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少年

少年が口ずさむ 何気ない歌
母親がいないだとか 親父が死んだだとか
海を望める丘で 波音に通って
風に運ばれて みんな涙をこぼした
少年の嘘が響き渡り 少年は笑った
少しだけうつむいて 刺すような空の下
誰もいないのだ 少年の中には
家族と呼べる存在なんて
金を探して 眠りについて
大人になる 夢を見る
でもいつも樹海を彷徨い
行く手を菩提樹にはばまれる
夢から覚めても 夢が見たくて
丘に抱かれて 口ずさむ
堕ちていく日と 昇る月を待ちながら
少年にはもう必要のない日々と
その先に見えた新しい日々を
風に吹かれて 波音と揺らいだ
少年は泣いた 刺すような空の下 
眠るような海の中



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