ショートショート 空の赤色
お空に虹がかかるのは、お日様が笑っているからです。
かんら、からから。
明るくて、陽気で、カラフルな七色の笑い声。
「でも、ちょっとうるさ過ぎる。」
たまに一人で呟きます。
「僕はもっと、落ち着いて静かな人になりたいんだ。そうやって、みんなの悩み事聞いたりして、そう、お月様みたいに!」
お月様も、時々笑います。
くすり、くすくす。
静かで、控えめで、優しい笑い声です。
笑い終わると、よく呟きます。
「ちょっと、自分は陰気だな。もっと、明るくて、陽気な人になりたい。みんなを明るく照らしてあげたりして、そう、お日様みたいに!」
ふたりとも、言い終わると慌ててあたりを見回します。もし聞こえていたら恥ずかしい。大丈夫かな。きっと大丈夫。お日様は昼の国に、お月様は夜の国にいるのだから、遠く離れて聞こえるはずがない。
けれど、日が落ちると、お日様は思います。もうすぐ夜の国だ、お月様がいる。
夜明けになると、お月様も思います。もうすぐ昼の国だ、お日様がいる。
それから、自分が大きな声でつぶやいたことを思い出し、真っ赤になって、お空が赤く焼けるのです。
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140字版