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クックパッド・デザイン戦略部1年目の歩み

こんにちは、デザイン戦略部・部長の倉光です。クックパッドにデザイン戦略部が設立されて、6月で1周年を迎えました🎉

そこで今回は、この1年を月ごとのハイライトでまとめました。部長である私からどう見えていたか個人的な話が多めになりますが、新しくデザイン組織を立ち上げる人にとっても、立ち上げ時期の参考になればと思います。

- 2019年 -

クックパッドのデザイナーは、UI/UXデザイナーと呼ばれる所謂プロダクト開発に関わるデザイナーが大半です(私もです)。当時は約25名のメンバーが所属していました。

私自身はクックパッド在籍5年目ですが、デザイン戦略部設立直前までは1年ほど育休取得していました。

5月 設立準備期間

復職時にVP of Designに新たに就任した宇野に「プロダクトではなく、会社全体のためのデザイン組織を作りたい」と打診され、部署立ち上げをはじめます。(その辺りの話はcreatorzineさんのインタビューにて)

💡 まず組織の形を決めた

クックパッドでは、デザイナーは担当プロダクトの成長に責任を持って業務遂行することを重視しており、基本的には事業部に配属しています。ここ最近は横串で繋がりつつ自治に近い運営をしていましたが、今回は集権的パートナーシップ型と呼ばれる形式を採用し(書籍「デザイン組織のつくり方」参照)、デザイン戦略部がデザインの中央組織として集権的な役割を担うようにしました。​

クックパッドのデザイン組織の移り変わりとしては、5年くらいかけて集権的社内サービス型→分権的埋め込み型→集権的パートナーシップ型…という流れで変化しています。

💡 部の役割を決めた

初めに、5つの役割を掲げました。それぞれにさまざまな施策が紐づいています。

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2019デザイン戦略部の役割
1.デザインの力で生活者に最高の料理体験を届けつづける(成果)
2.デザインプロセスを浸透させる(オペレーション)
3.デザインする集団をつよくする(育成)
4.デザインする仲間をふやす(採用)
5.デザイン文化をつくる(文化)

あわせて、「あきらめるBOX」にしまうものをいくつか決めました。あきらめるBOXとは、心の小箱。そこに入れたものは、課題は認識しつつも今は手をつけないと決め、しばらくはぐっと我慢します。

6月 デザイン戦略部が誕生

部の新設に伴い、わたしは晴れて時短部長となりました。(余談ですが、クックパッドはフルフレックスのため、そこまで問題を感じなかったので3ヶ月後にはフルタイムに戻っています)

💡 ワンオペ部長で始動

5人で始動したデザイン戦略部。実は1人は本部長、1人は部長(私)、3人は各事業部のリードデザイナーが兼務で所属…ということで実質動けるのは私1人のワンオペ部長状態でした。

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みんな相談に乗ってはくれるが、何をやるにも1人。まずいぞ、早く一緒に戦略実行してくれるデザイナーを採用せねば…

💡 クックパッドデザイナー全員とのデザイナー合宿を実施

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設立直後には、全社デザイナーが集まって丸1日の合宿を実施しました。

集権的パートナーシップ型組織において、デザインをプロダクトの成果につなげていくためには事業部デザイナーとの連携が不可欠です。この合宿にはCEOも参加(写真・左)、全員で議論を行い多数のアイデアの中からいくつかの案が選ばれました。

「デザイナー図鑑」「スキルマップ」は、この合宿のアイデアをベースに生まれたものです。


7月 まずはデザイナー組織の見直し

まずはデザイナー間の既存の仕組みをいくつか見直しました。

💡 師匠制度を導入

1on1の仕組みを見直し、デザイナーの師匠を選べるデザイナー育成制度を開始しました。


💡 デザイナーブログを会社→デザイナー個人の発信に変更

知見発信については、これまではてなブログでエンジニアと一緒に書いていたブログを、noteにお引っ越ししました。

マガジン機能を使うことで、会社アカウントからの発信ではなくデザイナーの視点での学びを個人のアカウントで書く形にしたため、きちんとデザイナー1人1人の顔が見えるようになって良い!マガジンの記事をきっかけに、採用エントリーされる方も増えました。


8月 仲間を探す

この月は、デザイナー採用活動だけをやっていました。Googleカレンダーを見ると、ひたすら候補者の方々と会い話をしています。

熱意を伝え続けた結果、目標にしていた3名を採用でき、年末から本格的に始動できそうな気配が…脱・ワンオペ部長!

