デンマーク人のロルフ

4月8日。

受付の掲示板に今週のイベントが張り出されている。

TUESDAY CAFE

FRIDAY Tolbooth Museum 

SUNDAY  Ceilidh 

今日、月曜は何もないことに少し安心した。午後の授業もないため、アブスとマクドナルドに行き昼飯を食べた。ダブルチーズバーガー、サラダ、ポテトMサイズを注文した。家に帰ると昼寝をした。深く途切れることのない眠りだった。

ロンドンで買った£1のメモ帳にデンマーク語で日記を書いた。なぜかデンマーク語の学習意欲がかなり高かった。ボウリングや卓球をするくらいなら家で新しいデンマーク語の単語を覚えたいと思うほどだった。

夜、ロルフにインスタグラムでメッセージを送った。間も無く返事がかえってきた。

「Hvordan har du det?」

「調子はどう?」という意味であることは辞書を引かなくても分かった。彼はデンマーク語を母国語として使っている。僕はこのような定型文でさえ一語一句間違っていないか確認しなければいけない。

それに対して僕は「I am fine」という意味で「Ja jeg er god」と返した。

「そう言いたい時は Jeg har det godt という方がいい」と彼は言った。

僕はI am fineを直訳しただけだったが、なぜそこに動詞har(have)が入ってくるのか分からなかった。しかしそれについては深追いせずにその方が良いんだね?と納得した意思を見せた。全てに質問しているときりがない。


「Jeg holder for nylig en dagbog pa dansk」

デンマーク語で日記を書いた。この文章が伝わったのか分からなかったが、僕は構わず続けて添削を頼まれてくれるかと聞いた。彼は「Ah dope」と言った。

アブスによるとロルフはたまにわけのわからない英語を使うらしい。それはおそらくスラングの一種でネイティブであるほどそれは日常で使われるものなのだろう。僕はこのdopeという単語を知らなかったので「dope 意味」と調べてみた。こういう場合に使われるdopeは「最高、かっこいい、クール」という意味らしかった。ロルフは見た目は小柄で大人しそうに見えるが、チャット上ではこのようにポップな口調になるのは意外だった。あるいは僕が慣れていない、知らないだけでネイティブの会話ではむしろ僕が知っている教科書通りの文章なんて出てこないのかもしれない。


「ほとんど直すところがない良い文章だ。細かいところを直すとすれば"kartoffel"はジャガイモっていう意味で、ここでの場合君はフライドポテトを食べたんだよね?それなら「pomfritter」を使う方が自然だ。それは英語でいう"fries" だから」

 僕はこの日記をほとんどグーグル翻訳に頼った。しかしデンマーク人のロルフからするとそれは少し不自然な文章らしかった。

デンマーク語を教えてもらうために彼と繋がったのだが、思えば彼の英語力は完全なのだろうか?僕は語学学校に通い英語を勉強している。サリやアブス、カミーラやイザベル、彼らは皆僕より英語が堪能で、クラスもサリ以外は上位に属している。カミーラやイザベルの英語力はほとんどネイティブと遜色ないように見える。しかしロルフはそれよりも上だというのか。彼は僕と同い年か一つ上だとアブスは言っていた。つまり、デンマーク人とは英語を学ばなくとも普通に生きているだけで身についてしまうのだろうか。カミーラとロルフが滞りなく会話している姿が想像できた。僕が今欲しい英語とデンマーク語をいとも簡単に操る彼を羨ましく思わないわけにはいかなかった。教えてくれてありがとう、と送ると「anytime mate」と返ってきた。anytime mate