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一度だけ、新宿二丁目のゲイバーへ行ったことがある

去年の秋口、大学時代のクレイジーな友だちに誘われて二丁目へ遊びにいった。


そのクレイジーな友だちは、宮崎県出身、大学進学とともに上京、住んでいた学生寮はペット不可なのに、大学内で友だちをあまり作らなかったせいか(あまりに変わりものすぎたうえに超絶マイペースな子)さみしさゆえ(だったのか?)ハムスターを飼い、焼酎の銘柄「黒霧島」と名づける酒豪の持ち主。

ちなみにもう1匹のハムスターの名前は「おおやけ」だった。ハムスターの「ハム」という字が、縦に書くと漢字の「公」なので、「おおやけ」ということに。今は2匹のハムスターはお亡くなりになり、代わりにモルモットを飼っているそうなので、こんど名前を聞いてきますね。


10人くらいの友だちグループでディズニーへいこうとなり、まだ20歳にもなっていなかった私たちは、大学生あるあるの、全員が着るものをあわせて楽しもう、という「ドレスコード」で行こうとなったとき、「全身ホワイトコーデで!」の約束を真っ向から無視してひとり「のび太」のコスプレで何時間も遅れてきた子である。

彼女の部屋にはラブリーな小物やさくらももこの本とともに相撲のカレンダーがあたりまえのように貼られていた。

初めて性欲をおぼえた異性は「かいけつゾロリ」だという。

スガシカオに抱かれたい」と事あるごとに呟き、トヨエツの写真集を持っている。最近では「ユースケサンタマリアと結婚するわ」とツイッターで言っていた。

大学へ、カバンの代わりに百貨店の紙袋を引っさげてやってくる。

ハロウィンの仮装でパックマンの格好をして見知らぬギャルと写真を撮ってもらっていた。

松田聖子の「渚のバルコニー」を口ずさむとき、「まってて〜」の「まっ」の部分に強烈な節をつけて歌うブームあり。


とまあ、挙げだしたらキリがないのでまた今度に彼女の強烈エピソードをまとめますが、なんだかそれだけで本一冊はだせちゃうんだよなあ…。


そんな彼女に誘われて、「新宿二丁目のゲイバーに一度だけ行ったことある話」です。


まあそんな彼女なので、めちゃくちゃ面白くすばらしい個性ゆえ、いろんな経験をしており。

ゲイの先輩と友だちだというので、新宿のタイ料理を楽しんだあと、「ゲイの先輩がくるからゲイバー行こうよ!」と誘われたのでした。


初めての二丁目、初めてのゲイバー…!

話には聞いていたけれど、行ったこともなければ、ひとりで行くこともないゲイバー。興味はあるし行ってみたいとは常々思っていたけれど、まわりにゲイの友だちはいないし、作法もよくわからないので、行けないでいた。


「行きたい!連れて行って!」


初めて足を踏み入れた二丁目。もう、周辺から、二丁目にたどり着くまでの道から、もう、「二丁目」はあるのである。始まっているのである。なにを言うてんのかようわからないと思いますが、そうなんである。


彼女の先輩が遅くくるというので、1軒目は、彼女がボトルを入れているところへ(ボトル入れてんのかい)。開店時間ほどほどに入れてもらえた私たちは1番客で、カウンター10席くらいの小さなスナックだった。

「あ!ボトルもうなくなってたんだっけ」と空になっている焼酎ボトルをみてまた新しくボトルを入れていた彼女。


「ゲイバーじゃあまり、というかほとんど、ノンケは入れないのよ」と言うママさんは、だけど初めての私に優しく、「ボトルじゃないんだったらこっちの方がいいわね」と料金のプランをオススメしてくれた。


20分も経たないうちにお客さんがどんどん入ってきて、みんなもちろんゲイなんだけど、女の私たちに嫌な目を向けることもなくただただお店のママさんやボーイさんや連れの人と喋っていて、ゲイのバーなのに、ノンケの、しかも女が2人も居座ることが申し訳なくなった。


だって、そこは彼らの聖域だから。

おもしろ半分、興味半分で、彼らの場所を長時間横取りなんてできない。


ママさんにお礼を言って店を出た。「次、あそこ行くか〜。先輩まだ連絡こないし」と彼女について行ったところは、1軒目のスナックとはまた雰囲気が違った、「クラブ」みたいなところだった。

クラブというかラウンジというか、カウンターがあってボックス席が2〜3つある空間。私たちはカウンターに座った。


彼らは年齢不詳だった。私より歳下だと思う。子どもみたいな彼らは、高い声で早口で喋りまくる。「そうなのよあんた〜もうやんなっちゃうわよねえ」と、私がイメージしていたゲイそのものの口ぶりで、その途切れないトークに私はひたすら圧倒されていた。


そう、トーク力。彼らのなにがすごいって、トーク力なのだ。

とにかく喋る。それが建前なのか本音なのかわからないくらい、よく喋る。褒めもするしけなしもする。だけど私はブスと言われたことがない。ノンケの女の子がゲイバーへ行ってよく怒られる(「アンタ◯◯ね!」とか「◯◯しなさいよ!ダメ女ね!」みたいな)というのは聞いたことがあるけれど、私は怒られたこともなければ罵られたこともない。まあ私の情報をあまりだしていなかったのもあるけれど、映画や本、ひとの話に聞く、「ゲイバーでママさんに説教される」といったことがなかった。


というかゲイバーだけじゃなく、私はほとんどそういうことを言われない。そう言わせない何かを発しているのだろうか。


そのあとは彼女の先輩が到着するというのでそのお店をでて(その先輩はこのお店があまり好きじゃないそうで)、ゲイのクラブバーみたいなところへ行った。

ゲイの人は、「そう」だと言われないとわからない顔の人と、そうだとわかる顔の人の両方がいるんだと知った。

そうだとわかる人の顔は、だいたい共通している。ガタイがよく、柔和な顔つきなのだ。


まだ一回しか行ったことのないゲイの聖域で、私はなにを学んだだろう?


人類皆兄弟である、ということだった。


そして恋愛に壁はない。


2軒目に行ったゲイバーでLINEを交換することになった(なぜだろう)ゲイの誕生日のお知らせがタイムラインに表示されたので、そういえば、と思い出して書きました。機会があればまた行きたい。だけど安易に行くものでもないな、とも思う。

嬉しい!楽しい!だいすき!