ショートショート ヒーロー見参
小説家っつったら、タバコだろう
というしょうもない理由で吸い始めたが、今じゃヤニ漬けだ。
会社で肩身が狭い。でも吸いに行くけど。
30過ぎて嫁も子供もいないもんだから
お盆の帰省も肩身が狭い。
甥っ子的には
小説家のおじさん、ってことになってるんで
自費出版で出した俺の本抱えて実家につく。
母ちゃんが俺みて苦笑いして、髪切れ、とか言う。うるせえよ。
甥っ子は浜で遊んでるっていうから、迎えにいった。
こんな暑い中、よく外で遊ぶよな。
砂浜の甘い匂いがして、ビーチには水着がいっぱいで、俺はスーツで汗だくだ。
うんざりして、ゲーセン入ったら、いた。いじめられてた。見事に。
俺にそっくりだよな、あいつ。
髪整えて猫背直して、イメージトレーニングに部長のことを思いだす。
「何やっとんだ!!」
叫んだらガキどもが逃げていった。そうだな。俺も逃げたいもん、あれ。
甥っ子がキラキラした目で俺をみる。
「ヒーロー見参だ。」
俺はニヤリと笑った。
ショートショート No.75
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