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「親になった後悔」についての本

「母親になって後悔してる」を読んでみました。以前、少子化について調べていたときに見つけて、気になっていた本です。

この本を読みながら、別の小説をひとつ思い出したので一緒に紹介します(映画「レボリューショナリー・ロード」の原作/ネタバレあり

ぼくは彼女と同じくらい赤ん坊を望んでいなかった。あの瞬間以降、自分の人生のすべてがほんとうは望んでいないことの連続になったのではないか?

ほかのどんな所帯持ちの男にも負けないほど責任感の強い人間になれることを証明しようとして、絶望的に退屈な仕事に就き、きちんとした健康的な生活という基本原則を尊重する大人であることを証明するために、高すぎる気取ったアパートに引っ越し、ひとりめのこどもが間違いではなかったことを証明するために、ふたりめのこどもをつくり、そのあとはそうするのが当然であり、自分にもそのくらいはできることを証明するために、郊外に家を買ったのだった。証明し、証明し続けること。

「家族の終わりに」 リチャード・イエーツ


「母親になって後悔してる」 オルナ・ドーナト

まず「母親になって〜」のほうから。
本書は23人の女性のインタビューを集めたもので、テーマごとに発言を抜粋してあります。

それぞれのストーリーを追いかける構成ではないため、彼女たちのパートナー、不妊治療、実家や仕事についてはほとんど描写されません。
匿名性に強く配慮してあり、当人の年齢も記載なし。子供は5歳区切りの年齢と人数のみ記載され、性別も当人が言及しない限り不明です(「息子たち」「娘」「あの子たち」など)

インタビューの項目はどれも興味深かったのですが、内容が濃くてまとめきれず、、今回は第2子以降について語られている箇所だけ記事にしました。


第4章でテーマとして挙げられた疑問点

母になって後悔しているのに、なぜ2人目や3人目の子どもがいるのか?

p209

彼女たちの答えは様々で、
・一人っ子は良くないと思った
・周囲からの強い期待
・2人目は1人目とは違うかもしれない、と再試行した

あるいは、
・一度母になったらもう同じことなので、大家族を作ります
という人も居ました。

私はもうこの穴に落ちてしまって、今いる場所がここなのだから、きちんとやるしかない、と。ひとり産めば3人でも7人でも同じようなものです。

マヤ(2人の子どもの母/1〜4歳、5〜9歳、インタビュー時にも妊娠中)

息子たちは、弟か妹をほしがっています。いつかもうひとり産むとしたら、息子たちのためです。弟か妹が欲しいと圧力をかけてくるからです。人数が増えないのは、息子たちにとっては良くないことかもしれませんが、私はそのほうが助かります。

グレース(2人の子どもの母/5〜9歳、10〜14歳)

2人の子どもを立て続けに出産しました。(中略)
両方とも、予定外にできた子どもでした。年齢差が少ないのは良いことだと思いました———出産を済ませてしまえば、自分が本当に興味があることを再開できるからです。

ナオミ(2人の子どもの母/どちらも40〜44歳。祖母)

これらのインタビューを読みながら
『1人目が間違いではなかったと証明するために、2人目を作った』という言葉を思い出しました。次に紹介する「家族の終わりに」に登場するフレーズです。


「家族の終わりに」 リチャード・イエーツ

ひとりめのこどもが間違いではなかったことを証明するために、ふたりめのこどもをつくり、そのあとはそうするのが当然であり、自分にもそのくらいはできることを証明するために、郊外に家を買ったのだった。

p74

小説では夫側からの視点で描写されていますが、映画化された「レボリューショナリー・ロード」では妻のセリフとして登場します。

字幕で「二人目を産んだ」になっていましたが、実際は「we had」と言うてたので「私たちは持った」が近そう("Then we had another child to prove that the first one wasn't a mistake.")


この作品は親になったことの後悔がストーリーの中心というわけではありませんが、非常に近いところにテーマがあると感じます。たとえば、子どもたちに対する父親からの視線の描写。

ほかの男たちも自分自身のこどもを見て、嫌悪感を抱くことがあるのだろうか?(中略)
実際のところ、彼らとふいに顔を合わせて、この4人はいったい何者なのかと考えることがよくあった。彼らが自分のこどもだという事実にピントが合うまでに、1秒か2秒かかるのだ。

p196

あるいは妻に中絶を思いとどまらせたときの回想

いまでは、自分の人生のあらゆる瞬間のなかで、あのときほど自分の男らしさをみごとに証明した瞬間はなかったような気がする。

すっかりおとなしくなり、従順になった彼女を抱いて、自分のこどもを産むと約束するのを聴きながら、「ああ、かわいい子だ。ああ、なんてかわいい子なんだ」と言っていたあの瞬間。

しかも、ぼくは赤ん坊を望んですらいなかったのだ

p73

父親からの視点は描かれているのですが、母親(エイプリルやミリー)が子供たちをどう思っているのかは描写がありません。「愛していると伝えて」とか、セリフは登場するし、苛立ちながら〜などの描写が出てくるけど、実際に何を考えているかの説明はなし。

あまりうまく書けないのですが、とても魅力的で面白い本です。アメリカ小説っぽい小説。


映画は監督サム・メンデス。タイタニックの二人が主演
youtubeで有料、U-NEXTだと見放題でありました。

おすすめのポイントは、トーマス・ニューマンの音楽と、ジョン役の俳優さん(マイケル・シャノン)、ハマり役のキャシー・ベイツも最高です。なんて素晴らしいの!!

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