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11.ICTとAIと地域共生社会

2022年末、厚生労働省は全国の介護施設で発生した事故による死者数や原因などの情報を収集、分析し、結果を公表する方針を固めました。
 
事故に関する全国的なデータを蓄積する仕組を構築し、介護現場での再発防止策の策定や、利用者の安全向上に役立てる狙いがあるようです。
 
介護保険法に基づく省令を改正し、2024年度にも運用を始める方向で進んでいます。

事故情報の集計や分析の具体的な方法は、今年度に社会保障審議会の介護給付費分科会で議論されます。

現在の省令では、事故が起きた介護施設には、市区町村への内容の報告が義務づけられています。

一方で国への報告は求められていないので、全国でどのような事故が、どのぐらいの頻度で発生しているかは把握できていない状況となっています。

厚労省は省令改正で、事故が発生した特別養護老人ホームなどの介護施設に対し、市区町村を通じて、国へ報告することを義務づけます。
 
訪問介護やデイサービスなどの事業所にも報告を求めます。
 
報告対象となる事故には、転倒や誤嚥などによる死亡や入院といった重大事故だけではなく、入院には至らない比較的軽微な事故も含める方向です。
 
人手不足に悩む介護現場や自治体の負担を増やさないようにする為、オンラインで必要事項を報告し、集計する仕組も整えるとのことです。
 
事故の種類ごとに発生時の状況や職員の対応、原因などを分析し、取りまとめて公表するとのことです。
 
分析結果を基に、再発防止に役立つ事例集を作成し、自治体による事業者向け研修などに活用してもらうようです。

厚労省は昨年、介護事業者から市区町村に提出された21年度分の事故報告書に基づき、死者数などを集計する全国調査を試行的に行いました。
 
介護施設の死亡事故を巡っては、毎年1000人以上が死亡しています。

これが多いか少ないかと考えると、人それぞれ感じ方は違うのでしょうが、私の感覚だと、やはり多過ぎです。
 
それに、これをやるなら、児童関連や障がい者の施設でも同じくやった方が良いのではないかと思います。
 
全国的に不適切保育の問題なども蔓延していますし、昨年の北海道だけを見ても、福祉施設での虐待なども多発していました。
 
事故と事件ではもちろん違いはありますが、どこか繋がる一面もあると思います。
 
“これまでの市区町村への報告だけでも大変だったのに、国にも報告?”みたいな…職員の負担が増えると現場から声も上がっているみたいですが、それこそ、AIとICTを活用して、職員は現場のその場で、マイクなりに音声で状況を残せば、AIが記録してくれて、ICTによって市区町村や厚労省に瞬時に報告される仕組を作れば良いだけのように思います。
 
そう簡単ではない?
 
でも、そういうことができないようであれば、さほどAIやICTなんて期待できないのではないか…と思ってしまいます。
 
現場職員は音声を残しながら行動することで、見たこと、対応したことを、根拠をもって言葉に出しながらできるので、より良い支援ができるように思います。
 
それでいて、記録から報告までは機械がやってくれる…何とも効率的で素晴らしいことです。
 
これからの過激な少子高齢時代に必要不可欠とされるAIとICTを全ての事業所に間違いなく行き届かせることがもっとも大切なのと、他のインフラと同じで20年もすれば劣化もするでしょうから、その時に総入れ替えができるような仕組作りをしておかなければいけないと思います。
 
