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53.こども家庭庁

こども家庭庁は、内閣府の外局として2023年4月1日に発足しました。
 
厚生労働省と内閣府から関連部署の計200人を集約して職員は350人います。
 
ここにつぎ込まれている予算は4兆8104億円です。
 
従来は内閣府や厚生労働省など…複数省庁にまたがっていた事務の一元化を図ることを目的としています。

既に文部科学省は別行動をとっていますが…。
 
担当相は子どもに関する施策について他省庁に是正を求めることができる“勧告権”を持っていますが、強制力はありません。
 
こども家庭庁発足の背景には、日本の深刻な少子化があります。
 
2022年に出生数は80万人を割り込んで、約77万人になりました。
 
ただし、こども家庭庁の業務は出生数に関わるものばかりではありません。
 
子どもの貧困、虐待対策、ひとり親の支援、ヤングケアラー、障がい児支援なども担当し、子どもの利益を第一に考えた“こどもまんなか社会”の実現を目指します。
 
4月中旬には“こどもファスト・トラック”に関する関係省庁会議を立ち上げました。
 
子どもと子育て世帯を社会全体で応援する機運を高めようと、混雑する大型連休期間中には国立科学博物館(東京都台東区)などで子ども連れなどの優先レーンを設置しました。
 
また同じ4月から、子どもや若者に関する政策を決める際には、当事者の意見を聞くことが国や自治体で義務化されて、こども家庭庁は“こども若者★いけんぷらす”を立ち上げました。
 
子どもや若者の意見を政策に反映する取組の運営などを行うチームのメンバーは、中学生から20代の社会人までの21人です。
 
ポンプのように意見を汲み上げていく役割をイメージして、チーム名は“みんなのパートナーぽんぱー”になりました。
 
今後、各省庁や子ども・若者が設定するテーマで、意見を聞く為の検討や企画、子ども・若者向けの情報発信などに取り組む予定です。
 
そして遂先日には、こども家庭庁の“こどもまんなか応援サポーター”事業に、サッカーのJリーグが新たに参加することが表明されました。
 
Jリーグの野々村チェアマンは、具体的な取組の1つとして子どもたちを試合に招待するイベントなどを各チームで更に推進していく考えを示しました。
 
一方で、小倉こども政策担当相は、サッカーの試合会場でも子連れの人が優先的に扱われる“こどもファスト・トラック”の取組を推奨してもらいたいと要望しました。
 
ここまでの進行具合に対して、世論では逆風が吹き始めています。

まだ発足して間もない…4カ月目に突入したばかりの こども家庭庁 に対して、解体を求める声が上がり始めています。
 
まぁ、これだけ見ると、枝葉の…枝ではなく…葉…いや、葉の中でも先っちょだけを見ての活動しか見えてきません。
 
現段階では、華やかな表向き目立つような…根本的に何も解決には向かないであろうことしか見えていません。
 
なので、解体も何も……まだ何も始まっていません。
 
日本の中でもトップクラスの優秀な人材が集まっているのです。
 
バカじゃないんだから、ちゃんと何が問題なのか…問題の根っこに当たる部分は何なのか…そういうことが、わかっているはずです。
 
これからちゃんとした政策が出てくることを期待しましょう。
 
ここで改めて、どのような問題があるから、こども家庭庁が必要なのか…その辺のことをお勉強してみます。
 
2022年に国内で生まれた子どもの数が統計を始めた1899年以降初めて80万人を割りました。
 
国内にいる外国人と海外で生まれた日本人の子どもを含んだ出生数が約79万人になりました。
 
国内で生まれた日本人に絞り込んだ出生数は約77万人です。
 
2017年の国立社会保障/人口問題研究所の推計では、2033年になって初めてここまで減少すると予測されていたので、想定よりも11年も早く少子化が進んでいることになります。
 
