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「カポーティ」 ジェラルド・クラーク (著), 中野 圭二 (翻訳)

聞かれもしないのに、自らの内情をあけすけに好んでしゃべりたがる人が往々にしてそうであるように、彼女は直接的な質問をされたり、細部の説明を求められたりすると、とたんに防御が固くなった。
(「ティファニーで朝食を」より)

 カポーティは「ティファニーで朝食を」の原作者でもあり、多くの作品を発表した小説家なのですが、作家本人が非常に有名な人でした。こちらの映画を見て興味を持ったので、小説「冷血」「叶えられた祈り」のほかに伝記も読んでみました。

 ジェラルド・クラーク版は、子供時代から若かりし日について多くのページが費やされています。
 付き合った男性の娘を養女にして映画スターにしようと奮闘するなど、「冷血」を発表後、小説が書けなくなった時期に迷走しているエピソードも面白かったです。

引用

 作家として名を挙げ、それを維持していくにはどうしたらいいかということについて、若いのに似合わず鋭い感覚をもっていたトルーマンは、近いうちに短編を発表して名前を出しておかないと、「ミリアム」で一夜にして得た評判を失う危険があるとあせっていた。

P-139

当時トルーマンが付き合っていた恋人についての描写↓

 またしても彼の愛情は彼の必要性と密接に結びついていた。事実上、正式な教育は何一つ受けていなかった若者にとって、ニュートンがどれだけ役に立つかということを認識していた。(中略)
ちゃんとした文学部の学生ならだれでも知っているような標準的文学作品の多くを見逃していた。

「ニュートンはぼくのハーバードだ」とトルーマン断言したのは冗談ではなかった。

P-141

彼はどちらかというと強烈な、ピンと張りつめた雰囲気を大変憎めないやり方で自分のまわりに作り上げてしまうので、そのなかにいると息がつまりそうになり、自由に呼吸ができないということです。

P-220

「彼は猫撫で声を使っているけど、その実は腹黒い老婦人のようです」

P-238

「これを書いていると元気が出てきて、正しいことをしているという気分になりますが、四六時中この作品のことが気になって落ちつきません。それはたぶん良い徴候だと思います。また作品についていまお話したいという気になりませんが、これはもう一つの良い徴候です」

(小説の執筆途中の手紙から)

 ある日トルーマンはぼくらに、向こう20年間にどういうものを書くかという計画の輪郭を語った。(中略)
1949年に彼が説明してくれた作品が、それが何年にもわたって次々に発表された。全部頭のなかに入っていたんだ。

P-238


その他の伝記関係

  ジャクリーン・ケネディ姉妹と親しい付き合いがあり、社交の場でジョークを言いパーティを盛り上げる。噂話に尾ヒレをつけたり、気を許した相手の秘密を聞き出す。
 それらの内輪ネタを題材に「叶えられた祈り」を執筆したため上流社会からは追い出されますが、それを機にアンディ・ウォーホルなど新しいセレブたちとの付き合いが始まります。

 ジョージ・プリンプトン版の伝記では、いろんな人の証言を集めてあるので、思い出話の内容が全く違ったりするところが面白かったです。こちらもそのうちまとめたい
(Amazonの表記が高いですが、中古200円くらいで買えます)

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