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44.就職氷河期世代

厚生労働省によると、今春の高卒者の求人倍率は3.49倍(前年同期比0.6ポイント増)と…過去最高だった1992年の3.34倍を上回りました。
 
少子高齢化で社員の年齢構成が高くなったのと同時に段階世代の中に退職している人が増えていることも、若い人材の確保に動く企業が多いことに影響しています。
 
でも、これは就職氷河期世代には良い影響にはなっていない…と実感しています。

前回の「43.団塊 jr. 世代」とは違った角度から、就職氷河期世代を見てみます。

氷河期世代はこれまでも社会的に不遇な扱いを受けていましたが…、これまでの社会の影響を受けていた状況から逆転して、今になって社会に大きな影響を与えています。

就職氷河期世代は現在では30代後半から50歳前後の年齢の方達です。

バブルが崩壊して景気が悪化する中で、大手企業の採用人数の縮小や見送りが相次いだ結果、就職先が見つからずにフリーターや派遣労働という非正規雇用の道を選ぶ人が増加したのがこの世代です。
 
約7割の人が就職活動に苦戦をしたとのことです。

就職内定した後に金融機関が破綻して就職浪人になった人もいました。
 
“学生は卒業したら就職しなければいけない”

…という強迫観念が、当時は今よりも強い時代でした。
 
希望の業種、職種ではなくても“就職しない”という選択肢がなかったので、就職するしかなかったケースも多かったといえます。
 
最初の仕事を退職した時期を比べてみると、就職氷河期世代以外の方達では“10年以上経過後に退職”という方が最も多かったのに対して、就職氷河期世代は“3年未満に退職”という方が最も多い状態です。

とにかく就職しなければいけないという思いで入社したものの、職場に希望を見出すことができずに退職した人が多かったものと考えられます。
 
短期間で一度退職してしまうと、新しい就職先が見つからず、そこから非正規雇用者の道を選んだ人も多かったようです。
 
この世代は2000万人以上いて、現在も、そのうち無職者は55万人以上、望まないのに非正規で働いている方達が70万人以上いると言われています。

フリーターや派遣労働といった非正規雇用の問題点は低賃金です。
 
低賃金なので、日々の生活を送ることで精一杯になり、結婚できない、交際費がなく出会いがない、将来の貯金もできないなどの状態に陥ります。
 
そこから抜け出そうと、何か資格取得しようと考えたり事業を始めようと考える人もいたと思いますが、そこで問題になったのが経済的困難です。
 
このような低賃金からスタートする負のループから抜け出すことができずに、今も苦しんでいる氷河期世代は多く存在します。
 
各企業が新年度の4月入社に向けて一斉に採用に動き出す事を新卒一括採用と言いますが、これは日本独特の慣習です。
 
日本の企業はこの時期を逃すと中途で入社することが難しく、この新卒一括採用の時期に就職できなかった人は正社員への道が閉ざされていくことになります。
 
更に、2004年に政府発信によって、多くの日本企業はコストがかかる正社員を減少させて低賃金で雇用ができる人材派遣へと切り替えていきました。
 
この時、非正規雇用という雇用が一気に拡大しました。
 
非正規雇用は低賃金で雇用することができるので、正社員よりも非正規雇用を大量に採用すれば、企業全体としては利益が増えます。
 
しかし、その根底を支えている非正規雇用の人たちの収入が増えることはほとんどありませんでした。
 
新卒一括採用時期に就職ができなくても、起業や独立という方法があるはずと考えるかもしれません。

独立起業には資金が必要になります。
 
日本の融資制度は未だに銀行の融資が基本で、それにはある程度の信用が必要です。

銀行が起業したばかりの人に融資をしてくれることは難しいと考えられます。
 
今でこそ、クラウドファンディングという、インターネット経由で不特定多数からお金を集める方法が広まりつつありますが、当時はそのような選択肢もありませんでした。
 
今まで20年以上も見過ごされてきたその存在が、社会に影響を及ぼし始めています。
 
中高年のひきこもりが増加しています。

まったく部屋から出られない人と趣味の時だけ外出できる人を合わせた広義のひきこもり者は61.3万人になっています。
 
初めてひきこもりになった年齢を見ると、40歳~44歳の方達のうち33.3%が“20歳~24歳の時”と答えていて、就職活動時期がきっかけで引きこもりになったことがわかります。

2022年の日本人の出生数は年間約77万人になり、令和元年と比べると約9万人減少しました。
 
非正規雇用の増加によって、子どもを持てるほどの経済的余裕がない人が増えた為と指摘されています。
 
企業で40代と言えば、かつては、多くの仕事がこなせるようになり役職もついて企業の役員も狙える人も出てくる年代でした。
 
しかし、その年代は氷河期に直面していたので、現在の多くの企業では、最も脂がのって会社で活躍しているであろう40代の社員がいない…という問題に直面しています。
 
そして、ミニマリストが増加しました。
 
収入が少ないのでやりたいことができず、その中で生活をやりくりしていく必要があるので、いつしか氷河期世代は“持たない”生活を選択するようになりました。
 
洋服は必要以上に買わない。

食べ物は余計に買わないので冷蔵庫もない。

スマホで動画が視聴できるのでテレビもない。

マイペースで生きていきたいのでパートナーも不要と考える人が多くなりました。
 
このように必要最小限で生きる“お金を落としてくれない世代”…いや…“落とせない世代”になってしまいました。
 
この2000万人以上の就職氷河期世代が、これから2045年頃まで社会の中核になります。

そして、高齢者になります。

今のままでは不安定です。
 
経済的理由で年金をかけていない無年金者や、年金をかけていても年金給付額は現役時代の所得に比例するので低年金である可能性が高くなります。

結婚という選択をしなかった人が増加するので単独世代が増えます。

経済的に困窮しても支えてくれる人がいない可能性もあります。
 
その結果、生活保護受給者が増えます。
 
こういう格差があるから自殺者や犯罪者が増えてしまいます。
 
これまでもずっと我慢して耐えてきた人も大勢います。
 
この世代はやはり、これからも“自分がやりたい仕事”には出会えないかもしれません。

しかし“世の中に必要とされている仕事”なら見つかる可能性があります。

社会に恨みを持っていて、役に立ちたくないと考える人がいるのもわかっていますが……。
 
“世の中に必要とされている仕事”は、仕事内容の割に給与が低い場合も多くあります。

でも、長く続ければまあまあ増えるかもしれません。
 
そして、感謝されます。
 
その代表例が介護士や看護師といった仕事です。

高給が欲しければ、かなり勉強して医師になるのも良いと思います。
 
景気に左右されず、今後、常に募集がかかっているであろう仕事です。

無くてはならない仕事です。
 
全人口における後期高齢者の割合がピークになると予測されている2055年頃までは安泰の仕事です。

それが“自分に合った仕事”だと感じられたらそれこそ最高です。
 
そこから、人生の巻き返しができます。

この世代が生き返らないことには、これからの社会の変化は乗り越えられないのではないか…。
 
そして、この世代をちゃんと社会が受け入れないと未来はより一層厳しいものになるのではないか…と思います。


 写真はいつの日か…サッポロビール園で撮影したものです。


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