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「大立山まつり」とは何か?(後編)

前回の続きです。

 「大立山まつり」は、2022年の開催に至るまでに大きな改変を1度経験しています。2016年~2018年の3回は「巡行時代」として前編にてその解説をしました。

 2016年に初回が開催され、毎年年始に開催されているイベント「大立山まつり」。2018年までの3回は四天王を模した繊維強化プラスチックの人形「大立山」が台車の上に乗せられ巡行する「大立山巡行」がメインのイベントでした。

 この記事では2019年開催より大幅にリニューアルした「大立山まつり」を「祝ぐ寿ぐ時代」とし、これについて解説します。

 

大立山まつり「祝ぐ寿ぐ時代」

 4回目の開催となる2019年より大立山まつりは大きな変革を迎えることとなります。

【2019年】1/26~1/27 会場:平城宮跡歴史公園朱雀門ひろば

 大立山設置、御斎会、市町村PR(飲食、伝統行事)、講話・体験


【2020年】1/25~1/26 会場:平城宮跡歴史公園朱雀門ひろば

 大立山設置、御斎会、市町村PR(飲食、伝統行事)、講話・体験、リレーマラソン


【2021年】1/30 会場:公式Youtubeチャンネル

 講話・御斎会の動画配信(五輪聖火展示のみリアル会場開催)

 (当初計画:1/30~1/31 会場:奈良県コンベンションセンター/朱雀門ひろば 内容:大立山設置、バーチャル技術展示、市町村PR(飲食、物販)、御斎会、講話、東京オリンピック関連企画)


【2022年】1/22~1/23 会場:公式Youtubeチャンネル

 県内の伝統行事、講話、御斎会などの動画配信

  (当初計画 会場:奈良県コンベンションセンター/朱雀門ひろば 内容:大立山設置、バーチャル技術展示、市町村PR(飲食、伝統行事)、御斎会、講話・体験)


実行委員会とタイトルの改変

 2019年開催に向けての実行委員会から民間の人材を採用。実行委員長も会則の変更により奈良県知事以外の人物の選出を可能としその結果、民間選出委員が実行委員長となりました。

 この2019年開催より愛称が付け加えられ「大立山まつり(西暦)奈良ちとせ祝ぐ寿ぐ(ほぐほぐ)まつり」として開催されるようになりました。これは、万葉集に収録された大伴家持の歌を参考に、「お祝い」のおめでたさと、寿命の寿は「末永く」続くようにという願いがこめられ、提供される飲食物にあたたかい物がが多く心も温かくなるようにとの意味がこめられています。

 尚、2019年、2020年の会場は平城宮跡歴史公園の開園により、第一期開園区域として整備された「朱雀門ひろば」に変更されています。


巡行に代わる新たな催事

 「巡行時代」では平城宮跡の歴史や考古学の史実に基づかない内容での「大立山巡行」がメインで開催され県民などから疑問の声もありました。

 「祝ぐ寿ぐ時代」になってからは史実に基づいた祭りの開催が目指され、新たに「御斎会」が実施されることになります。これは奈良時代の正月時期に大極殿で開催されていた行事で、称徳天皇などが再現された奈良時代の装束に身を包み登場し、奈良県内の実際のお寺の関係者も出演します。(20年の内容より)

 寿ぐまつりでは会場を朱雀門とし、音楽や照明の演出を加え、エンタテイメントとして楽しめる内容になっています。

 2021年、2022年の主会場は奈良県コンベンションセンターにて開催の予定でしたが御斎会については朱雀門ひろばでの開催が予定されていました。(2021年、2022年は社会事情によりネット会場のみでの開催。21年は配信制作会社のスタジオにて収録、22年はコンベンションセンター内から生配信。)


