ハーブ&スパイスビール醸造家。自己紹介。
こんにちは。阿部淳哉です。
note、というか、いち個人としてブログに投稿すること自体初めてな気がします。
まずは自己紹介として、自分は何をしているのか、何をしたいのか、自分に影響を与えたものはなんなのか、など書いてみました。
僕のことを知らない方にはもちろん、同業で繋がりのある方にも、あまりこういうのは話したことがありません。ドキドキします。
〇ビールの専門家であり醸造家である
僕の所属する団体は株式会社CRAFT BEER BASE(以下CBB)。
CBBは「ビールを正しく広める」をモットーに大阪のど真ん中で活動する会社です。2012年に設立し、酒販業・飲食業にはじまり、2019年には自社ビールの製造を開始しました。
CBBはとにかくビールの質にこだわる会社です。日本屈指といえるでしょう。年間で約1,000銘柄のビールを取り扱い、そのどれもが厳選された高品質なものです。スタッフの中にはビアジャッジの資格をもち、国内外のビール審査会に参加するものも数名います。
僕がCBBに入社したのは2014年。下積みの後、まずは酒屋部門である本店の店長を務めました。
仕入れたビールはほぼ全てテイスティングして、他のスタッフと感覚をすり合わせる。ビールの風味の元である要素(原材料、製法、香気成分など)や、造られた背景(歴史、トレンド、醸造家の意図など)の理解に努める。得たことを自分の言葉で飲み手に伝える。
数年CBBにいれば、ビアジャッジでなくとも同等の鋭い味覚・嗅覚と専門的な知識・経験が身につくでしょう。
そして醸造部の設立とともにビール造りに携わります。
そもそも販売側であったCBBが製造側にも参入した理由は「もっとビールのことを知るため」です。よって会社の方針として「醸造経験者を雇わない」ことを皆で決め、人一倍ビールを知りたい欲求の強い自分が醸造担当を志望し、ゼロからビール造りを学び始めました。
しかしながらCBBでビールを造ることのプレッシャーは想像以上に凄まじく、初めのうちは結構荒れて、一緒にビールを造っていた代表と大喧嘩したりしました。
今では少しはプレッシャーを乗り越え、「知りたい」の他にも「表現したい」などの能動的な動機を持つ余裕も出てきました。とはいえまだまだ精進する所存です。
〇ビールにはまった頃のこと
ビールにはまったのは大学院生のときです。物理工学を専攻しており、成績はけっして優秀とは言えませんでしたが、ところどころで集中力を発揮するタイプでした。また、学業とは別に音楽活動をしており、こちらも鳴かず飛ばずでしたが、自分のやりたい音楽をやっていました。就職活動は全くダメでした。
あるとき、やたらとグルメな友人に名古屋のベルギービール専門店Lembeek(レンベーク)に連れて行ってもらいました。そこには見たこともない世界が広がっていました。
分厚いメニューブックには数100銘柄のビールが掲載されており、それぞれに歴史的な逸話がある。個々のビールにあてがわれる独特な形状の専用グラスが店内ところせましと並ぶ。ビールはどれを飲んでもそれぞれ風味が違い、中には信じられないほど複雑で濃厚なものもある。まるで自分のいる時間・空間とは別のところにいるような気分になりました。
それからというもの、持っていた楽器やCDのコレクションをほぼ売り払ってLembeekに通いつめ、素晴らしい料理とともにビールを楽しみました。通ううちにマスターの気骨でストイックな様に憧れを抱き、将来悩める学生は「この人のように生きていきたい!」と思うようになります。そしてなんとか大学院を修了しましたが、エンジニアなどの職に就くことはせず、親を泣かせてビールの仕事に就く決心をしました。
振り返ればかなり衝動的な行動が目立ちますが、きっとなるべくしてなったと思っています。結果的には大学で得た思考力や音楽で培った感性はビール造りに大いに生かされています。また、両親は今では僕のビールの大ファンなのでご心配なく。
〇ハーブティーブレンダー見習いである
そんな僕は今、ビールと同じくらいハーブに夢中です。
ハーブについてはまだ知識も経験も浅いので、ビールのことほど多くは書けないものの、自分の思うハーブの魅力はこうです。
ハーブは世界中に星の数ほど種類があり、その各々が素晴らしい香りや効能を持ちます。ハーブに精通した人は独自の知識や感性をもとに、数種のハーブをある割合でブレンドして新しい香りを創作したり、特定の症状に処方したりします。これはまるで、音楽家が音をリズムにのせて作曲したり、物理学者がある現象の法則を導き出したりするかのようではないですか?