40年前の1982年の出生数(国内で生まれた日本人の子ども)は151.5万人だったので、40年間でほぼ半減したことになります。
 
これに対して、今年になってから政府の日本を代表するような優秀な人たちは口を揃えて“危機的な状況”と仰られるようになりました。
 
総理大臣はラストチャンスとまで言っています。
 
その結果、“異次元の少子化対策”という迷言も出てしまいました。
 
その中の“異次元”という言葉は、最近、MLBの大谷翔平選手が正しい使い方を示してくれるような大活躍をしてくれていて、そちらで流行語大賞の予感がします。
 
話が逸れてしまいましたが、子どもを産まない理由として考えられるのは…、
 
・産むこと自体、考えられない。
・子どもが好きではない。
・子どもを欲しいと思えない。
・家事や育児に協力的な家庭でない。
・自分に子どもは育てられないと思っている。
・夫婦(カップル)との2人の生活が楽しい。
・心配ごとが増えるのが嫌だ。
・面倒くさい。
・今の日本社会に生まれてきた子どもがかわいそう。
・世界の将来を考えるととてもじゃないが産めない。
・経済的不安がある。
・女性がキャリアを諦めざるを得なくなる。
・ワークライフバランスなんて無理に決まっている。
・高齢出産のリスクが高い。
・不妊(気味)である。
・病気である。
・産科医不足などで諦めざるを得ない。
 
…など、他にも様々なものがあると思います。
 
産みたくないから産まない人と、産みたくても産めない人もいるわけで、これも多様性を尊重しなければいけないことです。
 
ここで、生まれてこない方が幸せなのかな?…というニュースもありまして…。
 
2022年に自殺した小中高校の児童生徒は512人で過去最多になりました。
 
これまでは2020年の499人が最多でした。
 
小学生が17人(前年比6人増)、中学生が143人(同5人減)、高校生が352人(同38人増)です。
 
特に高校生の男子は207人と…前年より38人増えました。
 
月別では、6月(60人)、9月(57人)、3月(47人)の順に多かったとのことです。
 
厚労省のまとめによると、19歳以下の自殺の理由(複数の場合あり)は、学業不振が104人で最も多く、進路に関する悩み(入試以外)が84人、入試に関する悩みが40人と続きます。
 
自殺はあくまで個人の問題と考える節もありますが、全体として見ると当然の如く、社会問題であり、国が対応に取り組むべき問題だと思います。
 
死ぬか、犯罪をするか…、その他諸々の負の行動を起こすという考えに至るまでには、個人の問題もあるとは思いますが、やはり、環境に…社会に問題があると思います。
 
そんな環境…社会ができてしまう背景にも、何か大きな問題があると思います。
 
負の連鎖の繰り返しです。
 
善の連鎖もありますが、なぜか、負の連鎖の方が巨大化又は深刻化してしまうように感じてしまうのは、この国の社会が病んでしまっているからのようにも感じます。
 
生まれてくる子どもが少なく、それでいて、やっとの思いで生まれてきた子どもが自分で死んでしまおうと思ってしまうのですから…、明らかにこの社会はおかしいです。
 
少子化、自殺……、強い結びつきを感じられるのが日本経済の停滞です。
 
経済が長期に渡って停滞した最大の理由は、1991年にバブル経済が崩壊して銀行の不良債権が膨らんだことと言われています。
 
でも、もう32年前のことですから…。
 
実際のところは、今の日本の経済の停滞がダラダラと続いてしまっている原因は、政治の質の他に、人口減少を引き起こす少子高齢化、特に、少子化にあると考えられています。
 
新型コロナウイルス感染症というのもありますし、昨年から本格的に始まったロシアとウクライナの戦争などもありますが、日本の場合は32年前からですから…それを言い訳にはできません。
 
日本の人口はどんどん減り続けます。
 
このままいくと、30年後…2053年には、1億人の大台を下回る9924万人にまで激減することが予測されています。
 
今の日本の楽観的な感じだと、もっと早く…その時がくるのかもしれません。
 
人口が減っていけば消費も減っていくので、当然のことながら、日本の経済規模はどんどん縮小していきます。
 
日本の人口減少でより深刻なのは、総人口の減少数に比べて生産年齢人口(15~64歳)の減少数がかなり多いことと、高齢者人口(65歳以上)の数が20年以上も増え続けるということです。
 
すなわち、生産年齢人口の過度な減少によって所得税、住民税の歳入が不足する傾向が強まる一方で、高齢者人口の増加が続くことで年金、医療、介護等の社会保障費が膨張していくことが避けられない見通しになっています。
 
