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4歳の頃、将来はヒグラシになりたいと思っていた話。<前編>

2023年1月13日(金)

これは創作ではなく、私の回想録です。
お暇な方は読んでいただけると嬉しいです。

祖父母のことが大好きだった私は、夏になると毎日のように祖父母宅へ遊びに行っていた。
強い日差しから逃れるように家の中に入ると蚊取り線香の匂いがほのかに香り、ひんやりとした空気に包まれる。
実家には無い感覚、心と体が自分が好きな場所にたどり着いたことを理解する。
客間に荷物を置き、上る際に少しだけ軋む階段を駆け上る。

その家は少し特殊な構造をしており、二階にある全ての部屋から広いベランダ(屋上のような場所)に出ることができる。
そのベランダには、祖母が趣味で育てている様々な種類の薔薇の鉢が大小30個ほど置いてあった。

そのベランダにはプールが設置されており、祖父は私が来る日は朝からプールに水を張って待っていてくれた。

階段を登り一番右手にある祖父の書斎に入り、
赤や白、黄色の薔薇たちを眺めながら洋服を脱ぎ、水着へと着替える。
そして、昼過ぎからヒグラシが鳴き始める時間まで、鮮やかな空間で水と戯れていた。

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