10月 コーポレート領域に徐々に着手​

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3ヶ月目、「戦略グループ(以下戦略G)」に加え、コーポレート領域案件を専任に行う「コーポレートグループ(以下コーポレートG)」を新設。ここにはワークプレイス(総務みたいな部署です)と呼ばれるオフィス改善スタッフを兼務として引き入れました。

私自身コーポレート領域の課題解決は初でしたので、何ができるのか・想像しているものとギャップはあるのか理解するために、多くの取り組みを実施しました。

💡 Cookpad Visionの世界観をビジュアルで翻訳した

まだ社内では一部の人しか知らなかったCookpad Visionという30ページある文書(英語)をビジュアルで翻訳しようと、イギリスにいるCEOと対話しながら取り組みはじめたのもこの頃です。これも新加入メンバーの戦略G市原がいなければ、なし得ない成果でした。

💡 入社初日の体験をデザインスプリントで改善した

新入社員にとってオンボーディングは、組織文化を素早く理解し成果を上げるうえで重要です。ですが人事・労務・ヘルプデスクなど複数の部署が絡むため、ここ数年大きな改善を行うことができず、気づくと必要な事務情報を淡々と伝えられる内容になっていました。

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そこで私がファシリテーターとなり、各部門のメンバーと7人のチームを編成しデザインスプリントを実施。「本当に入社初日にすべきことは何か?」を問い直し、「毎日の料理を楽しみにする」というミッションや、私たちのユーザーである生活者について、行動指針について理解するためのプログラム「Cookpad Day1」に刷新しました。

全社員在宅勤務がスタンダードになった現在、新入社員は事前に郵送されてきたPCを受け取り、自宅から初日の「Cookpad Day1」を受けています。

残念ながらオフィスのキッチンでランチを作るプログラムなどは現在中止になっていますが、オフィスで過ごすことで理解していたカルチャーを感じることが難しくなった今、この改善はやっておいて良かったです。

💡 新規事業のステータスを可視化する方法を模索

財務部に「新規事業のステータスをデザインでもっとわかりやすく表現できないか?」と言われてはじまったのが下記のプロジェクト。

この時は、物理のプロトタイプ版をコーポレートGせみがレゴで見事に具現化。現在は正式版をコーポレートGメンバーが進めています。

12月 初のアートディレクター職が入社

徐々に新しいデザイン戦略部メンバーが続々と入社してきました。ウェルカム!

🎉 クックパッドで初となるアートディレクター職が入社した

コーポレートGにはリーダーとして、クックパッドで初となるアートディレクター職の杉田が入社。

コーポレート領域を杉田に権限移譲を開始、またこれまでプロダクトデザイナー達が取り組みきれていなかった横断領域でのグラフィックデザインの一貫性・品質改善に取り組み始めます。

これまでプロダクトファーストで進んできた結果CIが明確に定められておらず、だれも責任者もいなかったため、会社としてのコミュニケーションの文脈でレシピサービスのVI表現を行っているケースも多くありました。

そこでCI責任者は杉田、レシピサービスのVI責任者は市原という体制を構築し、それぞれの明確化を通して「クックパッドらしさ」をアップデートしています。

 - 2020年 - 

1月 新体制と目標の見直し

💡 役割と目標見直し

一年間の折り返し地点、やれることも増えてきたので、ここまでの半年間を見直しました。5つ立てていた目標は、数が多くて誰も覚えられていなかったので、「デザイン組織のはじめ方」を参照し3つにしました。何事もシンプルが良い。

2020 デザイン戦略部の役割
🚀きばん
素早いサービス提供を支えるデザインの強固な土台をつくる
🍳成果
毎日の料理体験のためのアイデアを具現化し、生活者へと届ける
👥統括
日本国内随一のインハウスデザイン集団を目指す

🎉  新しい領域のメンバーが増えた

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さらに社内で撮影業務を担当していたフォトグラファーが加入、3つめのグループ「フォトディレクションG」が誕生しました。VI領域で、クリエイティブで重要要素となる料理写真も一緒に改善することでコンテンツ全体の一貫性を高める施策を始めます。

💡 全社のデザインにまつわる業務支援を開始

また、デザインをユーザーに届けるまでに発生するオペレーションをデザイン戦略部で支援するため、オペレーション担当が新たに1名異動してきました。

ユーザーインタビューの手配サポート、外部デザインパートナーとの契約対応、デザインツールやフォントの規約確認などを行っています。(DeNAさんのデザイン組織事例を参考にさせていただきました)

これにより、事業部のデザイナーがより集中し、強みを発揮できるような体制をつくっています。

2月 在宅勤務の中で何ができるか?