僕もハーブを使ってなにか創作活動や自己表現をしたくなりました。
そこで今、とある先生に師事し本格的にハーブティーブレンドの勉強を始めたところです。社会人になってからの習い事にはなかなか腰が上がらないものですが、なんとか一歩を踏み出すことができました。
〇グルート ~古のハーブ&スパイスビール~
僕がここまでハーブを意識するようになったきっかけ。それもやはりビールでした。
近世以降のビールは主に「ホップ」というハーブで風味付けされるのが一般的です。現代のクラフトビールシーンでもホップは最重要キーワードといっても過言ではなく、「IPA」というめちゃくちゃにホップの効いたビアスタイルが世界中で絶大な人気を得ています。
一方で、中世までのビール造りではホップはまだ一般的ではなく、代わりにヨーロッパの各醸造所に秘伝の「グルート」というミックスハーブで造られていました。
このグルートで造られたビール(それ自体もグルートと呼ばれます)がどんなものだったのか現代ではよくわかっていません。しかしながら、ベルギーにはグルートの名残と思われる、多種多様なハーブを用いたビール造りの風習があります。
僕はこのグルートに興味を持つようになります。ベルギーの伝統的なビール造りを調べているうちにたどり着いたのだと思います。以前から自分は世界の歴史的な食文化にも興味があり、今は失われた古のビールであるグルートに魅かれたのでしょう。あるいは、生来の天邪鬼な性格から、周りがホップというなら自分はグルートだと思うようになったのかもしれません(とはいえホップもIPAも好きですよ)。
いずれにしても、グルートにただならぬ魅力を感じ、それをきっかけにハーブにも興味をもつことになります。
〇ハーブ&スパイスビールという創作活動
醸造を始めてから基本的なビール造りにも慣れてきたころ、グルートを復刻させようとは思わないにしろ、それにインスパイアされて様々なハーブ&スパイスビールを造ってみたくなりました。
(ハーブとスパイスは明確に区別できるものではありませんが、ビール業界の慣例上ハーブ&スパイスビールという呼称を用いることにします)
ホップだけを使った定番のビアスタイルについては、本やネットを調べれば多くのレシピを見つけることができますが、ハーブ&スパイスビールはそうはいきません。ハーブブレンドと投入タイミング・温度を試行錯誤し、ビールとして成り立つレシピを自分で考える必要があります。初めのうちはホップと何かもう一種類、別のハーブを使うくらいでしたが、次第に複雑なブレンドも試すようになってきました。
そのうち、これまでに何1,000銘柄とビールを飲んできた自分やCBBの他のスタッフですら体験したことがない風味のビールも出来上がってきました。こうなると僕はハーブ&スパイスビールを造ることが楽しくてたまらなくなり、アイディアも泉のように湧いてくるのでした。自分にとって非常に創作意欲を刺激する活動といえます。
画家は絵具を媒体としカンヴァスを支持体とします。同様に、ハーブを媒体としビールを支持体とする創作活動にもアートとしての可能性があるのではないかと思います。
〇今後やりたいこと
本格的にハーブティーブレンドの勉強を始めた今、まずは今まで以上に美味しいハーブ&スパイスビールを追求したいです。ここで僕が目指すのは、単にハーブティにアルコールが入ったようなものではなく、ハーブとビールの相互作用で初めて創発される香りや価値に満ちた新しい酒です。
また、ビール以外にもハーブを使った表現方法を模索していきたいと思います。これについてはまだ何もアイディアはありませんが、そのうち閃くことを期待して精進します。
将来的にはより広く「香り」というものに着目した価値創造をしたいです。
自己紹介は以上です。これからこのnoteでは、自分が造ったハーブ&スパイスビールの紹介や、ハーブやビールについて自分が魅力的だと思う話を書いていきたいです。
ビールのことについては初心者の方のために専門的になり過ぎないよう、かといってありふれた入門書のような話にもならないように心がけます。ハーブのことについては初めのうちは自分の覚え書きのようになるかもしれません、ご了承ください。
ではよろしくお願いいたします。
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