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金木犀

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金木犀4

金木犀4

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仕事終わりに携帯の画面を見ると、陽乃から今週日曜の午後に朝田の個展に一緒に行かないかという誘いのメッセージが入っていた。特に予定もなかったし朝田がどんな絵を描くのか気になったのもあり、承諾の一文を送った。
あの四月上旬の飲み会から二ヶ月が経とうとしていて、季節は梅雨に入りかけていた。結局あの日は終始陽乃と山本さんが二人で盛り上がっていて、終電が迫り切った二十四時頃に解散となった。解散

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金木犀3

金木犀3

ー 1 ー

「いやあ、結月が相変わらずのひねくれ者で私はなんだか安心したよ」と陽乃が笑いながらビールを口にした。
「私はひねくれてるつもりは全くないけれど陽乃くらい楽観的だったらもっと楽だったなとは思うよ」
それ褒めてるのと言いながら彼女はまたけらけらと笑っている。
今日は久しぶりに高校からの友人である陽乃に会っていた。高校を卒業してからは大学在学中に数回会ったくらいで、社会人になってからも連絡

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金木犀2

金木犀2

ー 3 ー

コンビニを出てゆくあてもなく住宅街を歩く。思いつきで決めた散歩で目的地もないため、特に見どころもない民家や標識をぼけっと眺めながらふらふらと歩いた。そうだ、久しぶりに川沿いの土手でも歩いてみようか。少し気分も変わるかもしれないと思い、左に舵を切った。少ない機会しかない中でもお気に入りの場所だけは見つけていた。最近は特に疲労感が足を引っ張り家を出る気にもなれなかったため、初夏に行ったき

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金木犀1

金木犀1

プロローグ

ー 1 ー

目が覚めて時計に目を遣る。五時半を回ったところだった。引越した際にケチった遮光でないカーテンから、薄暗い外の様子がわかる淡いグレーの光が透けている。中途半端な時間に起きてしまったと寝起きにも関わらず妙に冴えた頭で考えながら体を起こしてキッチンへ向かった。冷蔵庫を開けて500mlの水が入ったペットボトルを手に取り一口飲んだ。乾いた喉に水が流れ込み、ごくりと音がした。休みで

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