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にわかが人気シリーズの上澄みを啜り己の様に深くうなだれた話〜「ハリー・ポッターと呪いの子」と「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」鑑賞記〜

 今日「ハリー・ポッターと呪いの子」(以下「呪いの子」)マチネを見てきた。
 理由はシンプルで、8年来応援している俳優・迫田孝也がロン・ウィーズリーを演じると聞いたもののなかなか万障繰り合わず、ことここに至ってようやく足を運べたからである。

本日マチネのキャスト一覧


 感想を端的に言うと、想像以上に没入して楽しんだ。敢えて無い語彙力を更にゼロにして言えば、なんかめっちゃとてつもなくエンターテインメントだった。目の前で箒は浮くし、キャストがどっからせり出たか知らん水に潜るし、なんか大小さまざまなサイズの火が飛ぶし、映画で見た動く階段とか喋る肖像画が目の前で再現される。そしてツイストが効いたシナリオも展開されるし、過去シリーズ作を踏まえた人間ドラマも真正面から展開する。鑑賞後、ネット上で見たレビューの中でとりわけ共感した記事のリンクを下に貼っておきます。ストーリーに感じたことが網羅され尽くしてて目から鱗。

https://soukodou.jp/blog/2017/0311/113233

 上記記事からも察せられるとおり、この舞台はきっと、シリーズをずっと真面目に追ってた人ほどツボを押されて味わい尽くせる作品なのだろう。



 そう。私は「ハリー・ポッター」シリーズを、ざっくりとしか把握していない。


 具体的には

・原作小説=2巻まで読んだ
・映画=金曜ロードショーで放映された過去作品を横目で4、5作見た
・シリーズ全体の要点=まとめサイトや有志がまとめた詳細記事を、なんとなく過去に読んでいた

 という感じなので、例えば「ロンのお母さんが我が子を殺められたリベンジを果たせたくらいには強い」とか「ロンとハーマイオニーがくっついた」とは知っているが、原典には触れていない。オリジナルを知っているとは言えないが、大元を咀嚼した媒体でだいたい把握しているので、なんとなく文脈や専門用語は理解できてしまい、目の前で展開する最新作も楽しめてしまう。なんなら泣けるくらいに。 
 この居心地の悪さ。誰に対してだか明確ではないけれど、まあまあ重くのしかかる罪悪感。それでいて興味はあって、見ればやっぱり楽しめてしまう、良くも悪くもグルーブ感に身を委ねてしまう質(たち)。二律背反極まるにもほどがある。


 実はつい最近、同じような体験を経たばかりだった。「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」(以下、「FREEDOM」)を2回見てきたのだ。
 これも具体的な履修歴を記すと

・アニメ本編=たまに流し見した
・きょうだいが購入したアニメ雑誌を毎月読んでいて、だいたいの世界観や設定は知っていた
・ファンサイトなどで設定の詳細や大まかな評判は見聞きしていた

 ということになる。「ハリー・ポッター」と大体おんなじです。
 こちらもガッツリ楽しんだ。できればもう一回、あの怒涛の終盤を劇場で見たいくらい。冒頭のキラ・ヤマト隊によるブルーコスモス残党の鎮圧シーンからワクワクしたし、アークエンジェルの撃沈は想像以上にショックだったし、サイやミリアリアの出演はテンションが上がったし、流れるとは聞いていた「Meteor」があのタイミングで流れるとは思わなかったし、マイティーストライクフリーダムガンダムの大技に妙に感激して目尻が濡れたまである。 
 ……などと言うとものすごい大ファンのようだが、結局は本編を浅くしか攫っていないし、データでしか知らない点がほとんどなのである。

 その一方で、アニメ本編が放送されていたあの時期、ブラウン管から流れていた楽曲や映像にほんのり心惹かれていたあの感覚は本物であり、さりとて「劇場版ずっと待ってたんです!!!!!」と言えるほど熱心なファンだと言えばそれは嘘だという事実。そして何より、心から「新たな物語」を待ち続けていたファンの皆さんに申し訳ないエンジョイ勢である(しかも涙まで流すときた)ことの、なんとも言えない座りの悪さ。


 ここまで考えるほうが風変わりなのかもしれないけれど、「FREEDOM」や「呪いの子」を待ち続けていたファンの方がもしこの文章を読んでおりましたら、そして満を持してそれらを鑑賞しておりましたら、抱いた感情をどうか大切にしてほしい。「めっちゃ良かった!」でも「解釈違いです認めないから!」でも、それはかつての貴方が夢中でページを捲ったり、毎週休日の夕方にTVを見続けた貴方にしか抱けない、世界でたった一つの貴方だけの想いだと私は思う。しかもそれは、過去の貴方がシリーズをリアルタイムで追い続けた、かけがえのない足跡の果てでもある。検索窓にワードを叩き込めばすぐに有志がまとめた詳細なデータが読める現在、私がその足跡を得たいと強く願っても、きっと叶うことはないだろう。最も、そんな話は完全に余計なお世話だと言われればそれまでではあるのだが。

 そんな居心地の悪さと、やっぱり楽しかったという確かな気持ちを両脇に抱えた週末でした。

(文責:安藤奈津美)
(文中敬称略)

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