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経理(決算)のパラダイムシフト

どうも伝統的日本企業(SNSではJTCとかいうらしい)の人は管理会計もM&Aも税務やらも「全部経理」などという雑な考えの人がある程度居るらしいのであえて経理=決算業務と定義しておきます。組織のデザインをするうえで役割をうやむやにするこのような考え方は愚の骨頂としか言いようがありませんが、それはまた別の機会に。一方でなぜJob Discriptionもまともに無いのか少しわかった気がしますし、そんなやり方では給料レンジも明確な差がつけられず半端な人しか働けないだろう。
まあ都心のタワーマンションが限られた層にしか買えないように、多国籍企業で働くサラリーマンのファイナンス業務など大多数にとっては無関係な話かもしれないので変化が起きないと賭けるならば以下の駄文は無視しておけばいいでしょう。


前置きが長くなりましたが、これまでのキャリアで最大の試練は何か?という話題で人に話す機会があったので、多国籍企業で見られる決算業務の位置づけと何が起こったかを考えておきたいと思います。

1) 決算部隊は利益を産まないコストセンターである
2) EXCELでどの業務にどれだけの時間とHead Countを使っているのかインプットを求められる。
3) 伝票を一つ処理するのに5ドル掛けているがベストプラクティスのベンチマークは2ドルである(数字は仮です)という感じで合理化プロジェクトが始まる
3) 99.999999%の数字が正しい決算など経営者は求めておらず“半分のコスト”でクオリティも99%でいいのでやって欲しい
4) 余った経理部員は今後はビジネスをサポートするFP&Aに異動してくれ

経理部門がシェアドサービス化されるときのストーリーはだいたいこんな感じでしょう。#2のどっかのコンサルが入れ知恵してるアセスメントはよくできていてインプットするとだいたい40%くらいの付加価値のない仕事をしている余剰人員が必ず産まれます。ちなみに工場なんかのコスト削減もnon-value-added業務とvalue-added業務で分けるとそんな感じになりますね。それらをアジアのどこかにアウトソーシング拠点を作ってShared ServiceやらCenter of Excellenceの名のもとに複数の国の業務をまとめて安いコストで処理すればよい。言語問題もあるのでかつては中国大連あたりが多かったのですが、日本に来たこともない中国人がそれなりに日本語をしゃべりハングリーさという点では見習うべきことも多かったです。慣れたと思ったらすぐに他にステップアップ転職してしまいますが。

実際に経理業務をアウトソーシングしてみると、最初のほうは仕事も丁寧ですが、受託先も利益を産みだすためにほっとくとだんだんと手が抜かれ始め委託元の現場にしわ寄せが来たりします。この辺はマネージャーが適切なフィードバックをして委託先をコントロールと教育しないと誰も幸せになりません。私がアメリカの上司にアウトソーシングのクオリティが低くて困ってると相談した時には「犬を躾けるように繰り返し言い聞かせろ!!」というありがたいフィードバックをいただき、これが欧米のアジア植民地に対する接し方の根底だったんだなと学んだことがあります。特に日本の経理部員と海外の意識の違いは考えさせられるものが多く、海外はいい意味でいろいろと適当です。

例えば売掛金の消込ですが日本が細かいサービスメニューのInvoiceに入金を当て込んで一生懸命消しているという話をしても、台湾人マネージャーと話すとわからないものは一定の時間が経過したらまとめて消してると言われたことがあります。同じ会社で同じシステムを使っていても運用には随分と違いがあるもんだと思いました。この仕事にはimmaterialという便利な言葉があるもので、重要性が低いと言ってしまえば案外なんとかなったりします。実際のところ時間と人力を投入してまでARの消込を完璧にやることに価値はありません。経費の精算業務についても完璧にやるのではなく抜き打ちでAuditしてちゃんと見ているというメッセージを従業員に送ればいいという発想。経費精算のConcurなんかはそんな思想から作られているという理解です。これまた交通費の精算を全従業員完璧にチェックするコストと不正されるリスクを天秤にかけた合理的な判断です。

減点主義

経理業務は評価も減点方式の頑張っても報われない仕事の典型だと思っていますが、さらに進化した世界では一定のエラーを前提にコストと質のバランスを取りながら処理してしまおうになります。ちなみに某鉄の購買からMBAを経て外資に転じた私の上司だったCFOが経理の仕事なんか間違ってたら翌月に修正したらいい程度の軽い仕事だと言っていたのは今でもよく覚えています。まあ契約書のミスの致命傷とかに比べるとそういういい方もできるんだろう。彼はその後GMになったようです。


合理化やアウトソーシングの弊害
99.999%の正確さを捨ててコストメリットを取るという考えについては私は経営的に正しいと思っています。以前、電力会社の偉い人と電気料金の話をしたときに、日本の顧客は99.99999%の電力の質(停電とか一定の電圧)を求めているがそんな国は日本くらいで他の国は99%の品質で電力コストは半分以下だと話していました。間接部門の仕事の質とコストも同じような考え方です。では弊害は何かというと事務処理の質が完璧でないことではなくて、人が育たないことだと思っています。

経理の仕事もエントリーレベルの仕事に始まり、実際にどれくらい大変なことなのか、どれくらいの時間がかかるのかを体得して、徐々に仕組みを理解して人を管理できるようになると思います。しかしながらERPで処理が自動化され、作業してる人も自分が何をやってるのかよくわからない、さらには処理は海外でやってるとなるといったいどうやって決算担当者は正しく決算ができるようになるのかと。

SAP口伝

世の中にはSAPやOracleを口伝で引き継ぐという霊感を持つ部族もいるようですが、通常は無理だと思います。私はたまたま過渡期だったので運が良かったですが、果たしてアウトソーシングされちゃったものを後からコントロールできるものなのかという疑問があり、またこれから多国籍企業で決算業務をやる人はいったいどうやって必要な段階を踏まえてスキルを身に着けるのかよくわかりません。


余った経理マンはどうなってしまうのか
ここまで1円単位の数字を一生懸命合わせることに命をかけてきた決済業務マンにはなかなか受け入れがたい話だと思いますし、当時経理担当だった私も自分たちの仕事がこのような形である意味否定されたことはそれなりに驚きました。幸いにも私は元が管理会計畑だったし元上司の影響で「決算なんか間違ってたら後で直せる軽い仕事」と思ってたので前述の思想は受け入れやすかったですが、資格の勉強に情熱をかけてた部下の説得には随分と悩んだものです。自分がいたのはテクノロジー企業だったので変化を取り入れるのは早かったのですが会社によって改革のスピードにタイムラグがあるので、部下の中でも経理命の人たちは別の比較的スピードが遅い重電やらの会社に転職していきました。彼らとは最後まで分かり合えることはなかった。前述の話も2010年ごろに多国籍企業で起きてたことですが、次の不景気でさらに多くの企業が追随すると思います。関係ないと思っていても大きな流れには贖えない。変化に逆らってもどうせ他人がやってきて変化させられるので、自分で変化を起こすかか変化させられるかの違いだと思います。

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