ヘライさんがおねんね下手くそな件について

ヘライさんはあまり長く眠ることができないのだ。
おねんねとっても下手くそなのだけれども、それには理由があるような気がするのだ。

実はヘライさんは眠ることに少し罪悪感があるのだ。
というのもこれはヘライさんが子供の頃までにさかのぼる話なのだ。

ヘライさんの母イさんは2回結婚して2回離婚しているのだ。
ヘライさんが小さい頃父イさんと離婚してしまったのだけれども、ヘライさんにはその時には離婚とか再婚とかの概念がわからない年だったから母イさんはヘライさんには説明はなくヘライさんの周りの環境が変わったのだ。

今までは父イさんは海外出張が多かったから大体母イさんと2人でいることが多かったのだ。
ヘライさんは赤ちゃんから幼児の時代は母イさんにすごく大切にされて、ヘライさんは母イさんが大好きだったのだ。

ただいつの日かしばらく祖父イさんの家に預けられることになったのだ。
その間幼稚園も一切行かなかったのだ、祖父イさんと祖母イさんと一緒に過ごせてヘライさんは嬉しかったのだ。
どれくらいの期間預けられていたのかはちょっと記憶が曖昧なのだ。
そして、母イさんが迎えに来てヘライさんはもといたお家ではなくて知らない土地に連れて行かれたのだ。

そしてヘライさんに新しいお父さんだと知らない男の人を紹介されたのだ。
母イさんの新しい再婚相手はヘライさんに対してとっても意地悪なことをたくさんしたのだ、母イさんが見ていないところで。


でも、ヘライさんは “きっと結婚というのは幸せなものなのだろうな、だから壊してはいけないのだろうな” 子供心にそう思って、布団たたきの柄の部分で叩かれたり、見えない部分を強くつねられたり、ここでは言えないような言ってもいいんだけれどもセンシティブすぎる意地悪をされていたのも母イさんには言うことができなかったのだ。

そうしているうちに母イさんのお腹が大きくなったのだ。
種違いの弟が産まれ、次の年には種違いの妹が産まれたのだ。
もちろん2人の赤ちゃんが立て続けに産まれたのだから母イさんは赤ちゃんである弟と妹につきっきりになったのだ。
そうしたら母イさんの再婚相手はヘライさんにもっと頻繁に意地悪なことをするようになったのだ、しかもエスカレートしていったのだ。

きっとヘライさんは外見的に母イさんに似ているところが殆どないから、父方の面影を見て憎かったのかな…って思っていたときもあったのだ。
それとヘライさんはそういうひどい虐待をされている間も泣かなかったのだ。
一度泣いたことがあって、そうしたら母イさんが心配したからなのだ、すごく怖かったけれども泣いてしまったら母イさんにバレてしまうしこの家庭が壊れてしまう気がしたからヘライさんは頑張って泣かないでいたのだ。

髪の毛掴まれて壁に頭打ち付けられても、ベルトを鞭のようにしてバックルのついている方で叩かれても、ぱっとみ見えない肌と肉の柔らかい部分を強くつねられても、ヘライさんは泣かなかったのだ…!エライさんだったと思うのだ…
でも当時のヘライさんはちゃんと知っていたのだ。
ヘライさん一人さえ居なければこの家庭はもっと幸せなんだろうなということを。

そういう時いつも時々海外出張から帰ってきては大きな手で頭をなでてくれてアコースティックギターでヘライさんの大好きな歌を弾いて一緒に唄っていてくれて、たまにスプレー缶で絵を書いてくれたヘライさんの父イさんのことを思い出していたのだ。
スプレーをしゅーってやって絵ができあがっていくのは当時のヘライさんには魔法みたいにみえたっけ…のだ
父イさんが弾いてくれた歌が学校の給食時間に流れたりしたらヘライさんはちょっと泣きながらご飯を食べていたのだ。
どうして会えなくなっちゃったんだろう…その時は子供だったからなのか、ヘライさんが知恵遅れだったからなのか色々と理解が追いついていなかったのだ。

でもその生活も終りを迎えることになったみたいなのだ。
母イさんは新しい再婚相手と離婚することになったのだ。
そういう話をしているのはなんとなく気づいていたし、母イさん自身もヘライさんに尋ねてきたのだ。
「もしママが離婚することになったらどうする?」と

ヘライさんはきっと母イさんは大変な思いをするだろうけれども何かを我慢して辛い気持ちを抱えながら生きるよりも、自由になって生き生きとしていて笑っていてくれたほうがいい旨を伝えたのだ。
そして離婚調停に入ったのだ。

離婚調停中母イさんがお仕事の関係で出張的なものがあって夜も家をあける日があったのだ。
その時なのだ、ヘライさんが朝に目を覚ますと弟と妹、大きな家具や母イさんが弾いていたエレクトーンや食器棚、そういった主要な家具がなくなっていたのだ…
いま大人になって思うともしかしたらあの時は眠り薬でも盛られていたかもしれないと思うのだけれども、その時はヘライさんが目を覚ましさえすれば母イさんは弟と妹をとられることはなかったのだとすごく自分が眠っていたことを責めたのだ。

今となっては眠り薬を使用しているから感覚がわかるけれども、それまでは知らなかったからずっとずっとヘライさんのせいで母イさんは弟と妹と離れなくてはいけなくなったと思っていたのだ。
もちろん母イさんはヘライさんを責めたりはしなかったのだ…きっとそうだった思うのだ。

母イさんはヘライさんが残されたガランとした弟と妹を連れて行かれてしまった部屋を見てショックを受けて残されていた食器棚のガラスの部分を拳で割ってしまい手に怪我をしてしまったのだ。
実は母イさんにとって手はとても大切な商売道具だったのだ。
母イさんは化粧品とエステの仕事を当時していて腕のいいエステティシャンだったのだ。
でも母イさんの手にたくさんガラスが刺さってしまって神経を傷つけてしまって、治っても日常生活には困らなくてもエステティシャンの仕事はできなくなってしまったのだ。
それも、ヘライさんが眠っていたせいだと自分を責め続けたのだ、大人になってもずっと。

そして母イさんは水商売の世界に入ったのだ…あまり好きではない仕事だと言っていたのだ。

うん、今日はちょっと長くなりすぎてしまったのだな。
そういうわけでヘライさんは眠ることに罪悪感を少なからず持っているところもあっておねんね下手くそなところもあるのだ…

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