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ショートショート 腋の薔薇時計

「痛っ」
イバラ姫は目を覚ましました。ようやく100年の時が経った、いや、腋になにか刺さったのです。甘い、いい香りが鼻をくすぐりました。100年間、お城を守るために魔女達が城に張り巡らしたイバラの棘が目覚まし時計がわりとイバラ姫を刺したのでした。

「戻ったぞ!」
 お城のあちこちで喜びの声が上がりました。姫が目覚めたので、お城の呪いも解けたのです。止まっていたお城の時間がようやく動き始め、王も王女も使用人達たちも生者の時間を取り戻したのでした。

 門の外を見に行くと、100年で土地はすっかり荒れ果てていました。王様が力なく座り込みます。王女は自分が目覚めたときのことを思い出しました。

 ちくり。
 イバラの棘を王様の腋にさしました。王様の頬が薔薇色に染まり力がみなぎるのがわかりました。

「イバラ姫のハリ」
 今ではあたりに知らないものはありません。イバラの棘の売上で王女は国を建て直しました。そう。これ即ち、トゲは金なり。

ショートショート No.656

たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「秋の空時計」。
裏お題は「腋の薔薇時計」です。