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短編読物:トロールのなかよし兄弟

🔰序章&項目一覧

「なあ、スナッパ。おれはやっぱり、なっとくできねえんだ。かんがえたけど、やっぱ、へんだ。よう、スナッパよう。おきろよう」

ボルゴに耳元で話しかけられ、スナッパは心地よい眠りを諦めねばならなくなった。ドゥームゴブリン部族「悪どい大目玉」の用心棒として、洞穴の入口守備を引き受けてから一月。数日に一度の頻度で、兄は同じ話を蒸し返しているのだ。右手で目を擦りながら、スナッパは忌々しげに口を開いた。

「……ボルゴ兄さん、またかよ。何事かと起きてみりゃあ、またその話か……何度話し合えば気がすむんだい」

「ちがう。おれ、よく、かんがえたんだ。どうしてあいつらのために、おれたちが、いりぐちを、るすばんしねえとだめなんだよ。やっぱり、あいつらを、ぶっころして、きのこをうばおう。そっちのほうが、はやいよ」

「兄さん、もう一度言うぞ。洞窟の奥にはめずらしいキノコの畑があって、あいつらしか世話できない。俺たちは体が大きすぎて畑に入れないんだ。だから、あいつらを殺したら、俺も兄さんも大好きなキノコが食えなくなる。わかるかい? あいつらはキノコ農家で、ちいさい友達なんだ」

「うん。そうだった。あいつらは、ちいさいともだち。それを、わすれてたんだ。きのこは、うまいよなあ。ともだちの、きのこはよお」

「そうだよ兄さん。あいつらはうまいキノコを作ってる。それで俺たちは、あいつらと決めっこをした。俺たちがこの場所を守る。あいつらはキノコを山ほど持ってくる。だから、俺たちが殺すのはあいつらじゃなくて、この場所に来る、ずるくてこすい泥棒だ。おととい俺が呪文をかけて、兄さんが叩き殺した連中を覚えてるだろ? 人間は、みんな悪い泥棒なんだぜ」

「よし! どろぼうのわるいれんちゅうを、ころそう! なっとくだ! でも、ほんとうにスナッパは、おりこうさんだなあ。スナッパがおとうとで、おれは、はなが、かたいよ。これからも、はんぶんこでいような」

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