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エッセイ ナポリかつのとりこ(文学フリマ岩手旅行記2024 その1)

 夏のお出かけの季節ですね。
 ねこの中の人は夏休みがな……げふんげふん。私は、特にお出かけしない夏ですが、ここはひとつ、記事の中だけでもお出かけをすることにいたします。
 6月に文学フリマ岩手に行って、ついでにあちこち見て、写真もたくさん撮りました。記事にし損ねていたので、ご紹介したいと思います。

 文学フリマ岩手に行くのは今年2回めで、東海圏に住んでいる私は「新幹線で行くのにほぼ一日を費やす」という悩みを抱えていました。行くのに1日、帰るのに1日。体力的な問題もありますが、その分休暇が余分に必要になるというのがネックでした。そこで、えーい!と今回は豪勢に飛行機で行くことにいたしました。開催地盛岡市の最寄り空港は岩手花巻空港です。

 そして、岩手花巻空港内には「いわて花巻大食堂」という「マルカンビル大食堂」を運営する株式会社上町家守舎のレストランがあります。

「マルカンビル大食堂」は花巻にかつてあったマルカン百貨店のレストランで、百貨店閉店とともに閉店、地元の方の熱い応援で復活したという経歴を持っています。10段巻きの箸で食べる「ソフトクリーム」が看板メニューらしい。うむ。行ってみたい。

 とはいえ、スケジュール的に行けなかったので、マルカンビル大食堂のメニューもあるというこちらでまずお昼ご飯を済ませることにいたしました。どん!

思いきり影が写りこんでいるところに撮影者のはしゃぎようがうかがえます

 これは、「ナポリかつ」です。豚カツとサラダとナポリタンがワンプレートになったメニューです。マルカンビル大食堂の看板メニューのひとつだそう。何この好きなおかずだけ、みたいなごはん。花巻に来てよかった!

 ここは奮発してソフトクリームも……と思ったんですが、10段巻きのソフトクリームはここにはないとのこと。花巻のマルカンビル大食堂に行けた時のお楽しみですね。

 空港の食堂はお値段が少しお高めなものの、必ず経由するところで美味しい名物が食べられるのは嬉しいところです。特に私は電車であれこれ移動するので、旅行の過程で「間に合わなくて行けない」「疲れちゃって行けない」という目的地がどうしてもできてしまいます。「行けない」がレストランだったりする時は大打撃。空港や駅で食べられる名物は一種の保険として必ずチェックするようにしています。

 今回の旅行ではもうひとつ保険を用意していました。JRの関駅で買えるお弁当、「平泉うにごはん」!

駅の待合でさっそく写真を撮りました(興奮)

 ……なんか違うものも写ってますね。下に写っているボールペンは、お買い物キャンペーンでもらったsuicaのボールペン。右上に写っている謎のペットボトルは後ほど別の記事で紹介しますね。

 うにごはんのふたをあけてみましょう。

真ん中の茎わかめも嬉しい

 うにの上にイクラまで……!。なんて罰当たりなお弁当なんだろう。(褒め言葉)。夢中でもぐもぐ食べました。関駅に来て良かった!

 うにごはんを買ったのは最終日で、このまま花巻空港に行って帰路につきました。だいたい16時くらい。フライトにはまだ時間があり、空港にはいわて花巻大食堂が……。

 ……。うん。そう。違う写真です。違う写真ですね。はじめとは違う写真。影も写っておらず、こう、落ち着き払っている。落ち着き払って帰りもナポリかつを食べました。私。おいしかったんですね。おいしかったんです。

 後日、会社の食堂で「花巻空港にはいわて花巻大食堂というレストランがあり、そこでナポリかつを食べました」という話を同僚にしました。行きも帰りも食べたことは内緒です。「ナポリかつというのはナポリタンに豚カツがのったもので」から始まって「花巻市にはこのレストランの大元のマルカンビル大食堂というところがあるので名物の10段巻きのソフトクリームが食べてみたい」というところまで話題が及んだところで同僚が疑問を呈します。
「……10段巻きのソフトクリームを人前で食べるの恥ずかしくないですか?」
「え?(驚き)恥ずかしいです?」
「だって、ひとりで行ったんでしょ? 岩手県に行ったけどわんこそばひとりだから恥ずかしくて食べられなかったって、前におっしゃってましたよね」
「わんこそばをひとりで食べるのは恥ずかしいですよ。恥ずかしくないです?」
「私は、わんこそばはひとりでも食べてみたいですよ」
「嘘。だって店員さんに取り囲まれますよ」
「そこがいいんじゃないですか! 盛り上げてもらって」
「ひえ。やだやだやだ。そんな誇れないです」
「たくさん食べて、『どうだ』って帰るの、いいじゃないですか。それに比べてソフトクリームは、ひとりで食べたら途中で溶けちゃいますよ。だらだら垂れるのと競争ですよ」
「そこがいいんじゃないですか!」
 お互い平行線。私は説得を諦めました。良心の呵責とともに。話しそこねたことがあったのです。帰りの花巻空港で奮発して食べたデザート。

※10段巻きのソフトクリームと同じソフトクリームが乗ったプリン

 ……恥ずかしくないもん。

(「文学フリマ岩手旅行記2024 その2」に続く)


エッセイ No.123