんな支援をするかじゃない、いればいいんだ」なんか言われるとちょっとムカつきますよね。

僕はあまりプライドやこだわりがなかったのかちょっとで済んでいます。すみません。

ただ、冷静に見ると僕はこの状況はラッキーだと思っています。

だって、資格を持っているだけで注目されるんですよ?

小児リハの領域は求人が少ない、未経験者はなかなか入れないなどと言われる中でやれるフィールドがそこに広がっているんですよ?

下手したらというか確実に起こっていると思っているのですが、資格を持っているだけで採用基準が下がっている可能性だってありますよ?

母体が大きな企業とかに入ればこの採用を皮切りに自身のキャリアを作っていくこともできるかもしれません(企業によっては社内のジョブチェンジの方が可能性あるとかもありそう)。

〇「専門性を活かせない」発言は自分の首を絞める

僕は今年度恐らく100名を超えるPT・OT・STと面談や説明会などで話してきた。

求職者だけでなく、社内外どちらでも児童福祉領域に来たPT・OT・STと話してきた。

みんな悩んでいた。みんなっていうと良くないな。

多くの人が悩んでいた気がする。そして一部の人は妙に楽しんでいた。

楽しんでいた人は良い。本当に楽しく仕事が出来ることって素晴らしいから。マジで。

さて、悩んでいた人たちだ。

一番多かった気がするかつ僕が引っかかっている発言はこれだ。

「専門性が活かせない」

多分100回は聞いた。盛ったと思う。すみません。

これについての僕の意見は別の記事に書くことにする。

ざっくり書くとこれは「個の課題解決するための能力の不足」と「見通しの見えなさ」の2つになると思っている。

後者は組織の課題かつ個のパーソナリティも影響すると思うのでここでは触れない。

さあ前者だ。

これは何も「おまえの能力が足らねーんだよ」みたいなことを言いたいわけではない。

新卒や経験の少ない人だっているわけで、今はいわゆる「専門性」を育成できる体制ではないのかもしれないから。

そんな状況の中で「専門性を活かさなきゃ...」と思うとしんどい。首が締まるよそりゃと思う。

でももう1回思い出してほしい。今僕らは何を評価されているのか?

そう、資格だ。配置されていることだ。「いる」ことだ。

なので存在自体が価値になるのはラッキーなのだ。

そこが担保されるのでまずは焦らず、その場でやるべきこと、スキルアップするべきこと、実績を積み上げ信頼を勝ち取っておくことに注力できる。

今は勝負に出る準備をする時なのかもしれない。


〇児発・放デイでさらなる専門職の「価値」を作るために

恐らくここまで読んでくれた人の意見はこうじゃないだろうか?

「あなたの言いたいことはわかった。でも、僕らはPT・OT・STとして支援に携わりたいんだ」

違ったらすみません。

でもこれも何十回と言われたのでそういう人もいると思っている。

そして今更ながらここまで書いている全てが僕の視点、環境に依存していることを考慮いただきたい。

規模や設立の経緯、経営陣の顔ぶれ等々でいくらでも違うこともあると思うから。

さて、先ほどの意見に戻ろう。

ちなみに僕のスタンスを先に開示しておく。

「PT・OT・STとして働きたい」みたいなことは僕の中にはない。

ただ、「PT・OT・STが上手く絡んでいくことで児童発達支援や放課後等デイサービスでの支援ってもっとよくできるんじゃない?」と思っている。

そのために、PT・OT・STにも児童発達支援や放課後等デイサービスが自分たちの活躍の場所だと思ってもらい、キャリアの先を見ながら働ける場所にしたいとは思っている。

同じようなことを言っているかもだけど僕にとってはこの順番は譲れない。

では、「いる」ことだけにしか注目してもらえない世界線をどう終わらしていくか?

まずはなんと話を戻して「いる」状態をとにかく作ることだと思う。まず量である。当たり前に「いる」という状態。

そして、その中でまずはめっちゃ近くの一人でいいから価値を感じてもらうこと。

先ほどの話ではないがこれはまずはPT・OT・STとしてとかどっちでも良い。なんでもいいから近くの人が困っていることを1個解決してみる。

そしてそれらがシェアされていくと「あ、これってPTの強みじゃない?」「こんな時はOTさんじゃない?」「STさんさすがだわ!」みたいに強みの塊みたいなものが認識されていき、強みに合わせた仕事が集まってくるのではないだろうか?

もちろんそれは資格とは関係のない個の強みに合わせてくるのかもしれないが。

例えば社内の他のPT・OT・STとそこがそろったり、さらに学術として溜まっていけばなおさら状況は変わるのではないだろうか?

安易かな?

そして大学の時担当の教員が言っていたエビデンスやデータを取ることの重要さを卒業して何年か経って痛感しますわ...

恵まれてたんだな僕...

〇児発・放デイの今はまだスタートライン

ここまで書いて大きな不安を抱いている。この文章はまとまっているのだろうか?

まあいっか。僕のnoteだから。

でもまあ本当に僕がいつも心から思っていることは「この業界に興味を持って、仕事をしよう」と思ってくれる人がいること自体が本当に素晴らしいことで尊いことだと思っている。

だから、多くの人に興味を持ってもらい、長く、その人らしく働いてほしいと本気で思っている。

無論、PT・OT・STの皆さんも。

そういう前提で書いているnoteである。

僕はPTでもあり、事業所の管理職でもある。そういう立場からの見方にもなっていることはご了承いただきたい。

でも、やっぱり最後に思うことはまだこの児童発達支援や放課後等デイサービスの中ではPT・OT・STはスタートライン付近なんだと思う。

今、多くの仲間が入ってきて、いることが当たり前になるくらいでやっとスタート。

だから面白いのかもね。

おしまい

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