そして、老朽化が進む道路やトンネル、橋、下水道、湾港、公園などの社会インフラの維持管理が困難になって、特に人口が少ない地域では生活が極めて不便になると考えられています。
 
少子化も今始まったことではありません。
 
1989年の“1.57ショック”から本格的に一般的にも知れ渡り、大きな社会問題になりました。
 
経済の停滞とほとんど同じ時期に少子化も慢性化して、その2つの要素が相乗効果となって今に至っています。
 
30年以上変わらないのですから凄いなぁと思いますし、それも悪い状況のままから変わらないということで…恐ろしい状況です。

私が10歳の頃からずっとこういう状況ですから、それだけ解決が難しい問題なのだろうと思うことにしてますし、この状況が“普通”のことになってしまい、私はもう諦めの状態です。
 
“出生率が2.00を回復すれば、出生数は下げ止まる”という意見もありますが、出産適齢期の20~30代の女性の減少が過去30年以上に渡ってずっと続いているので、仮に出生率が奇跡的に2.00程度に回復したとしても、出生数は簡単には減少傾向から抜け出せないのが現実です。
 
つまり、日本は過去の少子化が更なる少子化を引き起こして、それがまた将来の少子化へと悪循環に陥っている状況です。
 
しかし、出生率が奇跡的に2.00程度に回復した場合、少子化のスピードを少しでも緩めることはできると考えられるので、現状ではほとんど手がつけられていない状況ですが、国民が中心になり、企業、行政(国や地方自治体)が三位一体になって、少子化への正しい危機感を共有しながら、効果的な対応策を進めていく必要があるのかなと思います。
 
まずは、現政治が後先何も考えずに、白い小さな布のマスクはもちろんのこと、無駄にお小遣い程度のお金をばら撒く…等といった行為を極力控える必要があるのではないかと思います。
 
そして、子どもが生まれてきただけでは話になりません。
 
子どもが健全に育つことができる社会環境がないと、生き心地が悪くて、自ら命を絶ってしまうことや、犯罪を犯してしまう…などの行為に及んでしまう可能性があります。
 
近年、子どもたちを取り巻く環境は深刻さを増しています。

変化が高速化している社会において、著しい環境変化の中で、貧困や虐待、孤立などといった課題を抱えたまま、子どもたちは助けを求められずにいたり、環境を変えることを諦めてしまったり、自分が置かれている状況の異常さに気づけていない場合もあります。
 
そして、子ども時代のトラウマや、経済や教育などの格差は、子どもたちが社会に出た後も引き摺ることになる場合があります。
 
2020年から2022年にかけて、コロナによる緊急事態宣言などによって社会は一変しました。
 
コロナ以前から“日本の子どもの7人に1人は貧困”と言われていました。
 
経済的支援が必要な人、特に“相対的貧困(社会における標準的な生活水準に比べて相対的に貧困な状態《2人世帯であれば世帯収入が約200万円以下、3人世帯であれば約250万円以下》にあること)層”と言われる子どもたちの環境や生活に関する社会問題は早急に改善すべき重要テーマとして存在していました。
 
それがコロナ禍になって、その緊急性は一層増しました。
 
学校が一斉休校になったり、在宅授業を強いられたりする中で、親の職業によっては働き方のシフトチェンジがうまくいかず、賃金カットや最悪な場合には職を失ってしまうケースも相継ぎました。
 
家庭の所得格差はオンライン授業への対応可否など…、子どもの教育環境にも格差を生み、特に、ひとり親家庭やヤングケアラーの子どもたち、何らかの事情で親に頼ることができない子どもたちの生活に悪影響を及ぼしました。
 
ヤングケアラーは、本来大人が担うと想定されているような家事や家族の世話などを日常的に行っているような子どものことを言います。
 
貧困世帯の学習環境の悪化が目立ちます。
 
そして、児童虐待の問題もあります。
 
殴る、蹴るなどの暴力を加える“身体的虐待”、充分な食事を与えないなどの“ネグレクト(育児放棄)”、暴言や脅しで子どもの心を傷つける“心理的虐待”、そして“性的虐待”の4つに分けられます。
 
