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【寄稿】距離感 / 妙心寺長慶院 小坂興道さま

 僧侶と在家の方をマッチングするサイト「Hey!Bouz」と出会ったのはもう2年も前になりますか。
 いつも「一緒にやりましょう!」と何かしら新しいネタを持ってきては、気が付くと本人は一抜けしているT君が「ネットで僧侶と在家の方との出会いをマッチングするサイトを今立ち上げている人たちがいるんスよ。話聞いてあげてくださいよ~」とやってきたのがきっかけです。
 お寺や僧侶が社会にどのような需要があるのか探りたいとか、僧侶として自分に出来ることはまだ他にもあるんじゃないかと考えていたようなところであったので、まんまと彼の言葉に乗って登録した様なところがあります。(ちなみに彼はもうフェードアウトした感じになってます(笑))
 趣旨としては、お寺に足を運んだり僧侶に会うことのハードルをなるべく下げよう、そして日常生活の中にお寺や僧侶との関わりを取り戻そうとのことだったので、サイトのイメージも明るく気軽なものでしたし、僧侶と一緒にすることも観光寺院の案内であったり、一緒におしゃべりしたりくらいのことだということでした。
 試験運用を終えサイトが実働し出してからは当初の想定の様に寺院の案内をしたり、仏教の歴史や概要などについてガイダンスをしたりというものに加えて、人生相談の類いもリクエストに上がるようになりました。確かに「僧侶に相談」も例に上がっていたので何ら不思議は無いのですが。そうした相談のいくつかを実際に受けることになったのですが、そのどれもが、仏事相談に寄せられるようなお仏壇のお祀りの仕方は?とか墓仕舞いはどうしたら?とかではなく生き方に関わるような切実で深刻なものでした。


 さあ、そこで皆さんが僧侶に抱くイメージのようなことを考えました。世間では「坊主丸儲け」というマイナスのイメージと同時に、「何かしら社会に役立つべき存在」とか「癒し系」のイメージがあるように思います。なんだか相反するイメージの様にも思いますが、これは僧侶への期待であったり、元々持ってもらっていた親近感の表れかと良い様に解釈します(笑)。
 思えばコロナ以前、友だちの店に飲みに行ってる時もしばしば居合わせたお客さんとそうした話になることがありました。やっかみ半分絡んでくる人もいましたが、よくよく話を聞いていると、普段の生活の中でなにがしかしんどい思いを抱えていたり不満を抱えていたりして。そうした思いをぶつけたくなるようです。自分のお寺の和尚にはなかなか言えないようですが、たまたま小料理屋で居合わせたような坊主はそうしたことを話したりぶつけてみたりするのにはちょうど良い距離感なのかもしれません。
 Hey!Bouzの枠でもそうした距離感でリクエストと向かい合うのが良いのかなと考えています。

〈運営担当より〉
 今回から、運営担当者のつぶやき+寄稿と言う形でHey!Bouzにご登録いただいている僧侶の皆さまにもコラムをお寄せいただくことになりました。
 「ネタが思い浮かばないんです…助けてください〜」と皆さまに泣きすがったところ、何名か「良かったら書きますよ」とお返事をいただき、今回は早速原稿をいただいた小坂さまの回となりました。心より感謝申し上げます。

〈距離感〉について
 文章中に登場するT君というのは、Hey!Bouzにも現在ご登録いただいている、あの方ですね(笑)。フェイドアウトだなんて、いやいや、私は今でも時々相談に乗っていただいたり、いつも活動内容を勉強させていただいていて、とても頼りにしていますよ。

 「なんか辛いなあ、誰かとこの思いを共有したいなあ」というとき、その思いをどこに持っていったら良いのか、大抵の人は一度、そこで立ち止まるのではないでしょうか。
 それは話してしまったら相手との関係性に影響が出るかもしれないような内容だったり、そもそも相談に乗るよ〜と相手から言われること自体が負担になることもあります(期待するとロクなことはありません)。
 “お坊さん”って、関係性の心配をするような距離感にはいないし、悩みがあるなら話しなさい、という立場ってわけでもありません。でも、話したら話したで、なんか秘密をきちんと守ってくれそうな感じがするし、こちらがうまく話せなくても、仏教の教えを基盤に優しく受け入れてくれて、わかりやすく返してくれそうな気がしませんか?
 Hey!Bouzでは“お坊さんに悩み相談できる”という文言もさらっと入れておりますが、このサービスを作った当初は、京都に友達同士で観光で遊びにきた女性のグループが「京都だしお坊さん呼んじゃう⁈」みたいな軽い感じで一緒にご飯食べたりしてるイメージでした。しかし実際はお一人のご利用が多く、静かなお寺でお坊さんに悩みを話したいというご希望が増えつつあります。

 Hey!Bouzという軽い(たまに失礼だと怒られる)サービス名ですが、その軽さが「悩みを相談して!なんでも話してごらん」と構えられるとかえってこちらも構えてしまうという負担を軽減させているのでは、と最近は前向きに捉えるようにしています。


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