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未来を共創する「幹部チーム」をつくる

written by 鈴木義幸

どの組織にも「幹部チーム」が存在します。

企業であれば、役員の集まりである経営チーム。病院であれば、院長、事務局長、看護部長さんなどから構成されるマネジメントチーム。スポーツであれば、監督、コーチ、キャプテン、副キャプテンなどからなる指導部。

その組織がうまく行くかどうかはかなりの程度、「幹部チーム」がいかに「チーム」として機能しているかによるのではないでしょうか。少なくとも、幹部チームがバラバラで、エゴの張り合いをしているようでは、組織を未来に向けて強くリードできるとは到底思えません。

幹部同士がバラバラでは強くなれない

以前、ラグビーチームの監督にコーチングをさせていただいたことがあります。「コーチングを受けたい」とお声をかけていただいたので、どんなテーマがあるかをお聞きすると、「コーチ陣の仲が悪い」とのこと。

トップレベルのラグビーチームの多くがそうであるように、このチームにはニュージーランドやオーストラリアなど、海外からきたコーチが数人いました。監督はこんなことを話してくれました。 

- ニュージーランド人のコーチは、どこか日本人のコーチをバカにしているように見える。(2013-14年頃の話です)
- ニュージーランドとオーストラリアは、国としてライバルだから、なんとなくコーチ間で考えが合わない。
- 日本人のコーチ同士はうまくいっているかというと、これまた、ラグビーに対する考え方の違いがあって足並みがそろわない。 

幹部チームがバラバラでは、選手たちが一枚岩になれるわけがありません。時に企業の経営者から聞く「あの役員とあの役員が、、、」といった話と全く同じだと思いながら、その監督の話を聞いていました。 

「幹部チーム」は、過去に実績を上げた人たちの集団です。それぞれに考え方があり、信条があり、プライドがあります。ですから、簡単にトップの言うことや他の幹部の言うことになびいたりしない。

「4番でピッチャー」の集まりのような集団、それが「幹部チーム」です。この「幹部チーム」が「チームになる」ことが、組織全体のためにはとても大事だと思うのです。

では、「幹部チーム」がチームになるために何ができるのでしょうか。まずもって、シンプルではあるけれど、大事なことが3つあると思っています。

「チームになる」ために必要な3つのこと

一つ目は、「チームになると決める」こと。

スポーツだとよく、「よいチームになろう!」という掛け声があるのですが、それもまずは「幹部チーム」から。プライドある幹部たちが「チームになろうよ」と改めて言葉にするのは照れ臭いかもしれません。それでも、そのちょっとした照れくささを越えて「チームになる」と決める。会社であれば、役員から構成される経営チームが「俺たちがまずチームになろう」と決める。わざわざ言葉にしようとすると、話の流れやタイミングを考えてしまいがちですが、何の脈絡もなく物事を周囲に提案できるのが、「力」があるという証でもあります。

二つ目は、「どんなチームになるかを決める」こと。

当たり前のことですが、それぞれの幹部は、おそらく過去にたくさんのチームを経験しているでしょう。それぞれが「チームとはこういうものだ」というイメージをもっています。ある人は「チームというのはリーダーが指示を出し、牽引するもの」と思っているし、ある人は「民主主義的にみんなで方向を決めるのがチーム」と思っている。ですから、どんなチームになるかということに対して、改めて全員でコンセンサスを持つ。少なくともそのことについて全員で対話する。 

そして、三つ目は、方向性を決めたら「今はどうだ?」「目指したチームになっているか?」「何を変える必要がある?」と定期的に振り返ること。

とてもシンプルですが、この3つによって「幹部チーム」は「チーム」に近づくはずです。

『1兆ドルコーチ』から学べること

昨年から今年にかけてベストセラーになった『1兆ドルコーチ』という本を読むと、いかにビル・キャンベルというエグゼクティブコーチが、Googleの経営陣をチームにしようとしてきたかがわかります。

「ビルが指針とした原則は『チーム最優先』であり、彼が人々に何よりも求め、期待したのは、『チーム・ファースト』の姿勢だった。メンバー全員がチームに忠実で、必要とあらば個人よりチームの目的を優先させなければ、チームの成功はおぼつかない。チームを勝たせることが最優先事項でなくてはならない。」※

経営陣に、チームになることにコミットするよう促し、チームの理想を共有し、そして、それができているかと頻繁に問いかける。これが、まさにビル・キャンベルがしたことであり、Googleの成長を根本で支えた取り組みだったように思います。 

みなさんの組織の「幹部チーム」は、チームになっていますか? 

「幹部」というのは、必ずしも会社組織全体にだけ当てはまるものではありません。事業部には事業部の幹部チームがあります。どんな単位の組織にも幹部チームは存在するのです。

さて、あなたの組織の幹部チームはどうでしょう?

多くの「幹部チーム」をコーチさせていただいた経験をベースに、12月18日に「未来を共創する経営チームをつくる」という本を出版します。幹部チームをつくる際のコーチの役割を、本書が果たせるように書きました。よろしければ、ぜひお手に取ってみてください。

【参考資料】
※ エリック・シュミット(著)、ジョナサン・ローゼンバーグ(著)、 アラン・イーグル(著)、 櫻井 祐子(翻訳)『1兆ドルコーチ ― シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』(ダイヤモンド社)、2019年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、Hello, Coaching! 編集部までお問い合わせください。

筆者情報: 鈴木義幸
株式会社コーチ・エィ 代表取締役社長 社長執行役員
国際コーチング連盟マスター認定コーチ
一般財団法人 生涯学習開発財団認定マスターコーチ
慶應義塾大学文学部人間関係学科社会学専攻卒業。株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現株式会社マッキャンエリクソン)に勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、有限会社コーチ・トゥエンティワン(のち株式会社化)の設立に携わる。2001年、法人事業部の分社化による株式会社コーチ・エィ設立と同時に、取締役副社長に就任。2007年1月、取締役社長就任。2018年1月より現職。

【著書】
『理想の自分をつくる セルフトーク マネジメント入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『未来を共創する 経営チームをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『新 コーチングが人を活かす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『エグゼクティブ・コーチング入門』(日本実業出版社)
『図解 コーチング流タイプ分けを知ってアプローチするとうまくいく』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
監修『新版 コーチングの基本』(日本実業出版社)

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