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アーリー・アフタヌーン・ウイズ・ブルー・ブルー・スカイ

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【完結】 昼下がりの農村に現れた一匹の仔牛。 人は因果に流され、因果は人を流さんとする。 ゴトゴト。 荷馬車が揺れる。
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2018年12月の記事一覧

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ番外編「ロード・トゥ・ゼンコー・テンプル」

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ番外編「ロード・トゥ・ゼンコー・テンプル」

 刻は応永24年(1417年)、葉に赤みの差してきた肌寒い秋の昼下がり。
 シナノ・ランドの聖地、ゼンコー・テンプルの境内には横たわる無数の人々があった。
 彼らに共通するのは牛の蹄による踏み跡である。
 ある者は背に受けのたうち回り、ある者は腹に受け声も出せず。

 突如参道に出現した一匹の仔牛は、次々と参拝客を押し倒し、引き倒し、踏み潰して本堂へと進行を開始したのだ。
 山門を超え中門に至り、

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アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #6

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #6

ガランガラン

 ベルを鳴り、仔牛の足元には痩せこけた野良犬が2匹ふらふらと寄ってくる。
 机の上の肉塊が無造作に地面に放りだされ、静寂の広場に咀嚼音のみが広がっていく。
 もはや誰のものとも判別がつかぬ頭部が机に置かれる。
 テントの柱に止まったカラスが鳴くとその方向に頭部は投げ出され地面を転がっていく。血に塗れた長い髪は暖かな風になびくこともない。
 黒い塊があっという間に群がり、頭部は見えな

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アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #5

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #5

 ゴトゴト。

 仔牛は広場の中央に進んでいく。
 縄をかけて取り押さえようとした1人が力に抗いきれず引きずられる。
 男を支えた何人かも同様であった。
 肉切り包丁を構えて突進した男は仔牛の目の前で急に立ち止まり、呆けたようにその場に立ち尽くしている。
 
 ゴトゴト。

 仔牛は広場の中央に足を進める。
 一番大きな机の前に立つと、担いでいた荷馬車を両の前脚で天に捧げるように高く掲げた。

 

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