なぜ質問に答える形式なのか。
~少女漫画誌の編集長がフォロワーさんの質問に答えていく。番外編~
1週間に1つはアップするつもりでしたけど、あっという間に時間が過ぎていきますね。やばいやばい。
今回は次の質問に行く前に、なぜ質問に答える形でnoteに参加しようと思ったのかについて書いてみます。
何も聞けなかった新入社員の頃
僕は入社して最初に週刊少年マガジン編集部に配属になったのですが、入社前にイメージしていた雰囲気よりも遥かにものすごい活気と熱量で溢れている編集部の様子を見て、圧倒されまくってしまいました。
周りの先輩たち皆さんものすごい量の仕事をこなしてるし、漫画の出来がよくなるまでとことん粘る執念や、編集者同士のライバル意識も凄かった。
そんな中に放り込まれて右往左往するばかりの毎日だったのですが、特に打ち合わせの多さと長さにはくらくらするばかりでした。
しかも、先輩がレベル高過ぎて打ち合わせで何を言ってるのかほとんど理解できない。何を言ってるのか理解できないのに、「お前もなんか言えよ」と意見を求められる。理解できていないで喋るからまるで役に立たないことしか言えない。全部が全部理解できないから何を聞いていいかも分からない。
その繰り返しで、次第に「自分は編集者には向いていないんだ」とばかり考えるようになっていました。
後年、当時同じ編集部にいた2つ上のめちゃめちゃ優秀な先輩が、「新入社員の時は、先輩が打ち合わせで話してる言葉が宇宙語にしか聞こえなかった」と社内報で語ってるのを読んでほっとしたことがありました。
今思うと共通言語がないだけの新入社員あるあるだったのかもしれません。ですが、当時はそんなこと思えません。
2年で異動になって「デザート」に来た当時は、誰に対しても(友達相手にですら)何を喋っていいのか分からなくなっていました。
Fさんがくれた魔法の言葉
そんな様子を見かねたのか、「デザート」の初代編集長でもある当時の編集長Fさんに、ある日飲みに誘われて「あんたは何をそんなに悩んでるんだ」と聞かれました。
こんなことを言ったら編集者をクビになるかもしれないとビクビクしながらも、隠しても仕方ないので正直に話しました。
「漫画家さんに何を話せばいいのか分からないんです」
返ってきた言葉は意外な一言でした。
「そんなの全部聞けばいいじゃないか」
「え?」
「漫画家さんに、何をしてほしいか聞けばいいじゃないか」
役に立たないとか、余計なこと言うなとかばかり言われて来た自分にとっては耳を疑うような一言でした。
「そんなこと聞いていいんですか?」と聞き返すと、Fさんは笑ってこう返してくれました。
「聞かなかったら、どうすればいいかなんて分かるはずないじゃないか」
あまりの衝撃にしばらく絶句してしまったのを覚えています。
大したことのないやりとりに聞こえるかもしれませんが、編集者は完璧なことしか言ってはいけないと思い込んでいた僕にとっては、人生を変える言葉だったのです。
「何をすればいいかは聞けばいい」
この一言で、僕は言葉を取り戻すことができたのです。
僕の打ち合わせスタイル
それからの打ち合わせでは、とにかく漫画家さんに質問をして、作っている話のことはもちろん、どうやって漫画家になったかや、普段何に興味があるかなど、様々なことを聞くようにしました。
初めは上手くいきませんでしたが、木村千歌さん、芹沢由紀子さん、丘上あいさんなど、そんなスタイルを良いと言ってくれる漫画家さんとの出会いに恵まれ、次第に漫画家さんが何を考えているのかとことん聞くことが楽しくなり、漫画家さんの気持ちを知ることができるにつれて、まともな打ち合わせも出来るようになっていきました。
さて、質問するのはよいとして、当然逆もあります。
質問されることです。
自分の質問に何でも答えてくれる人からの質問に、ちゃんと答えない訳にはいきません。ましていい加減な答えなど言えません。なので必死に考えたり調べたりして答えるようになりました。
この「質問に必死で答える」というのが僕には随分とよかったみたいなのです。
編集方針についての質問は、編集長をつかまえて納得いくまで聞く。資料は漫画家さんが描きやすいと思えるレベルまで探す。作品についての質問には準備をちゃんとして分かりやすく説明できるようにする。
それだけでもだいぶ違いますが、基本口ベタなので、手紙やメールでも常に補足するようにしました。
そうすると、次第に自分の考えていることをちゃんと言語化してストックできるようになります。それをやり続けてきたおかげで、今は少しは一人前の仕事が出来るようになったのかなと思います。
今連載を担当している、ろびこさん、あなしんさんの打ち合わせも基本まずは質問からスタートします。特にろびこさんとは、質問だけ2時間近く続くような打ち合わせもほぼ毎回やります。
時々編集者はカウンセラーかプロファイラーのような存在だなあと感じたりします。(漫画家さんにとっての時もあれば、作品のキャラクターにとっての時もあります)
最近は嬉しいことに、社内社外問わず若い後輩編集者から質問を受けることも増えました。毎回、質問に答えることはエネルギーを遣いますが、それでも質問に答えるのは勉強になるので今でも大好きです。
というようなわけで、noteでもまずフォロワーさんたちからの質問に答えていこうと思ったのです。ここで答えを書きながら、今度は出来るだけたくさんの人に分かりやすい質問の答えや答え方を勉強していきたいと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いします。
今回は番外編にしてしまいましたが、次こそ、この仕事をすることになったきっかけについてお答えしてみようと思います。よろしくお願いします。
※僕のnoteは無料です。サポートもなしです。サポートのお気持ちを持っていただけた場合は、かわりに「デザート」の漫画を読んでみてください!
「デザート」のことをご存知ない方もいると思いますが、実写映画になった『となりの怪物くん』や、アニメが放送されていた『3D彼女 リアルガール』が連載されていた雑誌、というと少しは「ああ、その雑誌か」と思ってくださる方もいるでしょうか? 20歳前後の女の子を対象にした、月刊の少女漫画雑誌です。
よかったら、「デザート」の公式ホームページを見てみてください。「デザート」のホームページでは全作品1話めを丸ごと無料で読めます!
http://go-dessert.jp/
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