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妊娠悪阻で天井を見るしかできなくなった話(前編)

ドラマの一場面で、女の人が突然の吐き気に手で口を覆うというシーンを見かけたことはあるだろうか。あれは妊娠初期の軽いつわり症状を表しているが、実際、妊娠した女性の半数以上がつわりになるという。その中でも、重度のつわりを「妊娠悪阻(おそ)」と呼ぶ。発症率は0.5%というから、200人の妊婦さんのうち1人がなる計算だ。今回は、その妊娠悪阻になってしまった、という話である。

一番辛い時期、見ていたのはネットの経験談だった

布団から出られず一番症状が重かった頃、たまに携帯電話を開く元気がある時があった。そういう時に見ていたものは決まって悪阻の経験談だった。私以外にもこんな状態だった人がいて、こう良くなっていったんだと心底励まされて、すこし気分が軽くなった。でも、悲しいことに母数が少なく、だいたいの話は見てしまっていた。

もしかしたら、今後、同じような人がいるかもしれない。

だから、私も(入院までは行かなかったため、悪阻の中では軽度だったかもしれないが、)経験者の一人として記録を残しておこうと思う。

朝礼でのめまいが全ての始まりだった

妊娠が分かってから数日後(5週5日目)のことだった。10分程度の朝礼の時、突然めまいに襲われる。何とか耐え自席に戻るが、気持ち悪くてパソコンの画面が見れない。気持ち悪くてトイレに駆け込む。二回嘔吐しても治まらない吐き気。何だ、これは。

この日をさかいに私の体調は悪化していった。

妊娠悪阻の何が辛いのか

人生の少ない経験の中でだが、私の中で、最も苦しかったのが妊娠悪阻だった。できるならもう二度と味わいたくない。(もう少し時が経てば、考えも変わるかもしれないけれど。)

何が辛いのか。知らない人に説明するならば、「数カ月間、大荒れの海を小さな漁船で漂っている感覚を感じ続けなくてはいけないこと」というだろう。降りたくても降りられない船の中でずっと大波小波を感じていて、立っていても横になっていても変わらない。そして、妊娠中のため、強い薬が呑めず、苦しい状態が続く。

インフルエンザも胃腸炎も、十二指腸潰瘍も、服薬や注射を打てば症状は治まる。けれど、病気は病気でも、私の場合、ほとんど薬は効かず、点滴も数日しか効果がなかった。そして、悪阻がいつ終わるかも人によって異なるため、ゴールが見えない。

他にも苦しい病気はたくさんあるだろうけど、私が経験した中では一番悪阻が辛かった。



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