拡大する県内全域へと誘う仕掛け

 祝ぐ寿ぐまつりでは巡行時代に徐々に拡大してきた市町村によるPRを御斎会に並ぶメインイベントに位置付けるようになります。

 会場には奈良県下全域のブースが立ち並び飲食の提供や物販が実施されています。また、伝統行事等の披露も多くの市町村の様々な催しが実施されます。

 この①市町村PR(飲食、物販)そして②伝統行事披露に続く3つ目の柱として③ワークショップ、講話、体験、トークショーなどの知的好奇心を刺激する企画の数々です。イベント期間中にいくつもの企画が開催されています。


その他にも魅力的な企画

 さらに、2019年開催ではメディア媒体と市町村を繋ぐ情報交換会や、バスツアーも開催し、このイベントを契機として奈良をより広く伝える仕組みも用意されました。

 2020年では、広大な平城宮跡を活用した「リレーマラソン」も開催されています。

 2021年の開催では当初は、「奈良県コンベンションセンター」に主会場を移し、大立山の展示、バーチャル技術で奈良の魅力を伝える新たな取り組みを始め、市町村をPRする飲食・物販を実施、平城宮跡歴史公園朱雀門ひろばを2つ目の会場とし、両会場にて講話、朱雀門ひろばにて御斎会を実施する予定でした。また、東京オリンピックに関連する展示やトークショーなどが予定されていました。しかし、情勢の変動により講話をYoutubeの公式チャンネルを会場として実施。リアル会場ではオリンピック聖火の展示のみ実施されました。

 2022年の開催も、「奈良県コンベンションセンター」を主会場に、大立山の展示、バーチャル技術の展示や市町村PR、講話などを開催、朱雀門ひろばにて御斎会を実施する予定でしたが、開催直前になりオンライン会場のみの開催となりました。


筆者の感想

 市町村PRや伝統行事披露で、「広く」奈良の事を知り、講話などで「深く」奈良を知る。奈良に関して知識が浅い来場者も、もっと奈良を知りたい来場者も、両方のターゲット層が奈良の「新しい発見」に出会うことができるように仕掛けられています。

 これが新しい大立山まつり=「ちとせ祝ぐ寿ぐまつり」の一番の印象となります。

 リニューアル前にメインの企画であった「大立山巡行」は取りやめとなっていますが、会場には台車を取り外した状態で設置されています。「巡行」が好きだた私としては少し寂しいように思います。「大立山」の活用については今後の展開を楽しみにしたいと思います。



今後の「大立山まつり」について

 2021年、2022年と2年続けて現地会場での開催は叶うことはありませんでした。前編を含みこの記事を調査、執筆している途中に2022年の現地会場の中止が発表され、関係者の皆様はギリギリのタイミングでの決断でありその「開催をしたい」という熱意が感じられると共に、「来場者の安全」を優先すべく断腸の思いでのご判断だったと思います。開催初年度よりこのイベントを注目していた私としては大変無念であり残念に思います。

 しかし、「奈良県全部の見本市」を開催するという財産は、終息後に奈良県の観光資源を全国にアピールできる格好の財産だと思います。

 「ここに来れば奈良県全域を広く、深く知ることができる」というイベントは、元々はこのイベントそのものが目的地となるべく開催されているものですが、このイベントをきっかけに奈良県内各地へのさらなるツーリズムの発生が期待できます。

 これは私の完全なる妄想に過ぎないのですが、このノウハウを活かして奈良県外にて開催するのはいかがでしょうか。奈良への「誘客」へのきっかけとして機能することでしょう。別イベントではありますが過去に奈良県全域を引き連れて首都圏で商談会を開催した例もあり、業界関係者だけでなく一般客にも開放して奈良をアピールするきっかけになると思います。

 最後に、なんだか肩身が狭くなった気がする「大立山」人形ですが、普段は奈良県コンベンションセンターの入口や奈良県庁に展示してあります。共に広い意味でのツーリズムや屋上展望に訪れる観光客に見てもらえる場所ではありますが、もう少し目立つような有効活用ができればと思います。

 「大立山まつり」初期はその「ありかた」に苦労したようですが、現在はこの時期の「奈良への誘客」に。さらに、このイベントがきっかけとなった「二次的な誘客」に繋がっている事と思います。

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