今は導入することが大事かもしれませんが、導入がゴールではなく、始まりです。

その後に、フル活用しながら、それを持続させることがより大事なことになります。
 
残念なことに現在の社会福祉の領域においては、組織内外のコミュニケーションや地域を基盤とした実践において、ICTが有効に活用されていません。

もちろん対面でしかできない支援やケアはたくさんありますが、ICTの活用は、新しい繋がりを構築する有効なツールになります。
 
ICTは“Information and Communication Technology(情報通信技術)”の略で、通信技術を活用したコミュニケーションです。
 
情報処理だけではなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称です。
 
ITは情報技術そのもの…あるいは、情報処理についてという意味が大きいのに対し、ICTはコミュニケーションに関わる側面が大きいです。
 
ITを利用して情報の伝達や共有を行うサービスや産業をICTと総称しています。
 
日本ではITの方が耳慣れていますが、国際的には、ICTを使う方が一般的です。
 
ICT技術はスマートフォンやタブレット端末を使って行うもの全てに活用されています。
 
例えばメールやSNSでのやり取り、ネットショッピングなどもそうです。
 
交通系ICカードも銀行ATMもICT技術が活用された事例です。
 
他に、IoTというものがあります。
 
IoTは“Internet of Things”のことで、日本語では“物のインターネット”といったところです。
 
スマート家電をイメージするとわかりやすいと思います。
 
物が人を介さずに、勝手にインターネットに繋がることを指し、自動運転や遠隔操作などがIoTにあたります。
 
何度もお勉強してきたことではありますが、現在の日本は、総人口の減少や高齢化の進展、価値観の多様化などにより、様々な課題が入り組んできています。
 
高齢者や障がい者を支援するとともに、男女共同参画や外国人との共生を実現し、誰もが豊かな人生を享受できるインクルーシブな社会を構築する為に、単一メニューだけでは解決できない課題が顕在化してきています。
 
より高い次元でのICTを活用した街作り、国作りが目指されています。
 
ICTとデータを利活用し、そこに住む人々のQOLを高めながら、都市のインフラサービスの効率的な管理、運用を実現することによって、街の課題を解決しつつ、活力を高めるということを同時進行で行っていく必要があります。
 
人口減少社会における少子高齢化や地域機能の低下等の更なる進行が予測される中で、今後も増加し続ける交通弱者、買物弱者、医療弱者等の支援も必要になります。
 
誰一人取り残さず、各人にとって使いやすい手段で、また家に居ながら行政サービス等の支援を利用でき、生活の利便性や快適性を今後も向上していくことが求められます。
 
地域共生社会の実現に必要なことは、地域ごとの課題の見極めと、民間企業等の持つ技術の活用だと思います。
 
その地域ごとのビジョンの実現や課題の解決を目指すという……、地域が進むべき道を地域住民に示すことで、住民をはじめとする地域の方々も同じ方向を向いて取り組んでいくことができるようにする必要があります。
 
地域共生社会では、ICTの活用によって、医療、福祉に限らず、スーパーとか町内会、生活に必要な要素全てで、タブレットやスマートフォンを利用して情報共有、見守りシステムなどを含めて繋がることが可能になります。
 
これらICT技術の導入によって、様々な業種が無駄なく効率的に動け、負担軽減にも繋がります。
 
人材不足が叫ばれる介護業界だけを見ても、ICTで補える部分が増えたことによって、介護士が介護サービスに専念できる時間が増え、サービスの質を向上させることに繋がります。
 
タブレットやスマートフォンを利用して介護記録が取れるようになります。
1軒の訪問に対し1台のタブレット機器を配布し、専用のアプリを入れておきます。

そして訪問した自宅でアプリを開いて介護記録を取ります。
 
カルテを共有し、サービス内容を記録していくことができ、それを事業所ではクラウド上で一括自動集計していきます。
 
これにより請求処理作業も圧倒的に簡単になります。
 
その中から、他職種は必要な情報を収集し、自分たちの仕事をし、そしてまた記録を残すことで、連動性のある支援に繋がり、生活が組み立てられていきます。

そして、介護現場におけるICT活用の最大の事例は見守りシステムです。
 
介護対象の利用者の離床や在室状況をチェックできる仕組です。
 
介護スタッフは利用者の様子を常に気にかけている必要がありますが、24時間ずっと利用者のそばで観察していては、全体的な介護業務を実践できません。
 
この見守りをICT化したことで、ベッドを離れているのか、トイレに行っているのか、睡眠をとっているのか…などの状況が離れていてもわかるようになりました。
 
異状があれば、いち早く気付くことができ、問題がない時は他の業務を行えます。
 
介護士の仕事内容の1つに、排泄の介助というものがあります。
 
排泄の介助は毎日何度も必ず行う業務であり、ひとりひとりに時間をしっかりと使って介助する必要があります。
 
ICT化がされてもそれ自体は変わりませんが、排泄時間をある程度予測することができるようになったことで業務は大幅に効率化されます。
 
元々、アナログな手段でやっていたことではありますが、もっと高精度で、夜中は排泄介助の時間を取ることが難しいですが、眠りが浅い時間を知らせて排泄介助を行うなど適切なタイミングがわかるようになりました。
 