“心理的虐待”が約半数以上で最も多く、次いで“身体的虐待”、“ネグレクト”、“性的虐待”と続きます。
 
虐待は家庭外に知られにくく、見過ごされているケースも多く存在していると考えられます。
 
虐待は死に至らなかったとしても、暴力による身体の障害や、充分なコミュニケーションや食事を与えられないことによる発達の遅れ、そして、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などを誘発して、その後の子どもの人生を左右するほどの深い傷を与えます。
 
子どもの貧困や虐待は、子どもが“人と繋がる”機会も奪います。
 
子どもの孤立には、“家庭での孤立”、“学校での孤立”、“地域での孤立”などがありますが、共通しているのは“頼れる大人が周囲にいない”ということです。
 
家に常に誰もいない…といった物理的な孤独もそうですが、親がいたとしても無視される、暴力を振るわれるといった心理的な孤独の中、子どもたちは家庭内で孤立しています。
 
そして不安定な家庭環境は子どもたちが学校生活を送る上でも精神的な負荷を与えてしまい、不登校やいじめなどといった問題に繋がる危険性もあります。
 
家庭内の問題については、先生や友達に相談しにくいと考えている子どもも多く、学校内でも孤立してしまいます。
 
家庭や学校という…本来の居場所を奪われた子ども達は、次第に“大人や社会に期待すること”や“自分を大切にすること”を諦めて、非行に走ったり、精神疾患を発症したりして、地域でも孤立するといった悪循環になります。
 
子ども時代の困難は、子ども達が社会に出た後にも悪影響を及ぼします。
 
子ども時代に受けた心の傷が何らかの精神疾患や、発達や知的障害を生じさせ、学業や仕事の継続を困難にしていると考えられています。
 
虐待や親の病気、経済的理由などで保護者のもとで暮らすことができない、または適切ではないと判断された場合、子どもは一時保護を経て公的な責任のもとで生活するようになります。
 
この社会的枠組を“社会的養護”と言います。
 
社会的養護のもとで育つ子どもは、厚生労働省の2022年の調査によると約4万2000人います。
 
児童養護施設は2020年時点で全国に612カ所あり、社会的養護下にいる子ども(2~18歳)のうちおよそ3分の2にあたる3万人弱が暮らしています。
 
過去には、大部屋で大集団での生活を基本とする施設が中心でしたが、近年はできる限り小規模で“家庭的な環境”が望ましいとされ、小規模化が進行しています。
 
地域社会の住宅を利用して、数人の子どもと職員が生活するグループホームも増えています。
 
尚、子どもたちは高校を卒業すると同時に児童養護施設も退所して“ひとりの生活”が始まります。
 
児童養護施設で暮らすには幼すぎる2歳未満の乳幼児は、乳児院に入所します。
 
施設ではなく、里親に委託される子どもたちもいます。
 
1万2315世帯が里親登録をしていて、そのうち4379世帯が7104人の子どもを育てています(経験豊かな養育者が事業として5~6人の子どもを家庭で養育するファミリーホームも含まれます)。
 
特定の大人との長期的な人間関係構築による子どもの心理的安全性担保や、愛着関係による健全な心の成長支援を目的に、政府は“施設から里親へ”の転換を強力に推進していますが、実親が里親委託に同意しないケースも多く、なかなか進んではいません。
 
その他にも、自立援助ホーム、母子生活支援施設、児童自立支援施設、児童心理治療施設など…、社会的養護には様々な形態が存在し、“親を頼れない”子どもたちを支援しています。
 
どんな環境に生まれ、どんな環境で育っても、子どもたちが安全に安心して笑顔で暮らせる社会の実現が求められます。
 
そのような多様化して複合化することで更に複雑になった社会の中で、2023年4月1日に“こども家庭庁”が発足しました。
 
これまで別々の省庁で行われてきた 子ども政策 の司令塔機能を一本化することが目的になっています。
 
内閣府の外局で、子どもに関する取組や政策を社会の真ん中に据える“こどもまんなか社会”を目指す為に、子どもや若者、子育てに関わる様々な政策の司令塔として創設されました。
 
具体的な事業としては、厚生労働省が所管していた保育園、放課後児童クラブ、児童虐待防止、児童養護施設、妊産婦支援、障がい児支援や、内閣府が所管していた少子化対策、認定こども園や児童手当の支給なども担当します。
 
