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奈良の「観光スポット」は集まっている!?【連載交通①】

大仏様にお参りした後、どこに行きますか?

 例えば、定番の「奈良の大仏」と、その周辺に生息する「奈良の鹿」は外せないでしょう。その後は歩いてすぐの「ならまち」を散策してカフェや雑貨屋さんを訪ねるのも良いでしょう。はたまた、バスで移動すれば「金魚ミュージアム」を見た後に隣の平城宮跡を歩いて「朱雀門ひろば」でゆっくりするのも良いでしょう。

 このように、奈良の市街地は「いくつかの観光スポット」が集まり、それが「いくつかのエリア」を形成しているという特徴を持っています。

 今回の記事では、奈良市街の交通事情に触れる前に「奈良の街とは、どんな街なのか」。観光の視点から街の特性をじっくりと観察していこうと思います。


奈良の街とは

 この連載で取り扱う「奈良」は、奈良県奈良市の平城京エリア。とりわけ「奈良公園」を中心とした交通について解説することとなります。

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県域

 平城京エリアは西暦710年にこの国の首都として栄えた「平城京」の時代から現在も信仰が続いている社寺と、それを中心に栄えてきた街にある飲食店や物販店があります。また、平城京の中枢であった「平城宮跡」などの遺跡や、博物館などのミュージアムや催し物が開催されるMICE施設。若草山や春日山原始林といった自然環境などが現在一般的に理解されている「観光スポット」となります。

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CC調整

 当然、観光の対象はこのような「場所」に縛られることは無く、「若草山焼き」や「東大寺修二会」に代表される伝統行事、「なら燈花会」などのイベント。また「奈良の鹿」や「桜」などの動植物も観光の対象となりえます。これらは「主に」ではありますが、先に記載した「スポット」にて開催される事が多く見られます。

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奈良の「観光スポット」はドコにあるか

3エリアマップ

 奈良の平城京エリアでは、これら「奈良の観光スポット」が一定の範囲内に複数が「集積」しているという特徴があります。

 この「集積地」が「エリア」として認知され、観光情報誌や観光情報サイトで、一定の「地理的分布のくくり」として取り扱われる傾向にあります。

 当然のことながら、奈良の街を観光する方はこの「エリア」を基礎として周遊の計画を立てたり、それをしなくても結果的に「エリア」を基礎として観光をすることとなるでしょう。

 これらエリアの一覧としては、筆者が運営する奈良の観光サイト「平城ツーリズム.com」を基準として

奈良公園、ならまち、奈良きたまち、高畑、JR・近鉄奈良駅周辺、平城宮跡、新大宮、佐保・佐紀路、大和西大寺駅前、菅原(尼ヶ辻)、大安寺周辺、西ノ京、若草山・春日山原始林となります。

 このエリア分けは私の運営サイトのみならず、全てのエリアの紹介はありませんがJTBパブリッシング発行の「るるぶ情報版 奈良'22」や、昭文社発行の「まっぷる 奈良'22」でも、おおよそ似たようなエリアの設定においてその紙面をにぎわせています。ただし、観光スポットが比較的広範囲に存在する「平城宮跡周辺」では差が出る部分や、エリアの名称においてオリジナルな表現もあります。

 では、これらのエリアの中から、この連載に登場するであろうエリアの特徴について見ていきましょう。

奈良公園

奈良公園

 いうまでもなく「奈良観光」の一番の中心地です。

 このエリアには「奈良の大仏」で有名な「東大寺」や、「春日大社」「興福寺」の3つの世界遺産。そして「奈良の鹿」が生息しています。

 「公園」といっても、敷地への進入を管理する柵やゲートが存在するわけではなく、エリア内3社寺や国立博物館、周辺の店舗などと混じるように奈良県営の「都市公園奈良公園」が数ヶ所に分かれて存在しています。上の図の水色印が「都市公園奈良公園」となります。

 観光利用をする上においては「都市公園奈良公園」と周辺にある社寺や店舗など一体的に観光が可能な「地域」を指して「奈良公園」と表現することがほどんととなります。

 この連載においても単に「奈良公園」と呼称する場合は、奈良公園と周辺の地域を指すものとします。

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奈良公園周辺(ならまち、奈良きたまち、高畑、奈良駅前)

ならまちの範囲

 「ならまち」は、「奈良公園」の南側に位置し、元興寺旧境内に栄えた市街地です。現在は古民家街となっており、古民家を公開した施設や飲食店、物販店が集積する地区となっています。

