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【第4回】インフルエンザ

執筆:伊藤 舞美
   はしもと小児科看護師長
   日本旅行医学会認定看護師/保育士養成学校講師
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冬になると流行する「インフルエンザ」。いったいどんな病気なの?

 インフルエンザの流行時期に熱が出ると、「インフルエンザかもしれないので病院へ行って検査しなくちゃ!」とか、「タミフルを処方してもらわないと!」と思いがちですが、実は、インフルエンザは自然に治る病気です。
 インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる呼吸器感染症で、ふつうの「かぜ」よりも症状が重くなりやすい病気です。インフルエンザの症状は、発熱、関節痛のほかにも、咳や鼻水、下痢など全身に症状がでることがあります。また、インフルエンザは飛沫感染で、幼稚園や小学校の同じクラスなど、比較的小さな集団で感染が広がります。今流行の表現をすれば、インフルエンザの感染力を示す基本再生産数(1人がまわりの何人に感染を広げるか)は、2~3人となっています。

インフルエンザの症状

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 インフルエンザにはさまざまなタイプ(亜型)があります!

 インフルエンザには、A型、B型、C型があり、ヒトでは、A型とB型が流行します。A型とB型のインフルエンザウイルスの表面には、ヘマグルチニン(HA)16種類、ノイラミダーゼ(NA)9種類のうちいずれかの糖蛋白があり、これらの組み合わせにより、H1N1(スペインかぜ、ソ連型、新型)、H3N2(香港型)、H5N1(強毒性トリインフルエンザ)などの亜型(あがた)が決まります。
 また、インフルエンザウイルスは突然変異をして、パンデミックを引き起こします。最近では、2009年に発生した新型インフルエンザである、A/H1N1pdm09があります。この新型インフルエンザが流行した2009年は、現在の新型コロナウイルスが流行したのと同様に、世界中で大騒ぎになりました。しかし、日本では、検査治療薬ワクチンを駆使して、収束に至りました。現在では、この新型インフルエンザは、通常の季節性インフルエンザと同様の扱いになっています。新型コロナウイルスにも、必ず打ち勝つことができると信じましょう!

インフルエンザの合併症と重症化

 インフルエンザはかかっても自然に治る病気ですが、まれに、「肺炎」「脳症」の合併症を起こすことがあり、気をつけなければなりません。これらの合併症により、特に高齢者は命にかかわることがあります。インフルエンザの合併症を防ぐには、インフルエンザワクチンが有効です。そのため、高齢者に対しては、インフルエンザワクチンを定期接種として接種することができます。子どもや大人は定期接種ではなく任意接種(自費接種)ですが、インフルエンザワクチンを接種して、合併症を防ぎましょう。

インフルエンザワクチンの接種スケジュール

 インフルエンザワクチンは、年齢により、接種間隔や接種回数が異なります。おおまかには、子どもは2回接種、おとなは1回接種となります。また、インフルエンザワクチンは、A型2種類、B型2種類の4価ワクチンとなっています。

インフルエンザワクチンの接種スケジュール

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インフルエンザの治療薬

 インフルエンザの治療薬のほとんどは、インフルエンザウイルスの外殻蛋白であるノイラミニダーゼ(NA)を阻害する薬です。細胞内に入り込んだインフルエンザウイルスが増えるのをおさえる効果があります。そのため、症状がでてから2日以内に使用しないとあまり効果が期待できません。インフルエンザは自然に治る病気ですが、治療薬を使用すると発熱期間を短縮でき、体も早く楽になります。治療薬を使用するかどうかは、医師とよく相談して決めましょう。
 インフルエンザの治療薬は、医師と相談のうえで、もともと病気のある人やリスクのある人を対象に、感染を予防するため(インフルエンザにかからないようにするため)にも使用できます。感染を予防するために使用するときは、保険適応外(自費)となります。

子どもに使用する主なインフルエンザの治療薬

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※1 イナビルは、10歳未満は1容器、10歳以上は2容器の吸入。
※2 ラピアクタは、単回点滴で使用しますが、症状に応じて連日使用できます。
そのほかに漢方薬などインフルエンザに効果がある薬があります。

 インフルエンザの登園基準

 インフルエンザは、学校保健法で出席停止の病気です。インフルエンザに感染したならば、決められた期間は学校や保育園・幼稚園を休まなければなりません。家でゆっくり休むこと、水分を十分に取ることなどのホームケアを心がけて、体力が回復してから集団生活に戻りましょう。

登園・登校基準(出席停止の期間)

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【著者プロフィール】
・東京都立駒込病院消化器外科病棟
・東京都立八王子小児病院(現・東京都立小児総合医療センター)NICU主任
・1999年より、医療法人まなと会はしもと小児科にオープニングスタッフとして勤務
・へるす出版の月刊誌『小児看護』にて、連載「外来で役立つ小児看護技術」を2014年より約3年半にわたり執筆
・所属学会:日本外来小児科学会/日本ワクチン学会/日本旅行医学会/日本在宅医学会

伊藤 舞美さん近著:クリニックナースがナビゲート 子ども外来ケア

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へるす出版月刊誌『小児看護』

☆2020年9月号:病気や障害をともなう子どものきょうだい支援

☆2020年8月号:NICUに入院となった子どもの親のこころのケア

☆2020年7月号:小児看護における継続教育;2年目以降の看護師を対象に

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