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“中の人”が知りたい

 進学した大学院が大阪にあったため、京都に用事があるときは、京都の大学に在学中の妹の部屋に泊まらせてもらうことが度々ありました。外泊は昔から苦手でしたが、家族だからか妹の部屋だけはとても居心地が良く、夜もぐっすり眠れたので、ちょっとした癒やしの場でした。

 いつものように妹の部屋に泊めてもらいに行ったある時、「恐いから一緒に観て欲しい」と妹がDVDを出してきました。
 タイトルは『コアラ課長』。可愛いコアラの写真のパッケージです。

 普通にサラリーマンとして人間の世界で生きる見た目はコアラの課長が主役です。内容はコメディにサスペンスを少し加えた感じです。私はそのしょうもなさに突っ込みたい衝動と笑いが止まらなかったのですが、妹はコアラが映るたびに「恐い」「ほら目が赤くなった、気持ち悪い」と目を背けいていました。それでも最後までしっかり観ていました。
 高所恐怖や広場恐怖等、様々な恐怖症がありますが、妹はどうやら着ぐるみ恐怖症のようでした。そういえば、と子どもの頃の記憶を辿ってみると、思い当たる節がありました。
 着ぐるみは表向きの変わらない表情のままなのに、中の人はどんな顔をしているのか、何を考えているのかわからないので恐いというのはわかる気がします。

 コアラ課長を思い出したのは、近々、渋谷東急ハンズにて、(気ぐるみではなく)お坊さんロボットに悩みを相談しよう!というイベントの開催予定があるからです。ロボットから出る声の主は、実在する京都のお寺のお坊さん。生身の人間です。
 ロボットなんかにまじめに語りかけるなんて、と思われるかもしれませんが、ロボットの向こうには本物のお坊さんがいて、電波障害が起きない限りは普通に会話ができます。対面ならではの空気感や人間味は感じられないかもしれません。しかしSNSでのやりとりに慣れた現代人には、普段なかなか出会うことのない“お坊さん”との初対面の手段としては入りやすいのではないかと考えています。SNSではお互いに着ぐるみを着ているようなものですが、ロボットが着ぐるみだとして、相談する側はむき出しなので、攻撃性が高まる心配もしていません。
 相談とは言っても、公共の場所で気軽な感じのものなので、あくまでお坊さんを身近に感じていただくきっかけ作りとして考えています。
*お坊さんからも相談相手の顔を見ることが出来ますし、相談者からも、どのお寺のお坊さんと話しているのか常にわかるようにします。

 このイベントをきっかけに、中の人であるお坊さんに実際に会いに行こう!という人が少しでも増えてくれたらいいな、と願っています。


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