しかし、教育に関しては、こども家庭庁とは別組織として君臨する文部科学省が今後も所管することになり、いじめ防止や不登校対策については、文部科学省とこども家庭庁が連携してとり組む形になります。
 
こども家庭庁の“こども”はひらがな表記で、政策の対象は、こども=18歳未満といった年齢で区切らないで、支援が必要な人には引き続き継続するとのことです。
 
例えとして、虐待を受けた子どもなどが児童養護施設で育った場合に、施設を出た後には頼れる親族や貯金もなく、自活するのに大変な苦労をすることが課題になっていますが、このような若者も こども家庭庁 は支援します。
 
当たり前のことですね。
 
こども家庭庁の発足と併せて、4月1日に“こども基本法”が施行されました。
 
こども基本法は、子どもの権利を謳ったもので、中でも、全ての子どもが発達段階に応じて、自分に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会や活動に参画する機会が確保されると明記されています。
 
そして、子どもに関する施策を作ることや実施する際は、子どもの意見を反映させることが4月からは国と地方公共団体に義務付けられました。
 
このようにこども家庭庁は、これまで別々の省庁で行われてきた子ども政策の司令塔機能を一本化することが目的になっています。
 
文部科学省とは協力するという形で、1歩距離を置いた感じですが…。
 
これにより、子どもたちに、組織による縦割りの壁や、年齢の壁などを克服した切れ目のない包括的な支援を行い、誰1人として取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しします。
 
2022年における1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる合計特殊出生率は1.27で、8年連続で前の年を下回っています。
 
将来的に深刻な労働力不足を招く少子化は国の最重要課題の1つとして様々な対策が取られてきましたが、一向に改善が見られていません…悪化しています。
 
その中で、厚生労働省の調査によると、児童虐待の相談対応件数はほぼ右肩上がりで伸び続けていて、2021年度は過去最多の20万7659件を記録しました。
 
この増加の原因は、心理的虐待相談件数の増加や、虐待相談窓口の普及による家族、親戚、近隣知人、児童本人等からの通告が増加したことが理由に挙げられています。
 
しかし、見過ごされている虐待もたくさんある可能性もあるので、やはり、虐待自体も増えているのだと思います。
 
文部科学省の調査によると、2012年以降、小学校、中学校ともに不登校児童の数は増え続けていて、2021年は小学生の77人に1人、中学生の20人に1人が不登校状態になりました。
コロナ禍で一気に増えています。
 
また不登校に関して、2018年に日本財団が行った調査では、学校になじめないなど、“隠れ不登校”状態にある中学生は全国で33万人にも上ることが判明しています。
 
2021年に文部科学省が発表した調査によると、小、中、高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は51万7163件でした。
 
過去最高を記録した2020年の61万2496件に比べると減少してはいますが、一方でTwitterやLINEなどを利用した“SNSいじめ” が増加傾向にあり深刻な問題になっています。
 
2019年に厚生労働省が発表した調査によると、日本における子どもの貧困率は13.5パーセント(約280万人)と、子どもの7人に1人が貧困状態にあるとされています。
 
更に、ひとり親家庭では貧困率は48.1パーセントと、およそ2人に1人という状況になっています。
 
子どもたちの間に、経済的要因とする教育格差、体験格差(習い事や旅行など)が広がっています。
 
その他にも、子どもが家事や家族のケア(介護や世話)を日常的に行うヤングケアラーの問題や、若年層による予期せぬ妊娠、性暴力被害など、子どもたちに関する様々な社会課題が山積み状態です。
 
これまで、子ども関連の社会課題に対する国の施策は、課題の内容に応じて別々の省庁で行われてきました。
 
日本では子どもに関する所管が下記の通り様々な省庁に分かれ、縦割り行政になっていると指摘されてきました。
 
文部科学省:
幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校の幼児教育や義務教育、いじめ対策、不登校対策、自殺予防対策、宗教2世、各種ハラスメント防止等
 
厚生労働省:
学童保育(学童保育指導員、放課後児童支援員)、保育所・保育園、待機児童対策、児童相談所を通じたヤングケアラー対策、母子保健、児童精神医学、ひとり親家庭支援、障害児支援、ネグレクトや児童虐待の防止等
 
