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2020年9月の記事一覧
砂漠、薔薇、硝子、楽園、 (17)
feat.松尾友雪 》》》詳細 序文
》》》16.
「つまり、君は知ってる」
>17.ニキ_
落、ち、る…。
仁綺は、落下していた。気持ちだけは穏やかで、けれども、なんの身動きもできないまま、ただただ空が、落下する速度で逆さまに、流れ落ちていた。風を受けて、頬が冷たかった。
どうして落ちている?
どこから飛び降りたんだっけ?
…それは、知らなければいけないこと?
地面が近づいている
砂漠、薔薇、硝子、楽園、 (16)
feat.松尾友雪 》》》詳細 序文
》》》15.
「想像するのは君の自由だ」
>16.スグル_
「けっこん?!」
リュカは目を皿のようにしてチェンと《マスター》を見比べてみせた。
「…まあ、…見た感じ、たしかに、…ちょーっと早いんじゃないかしらってだけの、普通のカップルに見えなくもないわよね。見た感じだけならね? 中身を知ってると、すごく、すごくすごく、違和感あるけど…」
「そうだね…。
砂漠、薔薇、硝子、楽園、 (15)
feat.松尾友雪 》》》詳細 序文
》》》14.
「『触角でコミュニケーション』してる」
>15.スグル_
高田馬場は賑わっていた。
名の通った「業界人」らしく、スグルもリュカもID上は「一般人」だ。「喫茶パノラマ」の《皿洗い》が《刹(セツ)》という通称の、高額案件専門の賞金稼ぎでもあることは、「喫茶パノラマ」の人間以外には知られていないし、無論、スグルが他にいくつか持っている仕事用の名
砂漠、薔薇、硝子、楽園、 (14)
feat.松尾友雪 》》》詳細 序文
》》》13.
「ニキ。起きて。そこで寝ちゃ駄目だ。溺れてしまうよ」
>14.イヅル_
「プラネタリウム」に入ったイヅルは仁綺をベッドマットの奥のほうへ下ろすと、丸天井を見上げる仁綺の右隣に、自分も仰向けに寝転がった。
ふたりはしばらく無言で、それぞれ腹のうえで指を組んで、天井一面に書かれた数式を眺めていた。
「…君の、お父さんの話は、もう少し遅いタイ
砂漠、薔薇、硝子、楽園、 (13)
feat.松尾友雪 》》》詳細 序文
》》》12.
「ほんと、…因果な商売よねえ」
>13.ニキ_
仁綺は、階段に腰を下ろした。スグルは行ってしまって、イヅルはまだ、出てこない。静かだった。目眩がして、仁綺はそのまま、後ろに体を倒し、天井から音符が零れ落ちるように螺旋状に吊るされた、シャンデリアを見上げた。
少しだけ、休もう…少しだけ休めば…けれど、「少しだけ」は、仁綺にはとても、恐ろしい