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ショパン、スケルツォ3番 注意すべき中間部のリズム

(2024年3月11日:比較のための音源を追加)

ショパンのスケルツォ3番の中間部にはリズムを誤解しやすい部分がります。少し見ておきましょう。

ショパンのスケルツォはほとんどの部分が4小節ずつの高次小節を作っています。ですから、単にそれぞれの表記上の3拍子を感じるだけでなく、3拍子の小節が4つ集まって大きな4拍子をなしていることを感じていなくてはなりません。

しかしそういう小節のまとまりが、どの小節を1拍目とした高次小節になっているのか、間違いやすい場面もしばしば存在します。

今回問題にしたいのは次の箇所です。

この箇所を、次のような12/4拍子として演奏してしまう人がいます。

さらに第159小節の4分音符をゆったりと伸ばすことで、まるで次の譜例のように演奏してしまう人もいます。

ショパンコンクールでのイーヴォ・ポゴレリチの演奏はほとんどそのように聴こえます(動画の1:14ごろから)。

ポゴレリチはその後も同じような弾き方をしているようです(Youtube動画)。


適切な高次小節は以下のようなものでしょう。m.155, m.159, m.163が強拍に当たる小節です。

誤ったリズムの例との比較のための音源を用意しました。


この曲は冒頭から4小節ごとの高次小節を継続しています。拍節的な再解釈が必要な箇所が特に見当たりませんので、中間部においてもこの解釈のような高次小節が最も有力な候補となります。そしてこの4小節ずつの構造は、このあとの部分とも齟齬がありません。


問題の部分を簡略化して4拍子にすると次のようにすることができます(音源)。

この形は私がしばしばお話してきたウラシャと、ウラ複シャのリズムですね。

このように、一見複雑そうなリズムも、よく分析してみると特定のパターンの一種であると分かることがしばしばあります。

カテゴリー:音楽理論

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