見出し画像

「結婚相談所に行く」「キザオ君は友達100人」「海村さん小説を書き始める」

さて、いつまでも家の中で過ごしているわけにもいかないので、青年は行動を起こします。

「何をやってもいいけど、何もやらないだけはダメ」

その言葉に従って、結婚相談所に向かいました。この頃の青年は結婚したくて結婚したくてたまらなかったからです。まだ20歳を越えたばかりだったというのに…

表参道にある結婚相談所の扉を叩くと、簡単なシステムの説明を受けたあと、受付のおばさんにこう言われました。

「あんた、まだ若いんだから結婚には向かないわ。悪いコトは言わないので、今はよしておきなさい」

その言葉を聞いて、青年はすごすごと引き下がりました。

もしも、この時、まかり間違って適当な相手を見つくろい「結婚してもいいよ!」という相手(たとえば、倍くらい年の離れた孤独なキャリアウーマンとか)を見つけ、実際に結婚してしまっていたら、青年の人生は全く違ったものになってしまっていたでしょう。

それはそれで楽しいコトになっていたかもしれないし、大きなトラブルに見舞われていたかもしれません。普通に仕事をしてツマンナイ人生になっていたかもしれないし、専業主夫のようになってその傍らで小説を執筆し大成していた可能だってあります。

でも、残念ながら(?)そうはなりませんでした。

         *

この時期、いくつか同時にいろんな出来事が起こりました。

1つはボランティアを始めたことです。近所の講堂に講演会を聞きに行ったら、手をあげて何かの質問をした際に「コイツは見所がある!」と思われたらしく、保護司さん2人にスカウトされました。

引きこもりや元犯罪者の少年少女を相手に「勉強をしたり、一緒に遊んであげるボランティア」です。

人生、何が起こるかわからないものです。このコトが青年の人生を決定づけました。回り回って非常に大きな運命の輪に巻き込まれてしまうコトになります。でも、それはもうちょっとばかり先のお話。まずは、別のストーリーを進めていきましょう。


もう1つは、「マンガの学校」に通っていた時代に仲良くなったキザオ君と行動を共にするようになったコトです。

キザオ君は声優科を卒業したあと、適当に働きながら演劇関係の人たちの所に出入りしていました。

青年の友人は数が限られていましたが、キザオ君の手帳にはビッシリといろんな人の名前と連絡先がメモしてあり、友人の数は非常に多かったのです。まさに「友達100人できるかな?」を地でいっているような人生でした!

キザオ君は、全身からほとばしるオーラで人を魅了する能力の持ち主でした。能力名は「ナルシストオーラ」

実際に実力があるかどうかは別としても、心の底から自分を信じ、理想視した自らの姿を現実の自分に近づけていくことができました。簡単に言えば「究極の自己暗示能力」

まさに「信じれば、夢はかなう!」というわけです。キザオ君は、この能力を使い、どんどん人脈を拡大していきます。その多くは、役者や声優を目指す若い男女でした。もちろん演劇関係の指導者もいます。

ところが、この能力は思わぬトラブルを引き起こすことにもなります。「大き過ぎる力は、リスクや反動も大きくなる」という法則に従っていました。


さらに、もう1つ。海村さんです。

海村さんは、元々青年と同じ学校に通っていましたが、通っていたのはアニメーター科でした。アニメーター科は2年制で、前年度はその1年目だったのです。

ところが、2年目ではアニメーター科には進まず、「ライトノベル科」に転向してしまいました(この学校では制度的にそういうコトが許されていたのです)

ライトノベル科という名前ではありましたが、生徒たちは多種多様な小説を書いています。ファンタジー・SF・青春モノ・恋愛小説などなど。中には官能小説を書いている人までいたくらい。

この時のライトノベル科の担任の先生が風変わりな人で、プロの小説家として名を馳せていましたが、同時にトラブルメーカーでもありました。

次回は、その辺りを詳しくお話していくことにしていきましょう。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。