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【旅行記】微魔女の微ミョーな旅・11

1.ヨルダン、イランー2016年 (2)イラン 

 何のためのチャドルなのか?

 シーラーズは今回のツアー会社があり、リリーが住む街でもある。
 私以外は現金でツアー代金の支払いをするので、皆で会社を訪れた。大通りに面したオフィスでは、デスクに向かっているのが全員女性で、数か月間メールでやり取りをしていたアライヤは個室があったので役職に就いているのだろう。
 「イラン女性の社会進出は進んでいて、大学に進学する60パーセント以上は女性なのよ。とくに理系は女性に人気ね」
 イランの大学入試はコンクールという全国統一試験があり、その得点で入学できる大学が決まる。教育熱心な家庭は、塾に通わせたり家庭教師を付けたりするそうだ。リリーも大学で考古学と歴史学を勉強していて、女性の方が優秀だと暗に言っていた。
 「大学を出たからといって必ずしも就きたい仕事に就けるわけではないけど、女性の地位という意味では十分に武器になるわ。もう、女は家庭に入ればいいっていう、母親世代の古い考えは終わりつつあるのよ」
 イランに入国してから3日目。気温30度を超える炎天下で長袖・ロング丈のトップスにボトムス着用、飛行機を降りてから公共の場では常にスカーフを被っている。髪の毛を覆っているだけなのだが、それでも視界は狭くなるし、スカーフを着用しなければいけないというルールが見えない足枷のようで精神的に萎えさせる。スカーフだけでこれだけの抑圧を感じるのだから、チャドルや二カーブで全身を覆っている女性たちはどれほど不自由な思いをしているのだろか。これって男の地位を守るための策略なんじゃないか? 女性の行動や思考の自由を奪って、余計なことを考えさせない、余計な知識を与えないことで、男性優位を盲目的に信じさせる。自由恋愛もできず、妻はあてがわれた夫だけに尽くさなければならない。夫は4人まで奥さんを持てるというのに。
 「まあ、よほどのお金持ちでもない限り、奥さんを何人も持つなんて無理よ。平等にしなきゃいけないんだから」
 そういうリリーには彼氏がいて、テヘランで紹介してくれた。
 「ところで、女性の下着専門店があるけど、あれって誰のためなの? プロ用の店?」
 イランに限らず、ヨルダンでも商店街の一角で必ず見かけるランジェリーショップ。大人の玩具屋かと見まがうほどの、派手な色に派手なデザインの下着が売られているのが、ずっと気になっていた。  
 「もちろん、旦那様のためよ」
 婚前交渉は禁止なので、見せる相手は夫しかいないということになる。
 「普段は身体を覆って隠している分、下着はうんとお洒落するのよ」
 その話を聞いてからというもの、チャドルの中身が気になるようになってしまった。そして思い出したのが、行きの飛行機で出会った、ヨルダン人のアナーダの話だ。
 「こんな暑さのなか、そんな恰好していて暑くないの?」
 彼女の完全防備の服装を見ていうと、ヨルダンに関しては短パンや半袖の女性もいるという。
 「でもね、そんな恰好しても男性には魅力的ではないらしいわね。秘めているからこそ美しい、隠されているからこそ想像力を掻き立てられるってことらしいわ。ふふふ」
 ランジェリーの話と総合すると、イスラム独特の女性観なのだろうなと、妙に納得してしまう。

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