 本来、「奈良町」と表現した場合、JR奈良駅より東側で興福寺を挟んで南北に発展した旧市街(古くからの奈良の中心市街)全体を指す表現でしたが、現在に続く観光視点の発展状況の結果、興福寺より北側を「奈良きたまち」、国道169号線より東側を「高畑」と表現することが多く見られます。

 結果的に元興寺旧境内を「ならまち」と呼称する場面が多く存在し、この連載でもこれを「ならまち」と呼ぶことにします。

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 そして「奈良きたまち」は、主に住宅街の中に飲食店や物販店が点在し、ランドマークとしては「旧奈良監獄」や北端には「般若寺」が存在しています。

 場所によっては、奈良公園から遠く離れた部分もありますが路線バスも頻繁に走っており不便をすることはありません。

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 「高畑」は、春日大社の南側に広がる街で、古民家街に飲食店や物販店が点在しているエリアです。ランドマークとしては東端に「新薬師寺」やその近くに「奈良市写真美術館」が存在しています。

 尚、住所で言う「奈良県奈良市高畑町」の範囲と観光においての「高畑エリア」の範囲は印象が異なるものとなるでしょう。

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 「近鉄奈良駅」「JR奈良駅」とその周辺には「三条通り」や「ひがしむき」などの商店街が形成されており、多数の店舗が存在しています。

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 これらの「ならまち」「奈良きたまち」「高畑」と両社奈良駅前から広がる街は「奈良公園」に隣接している地区で、奈良公園と共に一体的に観光ができるエリアとして捉えることもできます。


平城宮跡と周辺(新大宮、佐保・佐紀路)

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↑商業施設「ミナーラ」を中心に半径1kmを描いた地図。


 「平城宮跡」「平城宮跡歴史公園」は、かつて平城京の中枢で国家機関や天皇の住まいがあった「平城宮」の跡地とその周辺部で、現在は公園のゲートウェイ施設である「朱雀門ひろば」の開業など、奈良県と国交省による積極的な整備が継続的に行われています。

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 「新大宮」は近鉄新大宮駅を中心に「平城宮跡」に至るまでの市街地で、奈良市役所や企業のオフィス、住宅街が混在している地域です。特別名勝と特別史跡の重複指定である「平城京三条二坊宮跡庭園」をはじめ、近年では金魚アクアリウムでは日本最大級となった「金魚ミュージアム」が開業。また、奈良県コンベンションセンターの開設で、年々観光客を迎え入れる性格を増してきました。

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 「佐保・佐紀路」は、東大寺の「転害門」から「興福院」や「不退寺」を巡り「法華寺」「海龍王寺」「佐紀古墳群」から西大寺に至る東西に延びるエリアです。全て巡るには相当な距離がある為、他のエリアとは性格が異なる部分もありますが、観光紹介などでは「佐保・佐紀路」として紹介されることが多く見られます。

 平城宮跡からは「法華寺」「海龍王寺」「佐紀古墳群」が気軽に徒歩で散策できる範囲と言えるでしょう。

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 平城宮跡と周辺はこれらを「まとめる」エリアの名称が存在していない事や、観光スポットが開業から年数がたっていない事から「エリアとしての一体感」が奈良公園周辺より薄いものの、一体的な周遊は可能となっています。


西ノ京

 「西ノ京」は世界遺産の「薬師寺」「唐招提寺」とその周辺からなる地域です。

 周辺には飲食店などの店舗があり、またハイキングコースとして菅原を経由し西大寺い至るルートなどが存在しています。

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「エリア」の正体

 このように、奈良の市街地には「いくつかの観光スポット」が集まり「複数のエリア」を形成していることがわかります。

 特に「ならまち」などを含む「奈良公園」と周辺、「平城宮跡」と周辺、「西ノ京」は観光スポットの密度が高く、多くの観光需要を見込むことができます。

 下の図はこの3エリアに半径1kmの円を描いた地図です。

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 この1kmの円の中に観光スポットが集積していることがよくわかります。これが「奈良のエリア」の正体です。

 当然のことながら、これらエリアを目指して多くの交通需要が生じ、それぞれの交通事情があるワケとなります。

 特に、大仏や鹿のみならず多数の観光スポットが立地する「奈良公園」と周辺は奈良の観光の中枢となっており、あらゆる交通機関が発展して行くこととなります。

 このお話は次回以降に。


 地図(画像)OpenStreetMap © OpenStreetMap contributors (Open Database License CC BY-SA)

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