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パリ軟禁日記

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2020年3月17日、今日から僕らが当たり前に享受していた移動の自由が奪われる。ここ、自由の国フランスで。外出禁止令が施行されたのは、時が真昼を告げる刻だった。 軟禁状態にある…
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#おうち時間を工夫で楽しく

パリ軟禁日記 48日目 昼からシャンパンを飲むのが適切だと思った。

2020/5/3(日)  昼から、思いつきでシャンパンを開けてみたくなった。  日曜日だし、近所のフレンチの持ち帰りランチを頼んでいたし、そうするのが適切な行いのような気がした。天気は曇り。くさくさした気持ちを吹き飛ばすのにも悪いアイデアではないだろう。  去年から冷蔵庫に眠っていたシャンパン。「いつか特別な日に開けよう」と思っていても、その日はなかなか訪れないものだ。まして昨今の状況を考えるに、家で友人と楽しく飲めるのは次いつになるやら検討がつかない。その気になっている

パリ軟禁日記 45日目 まだ見ぬ本の世界

2020/4/30(木)  今日の天気は曇り時々雨。まだ見ぬ世界を夢見る、アンニュイな一日。19時になると運動のための外出ができるようになるのだけれど、同時刻、大雨が降り出した。気温も低い。降り止むのを待ってランニングをするとしたら、夕食が遅くなってしまう。今週は調子も良くないし、休むことにしよう。  そういうわけで、今日は一歩もアパルトマンから出なかった。せいぜい数百歩しか歩いていないだろう。普段はランニングやら食料調達やら、一日一回は外の空気を吸うようにしていたので、

パリ軟禁日記 42日目 春の雨に僕は髪を切った。

2020/4/27(月) 昼過ぎから滝のような雨が降り注ぐ天気だった。 空には少し晴れ間が見えつつも、半刻ほどだろうか、容赦なく大粒の雨が降りつけた。みぞれも少し混じっていた。雨が止んだ後、開けっ放しの窓からは濡れた街の雨の匂いがした。久方ぶりのこの匂いが懐かしくて、少し心が落ち着いた。 Le mariage des renards – キツネの嫁入りという単語をフランス語にするとこうなるだろうか。なんだか香水のような名前だ。もしそんなものがあるとしたら、雨後の街や草木の

パリ軟禁日記 34日目 世界を一つに

2020/4/19(日) 日付が変わった頃、風呂から上がったらリビングがダンスフロアになっていた。 暗闇の中、部屋をチカチカと照らし出すのはテレビの明かり。画面の中にはデヴィッド・ゲッタのライブ中継がフロリダから届いていた。高層マンションの中階にあるプールサイドにDJブースを置き、大音量でマンションのバルコニーにいるクラウドを沸かせていた。中には明らかに友だち全員呼んだんじゃないか、というほど密集しているバルコニーもあった。命を賭してでも見たいということなのだろう。僕も妻

パリ軟禁日記 30日目 豆富と思い出

2020/4/15(水) 冷蔵庫の2段目に鎮座する豆富のパック。外出禁止令の前に買ったものだった。海外生活において、豆富はそもそもにおいて貴重だけれども、昨今の状況においては更に手に入れるのが難しい代物になっている。アジア系スーパーまでは約2kmの道のり。リスクを冒して行ったとしても、必ず置いてあるわけではなかった。日本人含むアジア系が多く住むタワーマンションの近くにあるため、入荷したとしても近隣住民がまず買ってしまうのだろう。 この豆富がなくなってしまうと、当分食べら

パリ軟禁日記 24日目 「バーガー職人」

2020/4/9(木) 様々な記録がそうであるように、記録が破られる瞬間というのは往々にして唐突に訪れる。 じすい100パーセント…ここまで続いた偉大なる記録は軟禁24日目にしてあっけなく終わった。実は、この日記がどれくらい続くか実験しているのと同じように、自炊についてもどこまで行けるか挑戦をしていた。記録は途切れたけれど、悔しさはない。あるのはもう、圧倒的な満足感だった。 近所によく行くハンバーガー屋さんがある。 その名も、L’Artisan du Burger -「

パリ軟禁日記 14日目 隔離された世界で何をするか

2020/3/30(月) 数日に渡る隔離状況で人は何をして何を考えるのか。この部分に興味があって僕はこの記録をつけていると言っても過言ではない。 本日付のル・モンド紙によると、いま約34億人、人類の43%が外出禁止もしくは自宅に留まるよう勧告されているそうだ。また、ものの本によると、検疫を意味する語quarantineは「40日間」を意味するヴェネチアのイタリア方言のQuaranta giorniが語源。14世紀のペストの大流行で人口の30-60%を失ったヨーロッパは、

パリ軟禁日記 6日目 在宅トリップのすゝめ。

2020/3/22 (日) 家にいながらにして、あの場所に行こう。 今日のテーマは、題して「在宅トリップのすゝめ。」 昨日の日記でも触れたけれど、今週末は僕はもともとポルトガルのポルトを訪れる予定だった。今回はキャンセルになっただけでなく家に軟禁である。見ようによっては、羽を伸ばすどころか、羽を縛られ巣箱にカギをかけられた状態とも言える。行き場のない気持ちを抱えた時、あなたならどうするだろうか。幸い、監禁でも拘束でもなく、軟禁なのである程度の自由はある。何より、心は自由だ。

パリ軟禁日記 3日目 春の鳥と大作戦

2020/3/19(木) 白んだ窓、軽い空腹感で目が覚めた。一昨日から目覚まし時計をかけるのをやめているけれど、遅くとも8時半には覚醒する。妻は昨夜遅くまでPCに向かっていたのでまだぐっすり眠っている。週末スーパーで買った6つで2ユーロ75セントのジャムパンを2つ食べた。窓を開けると鳥のさえずりがよく聞こえた。10時半ごろに妻が目を覚ました。再び窓を開けて、一緒に鳥の歌声を聴いた。冬の間、聞いたことのなかった鳴き声だった。ここ数日あたたかく、春の陽気が連れてきたのかもしれな

パリ軟禁日記 2日目 決断と白アスパラ

2020/3/18(水) 人事からメールが来た!朝一番に聞いたのは妻の声だった。 欧州地域での新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑み、希望する駐在員の帰国を認めるという趣旨だった。一方で、日本政府が欧州地域からの入国制限をするという噂もあり、起きたばかりの頭の中で様々なシミュレーションが行われた。一寸先の自分たちの未来が見えない状況。そして、この大きな決断を即座に下さないとならない。 とどまるか、立ち去るか。9年前の大地震の時も似たようなことがあり、この手の決断は初めてでは