かげ裁判

いったいなにを見て怖がっているんだい。
きみは何もないところに蟻を思い浮かべてコワイコワイと震えながら泣いているんだ。
大層な想像力だね。
ドン・キホーテより滑稽なのに、人を笑わせることができていないよ。
ピエロになれない無駄な愚かさであることに気づいているのかい。

そういうと、私の体を離れ、そいつはどこかへ消えていきました。

こういう経緯でわたしは影を失ったのです。
いえ。わたしが要らなくなって捨てたとか、そういうことは決してございません。
わたしはそいつが自分の影であることすら知らなかったのです。

いうなれば、わたしが、そいつに、わたしの影に、捨てられたのです。

陪審員のみなさん。どうぞ正しい判断をお願い致します。
あなた方に、わたしには罪がないことをわかっていただけていると信じております。