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心と頭の温度

プランナーになってはじめてみた結婚式で私は号泣した。

医療系の企業から転職して「結婚式とは」について、まだまだ何も知らなかったプランナーになりたての頃。

店舗に配属された週末、まだ何も仕事なんてできない私は、とにかく「結婚式を見ろ」と先輩プランナーにくっついて、ただただ「結婚式を見る」という仕事を永遠していた。

私の「結婚式オタク」の歴史はここからはじまるのだが・・・

とにかく私は結婚式を間近で感じ、もう心揺さぶられまくり。フィナーレでは、誰よりも先に泣いてしまい、号泣している私に気づいたゲストにちょっと笑われる始末。

結婚式の見学が無事終わり、先輩から呼ばれ「今日どうだった?」と振り返りのお時間をいただいた。私はここぞとばかりに、一日感じたことや感動したこと、結婚式の素晴らしさを肌で感じ、やる気に満ち溢れていることを、それはそれは饒舌に語った。

うんうん、と黙って聞いてくれていた先輩は、ひとしきり私の話を聞いたうえで、このことだけは忘れないでほしい、と言ったことば。

「プランナーはお客様の前で絶対に泣くな」

これから先、たくさんの心動く瞬間に立ち会うと思うけれど、プランナーは常に冷静でなければいけない。

心動くシーンでは、カメラマンがしっかりと感動のシーンをおさえているか、照明は適切か、BGMの音量は適切か、MCコメントは必要か不必要か、ゲストの温度感はどうか、こんなシーンだからこそ、感極まって体調を崩されるご高齢の方も多いので、ゲストで不穏な動きをしている人はいないか・・・

会場の端から端まで、あらゆる場所に意識を向けておかなければならないから、泣いて理性を失うなんて、もってのほか。一瞬の判断の迷いで取り返しのつかないことが起きる可能性がある。判断をにぶらせるな。一瞬たりとも気を抜くな、と。

ただ、一方で「心動くことも忘れてはならない」と。心と頭の温度をきちんと管理できる人になってね、と教えてもらった。

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先日の出来事、本当なら担当させていただくはずだったご新郎ご新婦様のご結婚式。コロナの影響でご結婚式を延期され、私は担当をさせていただくことができなかったおふたり。

ご結婚式当日。お仕度が整ったドレス姿でお電話をいただき、画面越しではあるが、お顔を少しだけ拝見することができた。

とても美しく、とても晴れやかで、とてもいい表情をされている、これからご結婚式を迎える直前の時間。

私はいろんな思いがこみ上げてきて、思わず涙が流れた。

気づかれないように、画面から外れたりしながら、なんとか泣いているのがわからないように、お電話を結んだけれど、後日、ご新婦様から「荒井さんの目に涙が浮かんでいるのに気づきました」と言われてしまった。あー、ばれてしまったかぁ、と思ったが、今回だけは許してほしい。

だってだって、本当に本当に悩んで悩んで悩んで、コロナのせいでたくさんのことに立ち向かったおふたり。本当に本当に無事、結婚式を迎えられてよかった。プランナーになってよかった、と改めて思った瞬間だった。

「私は何人の人生の中にいることができるだろう。」

プランナーになって、何度となく自問自答してきた質問。

ウエディングプランナーは、なにひとつ、カタチあるものは残せない。けれど、時間を思い出に変えることができる。そう信じている。

結婚式は本当に素晴らしい。結婚式が大好きだ。

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