内閣府:
託児所、認定こども園、少子化対策、子供の貧困対策、子ども食堂(農林水産省等)、児童手当等
 
警察庁:
少年少女犯罪対策、少年少女売春・児童買春対策、性的搾取防止等
 
例えば、青少年の健全な育成や子どもの貧困対策は内閣府政策統括官、児童虐待防止対策は厚生労働省、少子化対策や子育て支援は内閣府子ども・子育て本部、いじめ防止や不登校対策は文部科学省といった感じです。
 
現場の人たちにとっては、ややこし過ぎて眠たくなってしまう状況です。
 
こども家庭庁は、司令塔としてこれらの子ども政策全体を統括する、リーダー的な存在として期待されています。
 
制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を取り払うことで、子どもたちに切れ目ない包括的な支援を行います。
 
また、子どもに関する新たな社会課題が出てきた際にも、どの省庁が担当するか決まるまで放置されることなく、こども家庭庁ですくい上げることも可能になります。
 
常に子どもの利益を最優先に考えて、全ての子どもの権利を保障する“こどもまんなか社会”を目指します。
 
内閣府の外局として、子ども政策担当の内閣府特命担当大臣が置かれ、各省庁などに子ども政策の改善を求める“勧告権”などを行使することができます。
 
内閣府の外局として設置されるということは、法的な位置付けは金融庁や消費者庁などと同じです。
 
子どもを中心とする子どもの為の政策に取り組んでいく姿勢は、こども家庭庁の発足と同時に、子どもの権利を総合的に保障する法律である“こども基本法”が施行されることにも表れています。
 
こども基本法では国や自治体に対して、子どもの意見を政策に生かす仕組を作ることを義務付けており、こども家庭庁でも次の6つの基本理念を掲げて、政策を推し進めていきます。

①子どもの視点、⼦育て当事者の視点に⽴った政策立案

②全ての子どもの健やかな成⻑、Well‐being(ウェルビーング…幸せな状態)の向上

③誰⼀⼈取り残さず、抜け落ちることのない⽀援

④子どもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ⽬ない包括的な⽀援

⑤待ちの⽀援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要な子どもや家庭に⽀援が確実に届くようプッシュ型⽀援、アウトリーチ型⽀援に転換

⑥データ・統計を活⽤したエビデンスに基づく政策⽴案、PDCAサイクル(Plan計画、Do実行、Check測定・評価、Action対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高める
 
当事者の声に耳を傾けて実態に即した子ども政策が行われるようになる可能性が高く、子ども、子育て当事者にとっては大きな前進になるのだと思います。
 
一方で最も懸念されている点は、これらの政策を実現する為の安定的な財源の確保について明言されていないことです。
 
社会全体で財源を負担する方向で検討されていて、もし新たな増税による確保となれば、子育て当事者たちもその他の国民も、結局は生活に更なる負担がかかることになる可能性もあります。

また、今回のこども家庭庁の創設にあたっては、文部科学省が管轄する幼稚園と厚生労働省が管轄する保育所を一体化する“幼保一元化”が見送られました。
 
厚生労働省の保育などの所掌事務は こども家庭庁に移管されますが、文部科学省の幼稚園の業務は移管されません。
 
幼保一元化は1990年代以降から議論されてきましたが、実現できず、2006年の制度改正により、新しく内閣府所管の“認定こども園”を創設することで、幼保三元化となり…当初の予定からガラッと変わってしまいました。
 
幼稚園と保育園の業界は、それぞれが自民党の応援団になっているようで、党内対立をはらむ一元化の議論は、今回も早々に見送られました。
 
何を見て仕事をしているのでしょうか…ある意味おもしろい。
 
今後も一体化していくかどうかを含めて議論がされていく予定ですが、幼保一元化が実現できないと子どもの教育機会の均等化や、教育の質の向上を図ることが難しく、子ども政策を一本化できているとは言えないという意見もあります。
 
もともと、 幼稚園は未就学児の教育の場(管轄は文部科学省)であり、保育所は働いている母親が保育を委託する場(管轄は厚生労働省)として誕生した歴史的な経緯があります。
 
