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【波】のこと

7/3 は波の日なんだそうです。
最後に海に行ったのは、3年前の館山。勤めているオーケストラの公演で、12月でした。写真はその時のです。

私の名前には「波」という漢字が入っています。
千波、と言います。

最近ニュースで『千葉県は、県の三方を囲んでいる千葉の豊かな海をPRするために、その多様な魅力を表現し「千の波を有する県」という意味を込めて、ブランドデザインを作成し、ロゴタイプを「千波県(ちばけん)」とし、名づけました』とか言いだして

千葉県に住んでる、私を含む何十人かの千波さん達に一切許可も取らずによくもやってくれたもんだな、と思ったし

申し訳ないですが全く話題にならずバズりもせず気まずさ満点な日々です。マジで日々気まじい。たまに思い出したように県が「千波県」を不定期に広報するけど、そのたびバズらないから話題にも出来ないし本当にマジで本人だけが気まずい。

同じ波なら食べられるトロピカルなやつがいい🏝️


私の生まれ育ちは山梨なのですが海無し県で
両親や家族親戚にマリンスポーツに縁のある人は誰一人いません。わたし自身カナヅチです。泳げません。

なのに【波】、とは。

小学校のころ、国語の授業の一環で「自分の名前の由来を知ろう」というコーナーがあり、その時に母になぜこの名前にしたのか尋ねたら

「いやー…本当は『波』ってあんまり良い意味の漢字じゃないんだけど(実際そうです)
まあなんだろ『千(数えられないほどたくさん、many 、a lot of)の波(荒波、人生のバイオリズム的な)を乗り越えてたくましい女になれ的な感じで、近所の神社の宮司さんがつけてくれた…はず。たしか。」と言われた時には、小学生ながらに「我が子に可愛いとかじゃなくて『たくましい女』ってどうなの…?」と、軽くショックを受けました。別にどうでもいいけど。

どこの国だか忘れましたが、魔除けの意味を込めて、あえて良くない意味のある言葉を子どもの名前につける、という風習があると聞いたことがあります。多分それなのだなと思うようにしています。

そして、今現在。
ほぼ名付け意図通りの人生を送っていますよ、母よ。
満足でしょうか…


あれはもう…かれこれ15年以上前になるでしょうか
私のはとこがオーストラリア人の女性と結婚し、
久々に帰国するというので会った時のこと。

はとこの奥さんに
「アー…ヘロウ。マイネーム、イズ、チナミ。チナミ、ミーンズ…あー、えーと…うーん…さうざんどうえーぶ…」と精一杯の英語で言ったところ
彼女の顔は少しこわばり

「ツ、…ツナミ?ウエーヴ?オゥフッ…ソゥ、ディンジャロァゥスッ…!」と返されました。

その時に「あー、やっぱり海外の人は波って津波と直結したイメージで、怖いとか危険っていう印象なんだなー。やっぱ日本と違うなあ」とうすらぼんやりと思ったことを記憶しています。

(ちなみに彼女は日本語の先生をしているので全然普通に日本語で会話できるし、デンジャラスって言ったあと「冗談だよハハハハハ!ごめんごめん」って言ってて豪快で可愛く笑っててすぐに仲良くなりました。ああ、また会いたいな…)


それからほどなくして(本当に数か月後、くらいに)「東日本大震災」が発生しました。


【波】は、やっぱり、怖いものでした。
恐ろしいものでした。
あんな【波】の姿、生まれて初めて見ました。


全部のものを飲み込んで、人はなすすべがなく、黒い、轟音の、波。思い出すだけでも…。


私の名前…なんで【波】ってついているのかな…。
と、実は密かに自分の名前に【波】がついていることに呪いがかけられたみたいに頭の中がグルグルになりました。


でも、そんな【波】の付く名前に地味に葛藤しながら過ごす日々の中で、「青海波」という言葉と出会いました。

青海波は文様の一つです。

波を扇状の形に描き表す幾何学模様で、
どこまでも広がる大海原に絶えず繰り返される穏やかな波のように、
平穏な暮らしがいつまでも続くようにという願いを込めた吉祥文様とのこと。(出典忘れました。わかったらすぐに追記します。オリジナル文言では無いです)

青海波という名前は、雅楽の舞曲の名前から付けられたとも言われています。
私は大学の時に邦楽や雅楽など日本音楽のことを勉強していたので「青海波」自体は知ってはいました。ただ全然別件で文様の方から意味を知りました。

私は山梨の出身で印伝という伝統工芸があります。鹿皮に漆で模様付けし、お財布や名刺入れ、カバンやキーケースなどに加工するのですが、柄にいろいろ意味があり、自分の気に入った柄やゲン担ぎしたい柄を小物に取り入れて持つと気合いが入ります。

自分用に印伝のものを何か買おうと思い、柄をどうしようかなといろいろ探していたら「青海波」にたどりつきました。


自分が少し勉強していた、興味のある雅楽の曲に関わりのある【波】、しかも吉祥の意味合いがあると知り、嬉しく思いました。

宮司さんが付けたと言ってたし。多分きっとこっちの説だ。

これも館山の海、波🌊


「どこまでも広がる大海原に絶えず繰り返される穏やかな波のように、
平穏な暮らしがいつまでも続くようにという願いを込めた吉祥文様」

【波】には、ちゃんと良い意味もあって、おめでたい時に使われる吉祥の柄なんだ…
そう思ったら少しだけ、少しだけですが、ホッとすることができました。


これからの人生において「未来永劫、毎日がそうであってくれ」とは言いません。実際、今のところ荒波しかないし。河の向こう側どころかそれこそ波の底に行きたくなるような出来事が圧倒的に多い。

だけど
どうか少しでも長く平穏な暮らしがいつまでも続きますように

絶えず繰り返される、穏やかな【波】のように。

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