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成育環境にもよる付き合いかけの女性を食事に誘うにはどういった店が望ましいかという問題

 双方が庶民、
 の中でも平均以下の水準に生まれ育った場合には、
 有名店など端から存じ上げない。
 高級店などに張れる見栄も薄く張れたとて長くは続かない。

 「本質的に旨い店」を数多く知っている事が、
 付き合うまでに至るか否かの別れ道になる、
 と私は密かに思っている。

 「今日はごちそう食べに連れて行ってあげる」
 と後に配偶者となる男性に誘われ案内された店は、
 カウンター席のみのうどん屋だった。

 「ごちそう? ってうどんですか?」
 「うん。すごいんだよ。基本一杯1000円はする」
 「何と!」
 九州から大阪に移り住み、
 物価の差に愕然としつつも、
 奨学金は返さなければならないので、
 昼は社食で200円の素うどんをすすっている私に。

 「トッピング加えたら1500円とか2000円なんですが。
  ワカメ入れるだけでも申し訳なななな(動揺)」
 「良いよ好きなの頼みなよ(一度言ってみたかった)」

 何を隠そうその店こそ、
 大阪は門真市にあった『饂飩倉(うどんぐら)』だ。
 御存知の方は涙が溢れて止まらないであろう。
 2017年末に後継者が見つからず閉店となった。

 しかしさもありなんと思っていた。
 大将のこだわりが強すぎる。

 小麦も出汁に使う乾物もワカメもその他具材も、
 カウンターを隔てた厨房端際に積んである、
 袋に箱の銘柄を見れば分かる。
 確実に質の良い一級品揃えまくりやがって。

 おかげさまで出汁もうどんも揚げ玉までが旨い。
 基本1杯1000円に値するどころか満足感まである。
 ただ良い材料使えば旨いってもんでもない。
 うどん総体としての仕上がり具合がパーフェクトだ。


 誰がついて来れる!


 大将一代限りであろう事は初見で確信を持っていたよ。
 「あとね。950円でビフテキ定食出してくれるお店とか」
 「ビフテキ、って言い方がまた食欲をそそりますね」
 「ヨーグルトで独特なルー作ってる立ち食いカレー屋とか」
 「ああ旨けりゃイスなんか要らないですよ私は」
 「自然食レストランだけど雰囲気良くてくつろげる店とか」
 「接続詞がおかしい気がしますが分かります」
  (↑男性もくつろげる自然食系の店は珍しい)

 交際に至るまでの思い出を作った数々の店が、
 全て、現在、無い。
 

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