スプリント風景 (1)

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、私たちは2月中旬から在宅勤務へと切り替わりました。これに伴い、デザインのオペレーションにも大きく変化が訪れます。それまで予定していた計画も一部取りやめ、オンラインでのデザイン基盤づくりに舵を切ります。

💡 ユーザーインタビューを完全にオンライン体制に

これまでユーザーさんにご来社いただき毎週インタビューを実施していましたが、デザインオペレーション担当とヘルプデスクで協力。Zoomを使って中継する仕組みを1ヶ月で整備しました。

現在はオンラインでも毎週実施できるようになっており、日々改善がなされています。

💡 オンラインでデザインスプリント

おりょうりえほんチームで「オンラインでも短期集中的にチームでアイデアを具現化できないか?」と打診があり、私がファシリテーターとして参加してオンラインでデザインスプリントを実施。新LPの骨子を3日間で作りました。

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💡 リモートでディレクションし、自宅で料理写真撮影

緊急事態宣言が出ても、日本中の家庭では日々料理が作られ、さらにその必要性は増しています。わたしたちは在宅勤務でも、コンテンツ配信を止めるわけにはいきません。

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カメラマン不在でも自宅でクックパッドらしさを感じられる写真が撮影できるように、フォトディレクションGはリモートで撮影ディレクションを行いました。

💡 Valuesをビジュアル化

この時期、杉田と市原が「やろう!」と一念発起し、Visionに引き続きValuesのビジュアル化も実現し全世界の拠点へと展開されました。(この話は後日note化されるかもしれないので、あまり多くは語らないでおきます🤫)

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5月 戦略Gの存続危機

実はこの時期、「戦略Gは、もう解散した方がいいのでは?」という話も挙がっていました。というのも、戦略Gの定例ミーティングには持ち込まれる相談がどんどん減っていたのです。

これは、この一年で目的に応じて会議体を編成し直し、全プロダクトのデザイン意思決定共有はリードデザイナー定例・ブランド観点での改善提案はブランドデザイン定例・採用に関わることはデザイナー採用定例…という形で、課題が生まれても適切な場で解決されるようになった結果でした。

そこで戦略Gは解散せず、目の前の課題ではなく先の未来について提案&ディスカッションする各メンバーの問題提起型に変わりました。

💡 ノンデザイナーズブートキャンプ

戦略Gのディスカッションの中で「在宅勤務の状況下だからこそ、社員1人1人のデザインの視点を養う機会をつくるのはどうか」という提案から、社内勉強会を実施。

非デザイナー向けのノンデザイナーズデザインブック勉強会やオンライン写真講座が生まれました。のべ80名近くが参加しています。

7月 そして一年がたった…

⛰ 自身の一年間の変化

当初、包含力が乏しくチームをひとまとめにしてリードすることが苦手なので(部を作るはいいが、果たして自分がリーダーになっていいのだろか…?)と思いながら準備を進めていました。

この一年元来のプレイングマネージャー気質が抜けなくてとにかく苦労しましたが、相手に何かを託す時は、目的と期待する役割を真摯に伝えるというのが一番大事だと感じています。

⛰ デザイン組織の一年間の変化

設立時と比較すると、この夏で社内のデザイナーは25人から30人へ、デザイン戦略部5人から13人へ増えます。

1年目の前半は採用の見通しが立たず、施策が行き当たりばったりすぎたと反省。先日戦略GのメンバーでKPTを行い、そこから議論を重ねて改めて言語化を行い、役割とアクションを決めました。

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​合わせて、3年後の私たちの長期目標も決めました。

- - -

あっという間の一年間でした。

コーポレートデザイン領域は杉田を中心にチームができ、自信を持って任せられる状態になったので、私自身は2020年下期はプロダクト領域に戻ってきつつあります。

事業部デザイナー達も、担当プロダクトに全力投球しつつもクックパッドのデザインより良くするために横断的に活躍しており、1人1人が強みを発揮した集団が形成されつつあると実感しています💪

…とはいえ、あきらめるBOXに入れているものも多いのです😢

クックパッドのプロダクトを成長させつつ、デザイナーとしても新しい挑戦をしたい仲間、さらに募集しています!


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