幼稚園や義務教育などの教育分野については文部科学省が引き続き担当し、いじめなどの重大事案についてはこども家庭庁と連携するとしています。
 
結局のところ、こども家庭庁の創設は縦割り行政の廃止によって、切れ目のない支援、全ての子どもに抜け落ちることのない支援をすることが重要な考えだったのですが、始まる前からその想定から逸れ始めています。
 
子どもの教育と福祉を担当する省庁が分かれたままで包括的な支援ができるのか…心配ではありますが、やってみるしかありません。
 
そして、こども家庭庁は各省庁に対して勧告する権限を持ちますが、強制力はありません。
 
司令塔を目指すこども家庭庁ですが、その機能が果たせなければ、事実確認や事後対応に関する改善が進まない可能性もあります。
 
しかし、この分担も現総理大臣によると、“教育行政は、こども家庭庁と文部科学省が相互調整し、密接に連携する方が政策の充実になる”という考えがあってのことのようです。
 
ここまで来たら、幼保一元化はなかったことで良いのでしょう。
 
大切なことは、子どもの声を尊重し、当事者目線の取組を進めていくことです。
 
家庭では解決することが難しい様々な問題を、社会全体で解決する包括的な支援が必要です。
 
少子化対策や子どもへの施策は、1991年の育児・介護休業法に始まり、最近では第2次安倍政権での保育と教育の無償化に至るまで、様々な施策が講じられてきました。
 
しかし、出生率は7年連続で低下して2022年には1.27となり、過去最低の1.26(2005年)に近づいています。
 
待機児童はコロナ禍の影響などから減りましたが、潜在的には今も多く、希望する幼稚園に入れないなどの“隠れ待機児童”は約6.4万人もいると言われています。
 
このような課題はありつつも、こども家庭庁の創設が子ども政策の大きな一歩であることは間違いないことだと思います。
 
遂先日、小倉こども政策担当相は、若者が子育て家庭を訪れて育児の経験談を聞く“家族留学”の実施現場を東京都中央区の一般家庭で視察しました。  
 
視察後、こども家庭庁で“家族留学”の経験者や受け入れ家庭の8人と意見交換しました。
 
小倉こども政策担当相は…、

“赤ちゃんや幼いこどもと触れ合う機会がよくあった方については、「いずれ結婚する」ことを希望する独身者が男性86.4%、女性90.4%という調査結果があります。  
結婚、妊娠、出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものであり、特定の価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりしてはなりませんが、「家族留学」のような体験プログラムによって、家族やこどもと暮らすとはどのようなことなのかを知ってもらうことは大変重要な取組であると考えています“

…と仰られています。
 
こども家庭庁に費やされた初期予算は約5兆円です。
 
プレッシャーです。
 
何かやればSNSではまずは叩かれます。
 
僅か3カ月と少しの期間で、“解体”という文字まで出始めています。
 
今の時代は本当に大変です。
 
でも、ちゃんとしたことをやって継続すれば、最初は非難されてもいつかは理解を得られます。
 
限りのあるお金を無駄遣いだけはしないでほしい…それだけは無知な私も願うところです。
 
今週末には、“こどもまんなかアクション”のキックオフイベントが、総理大臣も出席して、こども家庭庁で開催される予定です。
 
そこから始まる国民運動とかいう大それた運動では、子育て支援の先進事例を自治体や支援団体ごとに表彰する“こどもまんなかアワード(仮称)”を創設する他、11月を子育て支援の取組を集中的に講じる“秋のこどもまんなか月間”に定める方針です。
 
まぁ、これでは日本の少子化問題は何ひとつ解消されないでしょう…でも、今がラストチャンスのようです。

まだ何も始まってはいません。

これからです。

全ての子どもや子育て当事者たちにとって、より生きやすい社会を作る為に、こども家庭庁が期待されています。
 
それと同時に、やはり、国民ひとりひとりが子どもたちを取り巻く様々な問題を他人事とは思わずに、まずは関心を持つことが大切なことだと思います。
 
子育てをしている親だけではなく、すべての人が関心を持ち、子どもを社会全体で支援していくという姿勢が必要だと思います。

あとは、やはり、少子化を解消するのは子ども家庭庁だけでの問題ではありません。

まずは、今の大人たちが安定しないことには何も始まらない…ということでしょう。


写真はいつの日か…仁木町でさくらんぼを収穫したものを撮影したものです。

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