『答え合わせ』 (「#シロクマ文芸部」)
赤青鉛筆で日記を書く。職場で余ったのを捨てるに忍びなかった。
本文は青で書く。青い方ばかり残っているから。『答え合わせ』はできても『それ以上』はできない私のせい。
確認事項は赤、さらに修正するときは青。
職場ではそう決まっていて、いつも赤と青の筆記具が必要だった。ぼんやり者の私はこの2本をしょっちゅう無くした。みかねた後輩がくれたのがこの赤青鉛筆。その後輩は3月末で退職した。
「30までに転職しないと市場価値がなくなりますから」
40過ぎの私にずばりと言える優秀な子だった。
最後の日に「お世話になったから」と3色ボールペンをくれた。赤青鉛筆はお払い箱。忍びなくてごみ箱にいれられなかった。
憂さ晴らしみたいに始めた日記だった。初っ端から『日記を書くことにした』から続かない。情けない。
鉛筆をひっくり返して上から赤で大きく丸をうった。日記帳を閉じる。
『今の私はこれでいい』そう言い聞かせながら。
このショートショートは小牧幸助|小説・写真さんの
「#シロクマ文芸部」参加作品です。