ICTは“あれば便利なもの”ですが、ICTを導入することの懸念点もあり、なかなか導入が進まない現場もあります。

この素晴らしい技術は存在するだけでは意味がありません。
 
全体に正しく行き渡り、正しく活用され、その結果、地域の全ての人がより良い生活ができるようになり、幸福を感じられるようにならないと意味がありません。
 
懸念点の1つは、導入コストがかかることです。
 
ICT機器としてパソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末を必要数用意しなければならず、その通信費用もかかります。

訪問介護で訪問先から機器を繋ぐ場合にはWi-Fiの整備が必要な場合もあります。
 
しかし、導入コストの問題に対しては、厚生労働省が“ICT導入支援事業”を行っていて、介護事業所には国から補助が出るようになっています。
 
もう1つの懸念点は、活用する人たちが、ITリテラシーを高める必要があることです。
 
ICT機器を導入しても、使えなければ意味がありません。
 
新しいことを覚えるには負担がかかり、普段の業務と平行してやらなければいけないことは一時的に増えてしまいます。
 
その為、なかなかICTの勉強に取り組めないという人も多いようです。
 
今の子ども達は教育課程でもパソコンなどがありますし、家でも自然と身につけられると思います。
 
なので、将来的には安定していくと思いますが、やはり、今の現場の人たちは少し頑張る必要があります。
 
ICTは情報処理に留まらず、ネットワーク通信を利用した情報や知識の共有を重要視しています。
 
スマートフォンやIoTが普及し、様々なものがネットワークに繋がって、手軽に情報の伝達、共有が行える環境ならではの概念です。
 
日本は富士山を含めていつ噴火してもおかしくない山もありますし、大きな地震、年々被害が巨大化している台風などの自然災害があります。
 
そして、巨大地震や噴火などは、いろいろな場所でこれから100年のうちに実際に起こるとまで予測もされています。
 
その時には、このような便利なツールは機能しなくなる可能性もあります。

その時には、また人間力が試されます。
 
しかし、今の現状のままでいれる間は、この最新の技術をどんどん駆使して進化、発展できるところはどんどん進めてみては…と思います。
 
誰も取り残されない社会…、そして、孤立してしまった人がいたら、その孤立した人が社会との繋がりを取り戻せる社会が求められます。
 
縦割りの極みの現状の制度の狭間で孤立した人や家庭を把握し、伴走支援できるような制度の構築が必要だと思います。
 
困り事の解決を目指すだけではなく、社会との繋がりを取り戻すことで困り事を小さくするような関わりも重要になります。
 
今の政治で言うと、マスクとかお小遣い程度のお金をある一定の条件を満たす人みんなに配ることが人助けと思っているように感じます。
 
でも、それは100%“無駄”ということにはならないのですが、せっかくそのお金があるなら、社会のシステムの歪んでしまっている部分の立て直しに使うとか……その場凌ぎのご機嫌取りなことではなくて、将来を見据えた出費をするべきとも思います。
 
ソーシャルワーク……“社会の仕事”みたいなものですが、これをやるのに資格とかはどうでも良い話で、地域社会に住むすべての国民がそのソーシャルワーク機能を果たし、その地域社会が営まれていくことが、これからの時代は期待されています。
 
国民皆ソーシャルワーカーです。
 
“断らない相談支援”、“参加支援”、“地域づくり”をセットで行います。

“断らない相談支援”は、属性や年齢を問わずに相談を受け止め、必要な関係機関との協働を進めます。
 
“参加支援”は、就労や学習など多様な形の社会参加を促します。
 
“地域づくり”は、交流や参加の機会を増やすことが期待されます。
 
人の居場所作りと社会を繋ぐのがソーシャルワークであり、そのソーシャルワーク機能を支えるのがAIやICTとなります。
 
最後に、ウィンストン・チャーチルさんの名言です。
 
“機械は命を救う。

機械の力は人の力の大きな代用品となる。

頭脳が流血を減らす。

優れた作戦は大量殺戮に対する偉大な希釈剤だ。”


写真はいつの日か…倶知安町の比羅夫坂で撮影したものです(暑いので、気持ち…冬の写真にしてみました)。

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